「それでなその転校生なんて言ったと思う?」
「わからねえな、なんて言ったんだよぃ」
「食堂の話をしてくれ、じゃと。」
「ぶっは何だソレ!ウケる!」
「そん時の山田サンと何が何だかわからない転校生の間抜け顔が最高でのう」
「あー俺もその現場に居たかった、絶対爆笑するわ」
俺は早速今日の転校生の話題を購買で偶然会ったブンちゃんに披露していた
俺の隣に来たミョウジナマエという変な時期に来た転校生、事前情報ではなんでも外国から来た帰国子女というのだが、なかなかおかしな奴だった。授業中ずっとノートを出さずキョロキョロしてたかと思えば教師の話を聞き入って爆睡してたり。
あんな外国っぽくない女子見たことないぜよ
「もしかしたら売店に来るんじゃね?」
「そうかもな、居たらブンちゃんに教えちゃる…お」
噂をすれば何とやら。早速例の転校生が売店に現れたのだった
山田サンに売店の場所でも教えてもらったのか自力で来たのか
だが相当走り回ったのかぜいぜいと苦しそうだったのをみるとあれはきっと自力で来た方に違いない
ブンちゃんにアレがそうだと目配せすればあのチビすけかと興味深そうにみていた
ブンちゃんもチビということを自覚した方がいいということは心の中にしまっておく

「でもあの転校生かっわいそ」
「この時間だとアレしかおいしいヤツ売らんもんな」
アレ、とは立海名物日替わりパンの事なのだが、ちょうど転校生が来る時間で大量に売られ始める。
しかしそのパンが安くしかも結構おいしいため生徒には大人気でさながらスーパーのタイムセール並みに混む。
あまりに混むので売店のおばちゃんは金を最初に置いた人にパンを手渡す
マンモス校立海でそれをやればたちまちこの時間は戦争のような場所へと変わってしまうのだった。
まあ俺とブンちゃんは早々に別のパンを
買ったんじゃけど。
あの中に入っていくなんて死んでもごめんじゃ

「転校生やっぱ買えてなさそうっぽいぜ」
「そりゃそうじゃろあんな人混み、」

その時転校生は、その人混みに向かって荒々しく駆け出したかと思うと
飛んだ、のだった。

そして新体操選手もビックリのアクロバティックな動きで、もみくちゃになってる生徒達の肩を踏み台にしカウンターまでついたかと思うと、千円札をカウンターに素早く置き、おばちゃんの手からパンをかっ攫って、また生徒達の肩を軽く踏み台にして人混みゾーンから抜け出し、売店から走り去って行ってしまった。
この間わずか30秒程、アッという間の出来事である。

無理じゃと言いかけた俺の口は行き場を簡単に無くした
かわりに俺はこう呟いた
「何なんじゃアイツ…」

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