*20000打企画:中学時代の絶望を克服して内側から輝き出した天然魔性黒子とモテモテ黒子に振り回される嫉妬骨抜き赤司の遠距離恋愛高校生赤黒ちゃん[水面さま]










空色の原石は赤い手で磨かなければ光らないと、自分勝手に思い込んでいた




「黒子っちって、赤司っちなんかには、勿体ないっスよね、ホント」


耳元で吐き捨てられた渾身の一撃。何の気なしに出た電話。不意をつかれ、絶句しか出来ず、言われっぱなしで一方的に通話終了。かつてのチームメイト・黄瀬涼太に、僕は一言侮辱され電話を切られた。意訳すれば、「お前なんか黒子テツヤに相応しくない、消え失せろ」だろうか。あのヘタレ代表の涼太が、まさか僕に対してこんな口をきくようになるとは。中学時代、耳を垂れ下げながら僕を恐れ、駄犬と揶揄されていた人間が、こうも喧嘩腰になるキッカケはきっと。それぞれが別々の高校へ進学してから、変わり始めていた状況、予測のつかぬ信じ難い展開。こういう出来事は、最近珍しくない。最初は、プライドの高い緑色の男が『黒子は、どうしてもお前のラッキーパートナーなのか…?お願いだ…どうか、この俺に、譲ってくれっ…!!』と懇願。その次は、菓子類にしか興味を示さない紫色の男が『赤ちんさぁ…黒ちんのこと、そろそろ飽きたでしょ?中学時代からなんだかんだずっとずっと独り占めしてたもんね〜…ねぇ、もういいじゃん。いい加減ちょうだいよ、俺の黒ちん』と催促。そして、かつての相棒である青色の男が『…なぁ、赤司……お願いだから、テツを返してくれよ…俺には、アイツが必要なんだ……テツがいなきゃ、俺は…もう……なぁ、頼む…赤司……』と泣き落とし。加えて、元マネージャーである桃井からは『私ね…テツくん大好き。でも、テツくんが大好きな赤司くんの事は好きになれない。私の方が絶対テツくんの事好きなのに、どうしてテツくんは赤司くんを選ぶの?私の方がテツくんにお似合いなのに…はぁ…赤司くんって、邪魔だねぇ』と罵倒。どうして、こうなったのか。かつての仲間たちは皆一様に、ある人物を欲している。どうしようもないほど、恋い焦がれている。彼らの片想いの相手、それこそが、僕の恋人である黒子テツヤだ。彼はかつて、帝光バスケ部・キセキの世代と呼ばれた僕らの支えとなる、幻のシックスマンだった。僕らを光とするなら、彼だけは影と例えられる程、目立たずパスに徹した透明なプレイヤー。だけど今の彼は、僕らの心をあたたかくやさしく包み込む、唯一無二の光へと変貌を遂げたのだ。僕の目が届かない内に、いつのまにかスッカリ変わってしまった、僕のテツヤ。誰よりも努力をしているのに、誰よりも報われず、誰よりも涙を流してきた、いとおしい子。バスケをやめようとしていた時、運命的に僕が見つけて才能を見出した、大切な子。ただのバスケ部員から、僕にとってかけがえのない存在になってしまった特別な子。ある時を境に一度離れてしまったけれど、中学時代の僕らは、ずっと一緒にいた。ただ、キセキ達が進化し始め、帝光バスケ部の歯車が狂い出し、チームプレーを捨てたまま全中三連覇を達成して、消えたテツヤ。彼の退部届けを受理したのは、主将である僕。彼の決断が辛くなかったのは、僕らの繋がりがバスケだけではなかったから。最初で最後の恋、強い絆がそこにあると信じていた僕。むしろ、バスケだけで繋がっていた邪魔な人間を断ち切れるかと思うと、かえって清々した。百戦百勝をこだわる為に、キセキの乱用を厭わなかった方針で、いつも苦しいカオをしていたテツヤ。そんな表情を、これ以上見たくなかったのも理由のひとつ。テツヤは、笑顔が一番可愛い。初めてパスが成功したあの時、まるで赤ん坊が破顔するように、喜びに溢れた眩しい笑顔。テツヤに恋へ落とされた、あの表情が好きなんだ。ふたりが出逢ったあの日、何かが始まる予感はあった。“黒子テツヤ”を見つけて全身に走った、優しい不思議な感覚。それは、きっと、ふたりの赤い糸が絡まった瞬間。僕の運命の人は黒子テツヤだ。惹かれ合ったふたりが想いを通じ合わせるようになって、いくつもの笑顔を目にしてきたけれど、バスケというフィールド上で考えが食い違う度、彼は花がしおれるようにその表情を失っていく。テツヤには笑っていて欲しい、でも、僕は勝ち続けたい。どうしても譲れない、ふたつの願い。軋轢を生まず両方叶える為に、テツヤの決断は正しかった。利己的な僕は躊躇いもせず退部届けを受け取り、彼を優しく抱き締めた。今まで僕らの影としてご苦労だった、これからは僕だけの黒子テツヤとしてずっとそばにいてくれ。