ホクホクと暖かい気持ちでパンを抱えて歩く。ジュギョウが終わって昼休みとやらがきたとき、食事をどうしようか考えあぐねていた瞬間このキョウシツから聞こえた「今日の売店の日替わりパンめちゃくちゃうめーんだってよ」を信じてひたすら売店というものを人に聞きまくり探しまくった甲斐があったものだ

人気が少ないところまで来て腰を下ろす。少し走っただけでも息が切れるのはもう気にしないこととして。
それよりもこの売店とやらで買ったパン、おいしいと噂のパン。学校の食べ物がどれくらいおいしいかわたしが早速たべなければいけない

早く食べてくれといわんばかりのこのパンの誘惑を振り切り人気の少ない所まで移動するのは大変だった。やはりおいしいものは座って大事に大事に食べなければならないのだ
ましてや人でうるさい場所など言語道断、食事の妨げはあってはならない!

それにしてもこの場所、日光がいい感じに当たってるし、椅子や素晴らしい花も咲いている。木などの木陰もバッチリの絶好スポットなのになぜ人がいないものか
わたしとしては好都合であるけども。
さっそくイタダキマスをし、戦利品のパンを食べようとすると、だ
「ちょっと、そこの一年」
「……」
「ごめんね、ここ俺が先に取った場所なんだ」
綺麗めな女の子にほらと指刺された場所を見れば、たしかに椅子にお弁当箱が置いてあった
パンの事しか頭に無かったから見逃してたかもしれない。

わたしが無言を貫いてる中、女の子からは遠まわしに退いてほしいオーラがでている
こ、この有無を言わさない圧力は一体何なんだ
仕方なくわたしは椅子から立ち上がる
ここ以外の場所は人がいっぱいいるし、きっとうるさいだろう
落ち着いて食べれる場所があるかどうか、わからない。それにわたしはもう限界だった

近くにあった木に飛びつく
女の子からちょ、ちょっと!と聞こえたが無視だ無視。他のとこで食べるくらいなら一人いるがここで我慢すればいい
座れそうな太い枝までよじ登って腰かければ、涼しい風が通りぬけた。
「ねえ、そこで何やってるの!」
「木の上は場所取ってないと思って」
「そういう問題かい?」
「静かに食べられればいいんすよ」
「ええ…そんなとこで食べるなんてキミ、随分変わってるね」
「女の子なのにズボン履いてるキミも変わってると思うんすけど」

たしかこのガッコウ、女子はスカート必ず着用じゃなかったすかと下に向かって聞き返せば、は?とドスの聞いた声が下から返ってくる
女の子でもあんな低い声って出るんすね、じゃなくて。今の発言のどこにやらかした部分があったというのか

「お前今すぐ降りてこいよ」
木を容赦なく蹴られて振り落とされそうになりながらも、わたしは訳も分からずごめんなさいと謝罪したが振動が止むこともなく、必死で木の上で粘ること数分、女の子は飽きたのか何だか知らないがどこかへ行ってしまった。
わたしは勝ったのだ、長い戦いに。

木を揺らされている時にちらっと見たあの女の子の顔をふと思い出す、今までみた怪物よりむちゃくちゃおぞましく、勝手にぶるりと身体が震える。もう二度と会いたくないものだ。

ここでジュギョウが始まる合図がなって戻らなければいけない事を思い出し、わたしはパンも食べられずすごすごとキョウシツに戻っていった

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