選択肢は、最初からひとつ
恐怖を背負いながらも、赤を目指して歩み進めて、白黒つけてしまいましょうか
「やぁ…久しぶりだね、テツヤ…怪我の具合はどうだい?」
「キミの忠告通り…ちゃんと消毒したら治りが早かったようです」
「そうか…それは、良かった」
「……はい」
「テツヤ……やっぱり、来たね」
「…それは、君の中で、確定していた未来なのですか」
「…それを訊いてどうするの、テツヤ」
「……、それは、」
「僕の真実を知ったら、お前は絶望する…死にたくなってしまう…僕が絶対、死なせやしないけれど…」
「…キミの瞳には、一体何が映っているのですか…?」
「…僕の瞳には、テツヤしか、映っていない…それがテツヤを苦しめて悲しませる要因になっても、もう戻れない…あの日出逢ったことも、テツヤが影になったことも、僕が変わったことも、キセキがバラバラになったことも、テツヤが勝利に失望したことも…これから、僕らがどうなるかも、全部知ってたんだよ…」
「…赤司くんは、僕の心を殺す気ですか…?不愉快です…キミの瞳の中だけで、僕の人生を語らないで下さい。やはりキミは不吉な人だ…そばにいても不幸になるしかない。…もう何が見えても、僕に伝えないで…金輪際、僕に関わらないで下さい…お願いします」
「…嫌だと、言ったら?」
「キミが望まずとも、どうにかして死んでやりますが」
「テツヤは、死なない。そんなつまらない人間じゃない」
「…キミに、僕の、何が、解るんだ…僕の友達を傷つけてまで、僕から楽しいバスケを奪い取ったくせに…」
「…何を言われても言い訳はしない。僕はお前を独り占めしたかった。ただひとつ、純粋な理由があるとしたら…僕がお前に向けた行動も言葉も全て、テツヤだけを一心に愛する僕のエゴだ」
「……僕はもう、キミを嫌いです。未来の僕もそうだと信じています…すっかり変わってしまった…僕の知らない残酷な赤司くんのこと、僕は絶対に愛せない」
「ふぅん…そうして、また、逃げるのか?」
「…キミは追ってくる、僕は逃げるしかないでしょう」
「確かに僕はお前を追いかけるだろう。だけどお前が逃げるから追いかけているだけだ…お前が逃げ続ける限り、追いかけてあげるよ」
「……僕が逃げるのを止めてしまえば、いいんですか?」
「それは、諦めの逃げか?」
「え?」
「自分を諦めて逃げるのを止めただけなら、僕はきっとテツヤを食い散らかして殺しちゃうかもね」
「……」
「…テツヤを見出したのは、誰だ?」
「…キミ、です…赤司くん、です…」
「そうだよ。僕がお前を見出したんだ。ただの雑草だったら見向きもせずに興味なんて湧かない。それを忘れないで、よく考えておくれ…」
「………、………」
「…いつか死ぬ前に、もう一度生きる為に、どうすればいいか…その答えを待ってるよ……卒業式の前に、また会おう」
全てを見透かした瞳の中に映る人間、それは確かに僕だけだった
わからない、こわい、わかりたくない、いきたい、わかりたい
これから、生きる為に、どうすればいいのか
逃げて逃げて逃げて、逃げてもきっと、いつか絶対に捕まってしまう
逃げるのを諦めて、死を甘受してしまったら、必ず無惨に殺される
僕は、どうすれば、いいの?
正しい選択肢が、見つからない
わからない、わからないよ、助けて、赤司く、
『黒子テツヤの持ち味は…影が薄いことやパスが上手いことでもない……良い意味で、諦めが悪いことじゃないかな?諦めないから、どんなに絶望的な苦境でも、どうすれば打破出来るか、一生懸命考えて、一縷の希望を見つける。黒子はお前を見出した俺に感謝してくれたけれど…むしろ、俺を希望として見出してくれて…すごく、嬉しかったんだよ…ありがとう、くろ………て、……テツヤ』
あきらめない、こと
逃げは、諦めだ
じゃあ、逃げるの反対は、
「…こうなったら、受けて立ちますよ……キミに立ち向かってみせます…もう僕はキミから逃げたりしません…全力で努力して叩き潰して…僕のバスケを、解ってもらいます……待ってて下さい、赤司くん」
激突死、しても構わない
キミが強く望むなら、ボクはもう逃げない
その二色の瞳にどんな結末が映ろうとも、僕は見えない未来へ、必死に駆け出すしかないんだ
瞳を背けないで、僕だけを見て
(僕はもう、キミしか見えない)
“みえるよ…僕を救う神様の姿が……それは、僕が救った影の子だという未来が……お願い、テツヤ…僕を、俺を、助けて”
■もし赤司君が“みえる”人だったら、全ての未来を瞳に映った最愛の黒子君へ委ねて、敗北という救いを待つのでしょう