そんな思いを込めて抱擁する力を強める。いつものように抱きしめ返してくれると、疑いもせずに。ドンッ!と強い衝撃、突き返された胸がズキズキ痛む。予想だにしない反応に、頭がついていかない。え、テツヤ、どうして、『…ぁ……か、しく…は……なに、も……なんにもわかってないっ…!!ばすけのたのしさも…なかまへのしんらいも…ぼくのきもちも……もう、いや……もう、きみのそばにいるのは、つらい……さよなら、あかしくん…』茫然とする僕をひとり置いてけぼり、テツヤは透明になって消えた。引き留める力も出ない程のショック状態、何も出来ず立ち尽くす。僕のそばにいる権利を捨ててまで、離別を選ぶその心は。きっと、僕を嫌いになった、と。黒子テツヤは赤司征十郎が大嫌いなんだ。途方もない喪失感に襲われ、深い悲しみに暮れたまま、秋が来て冬が過ぎ春が訪れてしまった。僕らは別々の高校へ進学し、お互い新たなスタートを切ったのだけれど、僕の心はポッカリ穴が空いたまま。新しい光とチームメイトを手に入れ、キセキ達と対峙し、心を震わす激戦、バスケへの情熱を力に変えた勝利や栄光への布石となる敗北を重ねて、頂点に立つ僕の目の前までやって来たテツヤはまるで別人。僕だけ変わらず、お前だけ変わった。あの日のよう、部室でひとり、置いてけぼりにされた時のように。テツヤは僕の手には収まろうとせずここから離れて、決着をつける為に僕へ初めて拳を振り上げる。『何もわかっていなかった赤司くんに、今日はわかってもらいます。僕を生まれ変わらせてくれたこのチームの仲間と共に、君を倒す』あの体育館で見つけた、弱さの塊のような人間が強い意志をその胸に宿している。その自信は一朝一夕で生まれたものではない。自分を必要としてくれるチームメイトと手を取り合い、汗と涙を流しながら努力を重ね、いくつもの苦境を越えて来た証がそこにあった。僕の手からすり抜けてテツヤが掴んだものは、仲間への信頼に基づいた笑顔が溢れる“楽しい”バスケ。頂点に居座る孤独な僕へ知らしめるように、チームメイトへ力強いパスを繋ぐ。僕が見つけた影の子は、僕の知らない子。知らない、あんなテツヤは、知っているようで、知らない。初めてパスが成功してキセキ達がキセキと呼ばれる前までは、その面影があるけれど、それでも何かが違う。きっとそれは、僕が一番恐れていた事だ。僕の手で磨きつつ、ひっそり隠していたテツヤの輝きが、惜しげもなく放たれている。シックスマンとして活躍しながら、やはり影という裏方としての負い目があったのか、自分に自信が持てなかったテツヤ。僕はそれで良かった。僕だけがテツヤの魅力を知っていれば良かったから。彼にハッキリと自信をつけさせる言葉は口にしなかったのに。テツヤは僕以外の人間達の中で、自ら輝き出し自信を手にした。僕を倒せるのは、きっと、僕の予想を超えていくテツヤだと、思っていた。そう、ある意味予想通り、『…赤司くん…バスケ、楽しかったですか?』『…楽しいものか…敗北するバスケなんて、楽しくない…辛くて、苦しくて、悲しい…でも、テツヤのバスケと、真っ正面から向きあって…感じたよ……お前のバスケが楽しい、気持ちを…』『…赤司くん…』『僕は、負けたんだね…テツヤのバスケに……勝つためのバスケをしてきた人間が勝てないなんて、お笑い種だね…ハハッ…僕は間違えていたんだ…正しさなんて、僕の中には、なかった……僕のバスケなんて、無意味だ…』『…正しくなくても、勝たなくても、いいんですよ…』『…テツヤ…?』『…間違えたらやり直せばいい、負けたら次は勝てるように努力すればいい、まだ僕らは未熟なんです。間違えたり負けたりする。辛くて苦しくて悲しいけれど、仲間がいれば支え合って乗り越えられます。ひとりじゃ、なにも出来ませんよ、赤司くん』僕の間違いも敗北も何もかも包み込むようなテツヤのやわらかな笑顔。あぁ、やっぱり、テツヤ、お前が好きだ。どんなに嫌がられたって離れられたって、黒子テツヤが好きで好きでたまらない。人目も憚らず久しぶりに抱き締めた影の子。驚きながらも僕の背中に手を回して摩ってくれる優しさ。テツヤのバスケに対する想いを踏み躙った僕を受けとめてくれる寛容さ。僕を倒せるのは、僕を救えるのは、この聖母のような人間だけ。そう、救われたのは僕だけじゃなく、あの頃間違いに気付けなかったキセキのメンバー達もだ。過ちを犯した僕らに向き合い、仲間への信頼やバスケの楽しさを教え、目を覚まさせてくれた。その上、厄介なことに、かつての仲間達も僕と同様、彼のせいで目覚めてしまったんだ『…テツヤ、ありがとう……ごめん、…傷つけてごめん…それでも、テツヤが、好きなんだ…テツヤが僕を嫌いでも、僕は大好きなんだ…』『…きらい?…僕がいつ、赤司くんを嫌いだなんて言いました?』『…えっ?だって…あの時、テツヤは…僕から離れて…』『確かに…退部して、避けてはいましたけど…嫌いなんて一言もいってませんし、そんな事思ってすらいません』『…そ、…なのか…そうか…よかった……テツヤに、嫌われたから、…僕は、…これまで、生きている心地がしなかった…』『……馬鹿ですね、大袈裟ですよ…僕なしでもしっかり生きて下さい。あなたには、仲間だって友人だって家族だっているんですよ…』『…それでも、テツヤがいなきゃダメなんだ…黒子テツヤが、僕の人生で、一番大切なんだ…!』『……、…じゃあ、今度こそ、幸せにして下さいね』『…え?』『…僕だって、好きで離れた訳じゃない…赤司くんが好きで苦しくて辛くて悲しくて一度離れる事を決めたんですよ…本当は引き留めて欲しかったけれど……君の目を覚ますには、離別が必要でした。そして、やっと、念願が叶った今……もう、我慢しません。赤司くん、僕は君の事、出逢った時からずっとずっと好きなんですよ』悪戯っぽく笑ったテツヤに心臓を鷲掴まれる。触れ合った胸からお互いの鼓動が重なり合って、再び僕らは想いを通じ合わせ、遠距離交際が始まった。それと同時に強くなった、キセキ達との繋がり。再びカラフルの心を結んだ影のおかげで、以前より頻繁に連絡が来るようになり、恋愛も友情も順調であるかのように見えた。束の間の平穏へ忍び寄る影。彼らのテツヤに対する感謝の気持ちはみるみるうちに思慕へと変容し、遂には強い恋情へと進化した。あの目覚めは、恋の目覚め。テツヤの心を占める僕へ嫉妬し奪い取ろうと熱をあげる程。度々僕の元へかけられてくる彼等の電話やメールには、テツヤの話題、すなわち、テツヤ自慢が殆どだ。テツヤに会った、テツヤとマジバに行った、テツヤとバスケした、テツヤに薦められた本を読んだ、テツヤにほめられた、テツヤになぐさめられた、テツヤが可愛かった、テツヤが頭をなでてくれた、テツヤに抱きついた、テツヤの家に泊まった…特に最後のは許せなかった。僕以外のキセキメンバーが裏で示し合わせてテツヤの家に突撃訪問したらしい。何も知らなかった僕へ送られて来たのは、テツヤへ馴れ馴れしく纏わりつくキセキ達が映った写メ。デレデレ顔でピースをしている姿を見て、腑が煮えくりかえった。遠く離れた京都で簡単に身動きがとれない僕に対し、盛大な喧嘩を売ってるとしか思えない。嫉妬に狂う度、この距離がもどかしくなる。某国民的アニメのどんな場所へも繋がる便利なドアがあったら、どんなに良かっただろうか。毎日、テツヤの元へ会いに行き、抱き締めてキスをして眠りにつきたい。夜が訪れると一層不安になる。僕がこうして瞳を閉じている間にも、誰かがテツヤを奪おうとしているのではないかと、ひどく恐れている。既に皆から略奪宣言をされたようなものだ。まるで1対5の泥仕合。その中で戦利品のあの子は僕の心なんていざ知らず、誰にも彼にも優しい笑顔を向ける。そのカオがむやみやたらに、相手をその気にさせる効力があるのだからタチが悪い。僕の恋人なのに、僕だけに優しくしないせいで、僕はいつまでたっても、安息な時間を得られない。それとなく不満をこぼすと、『僕…彼らが好きです…大切な仲間で友人だから…彼らの笑顔が見れると幸せな気持ちになるんですよね…だから、ついつい甘くしちゃうんですけど…こうしてまた、彼らと繋がりを持てて嬉しいんです』そんな事を言われたら、閉口するしかない。テツヤの喜びは僕の喜びでもあるのに、無防備に優しさを振りまく様子は僕の心を複雑にする。テツヤはわかっていない。その優しさに付け込まれて、その身を危険に晒している事を知ろうとしない。もしテツヤに何か起こっても、僕はこの距離に阻まれるんだ。それこそ、取り返しのつかない事態になる可能性だってある。守りたいのに、守れない。ああ、怖い、そばにいる、アイツらが憎い、神様に踊らされている自分が情けない。僕はこんなに弱くて気の小さな人間だったのか。絶望から這い上がり、底なしの魅力が溢れ出たテツヤ。確かに涼太の言う通り、僕にはもったいない相手なのかもしれない。自分に自信をなくすなんて、テツヤに恋をしなければあり得なかったことだ。テツヤを知る度、器の違いをむざむざと見せつけられる。あの子に相応しくなりたい、心の広い人間になりたい。友人たちが自分の恋人へ想いを寄せても、感情任せに蹴散らす事なんてしないように、



プルルルル、ピッ……


「赤司…悪ィんだけどさ……俺、今日……テツに告白したから。返事は、まだちゃんと貰ってねぇけど……俺は本気だ。お前から、テツを奪う」


真夜中の悪夢だ、一番手強い相手、テツヤの相棒で親友でもあった、特別な大輝が本気で奪おうとしている

どうしよう、怖い、嫌だ、テツヤ、お願い、あの時のように、僕から離れないで






「えっ、どうしたんですか、赤司くん」

どうしたのは、そっちじゃないか、テツヤ。久方ぶりに会ったのに、朝一の新幹線に乗って会いに来たのに、お前は恋人である僕に会いたくはなかったのか??ひどいなぁ、僕ばっかり好きみたいじゃないか。あぁ、それにしても、ひどい変わり様だね。キラキラ光って目がチカチカ眩む。そこらへんに散らばっているような、安っぽい輝きなんかじゃない。心の底から発掘された宝石。この世でたったひとつの貴い輝き。その光に手を伸ばす輩があとを絶たない現状、お前自身わかっているかな??僕だけのものでいてくれない困ったさんの身を案じて、ここまでやって来たのに、ポカ〜んと間抜けなとぼけ顔。何にも知らないのか、何も知らないふりなのか、一体全体どっちなんだ。自分の価値を自覚しないお前が惜しみなく無償の愛を振りまくせいで、僕は馬鹿みたいにお前の愛くるしさに振り回されている。


「……恋人へ会いに来るのに、理由なんて要らないだろう?」

「……好きだから、は理由にならないんですか…?」

「……それはもう、暗黙の了解じゃないか」

「君の気持ちは知っています…それでも、ちゃんと言葉にしてくれるだけで、僕の心はとってもあたたかくなるんですよ……だから、赤司くんの気持ち、直に知りたいです…」


控えめに、だけど、魅惑的に、こちらを見上げてジッと見つめてお願いしてくるテツヤに軽く眩暈がした。こんな可愛い子を好きにならない方がおかしい。手に入れたくならない方が異常だ。友人の恋人だからって、関係ない。奪ってでも、天使のように愛らしいこの子を独り占めしたくなる。ここはもう、会いに来た理由を素直に口にするしかなかった。


「……テツヤが、好きで、好き過ぎて…誰かにとられそうで、おかしくなりそうだったから…会いに来たんだ」

「…えっ…とられる?…誰にとられるって言うんですか?」


キョトン、と不思議そうに首を傾げるテツヤに、僕も首を傾げた。昨日の夜、大輝から電話で伝えられたテツヤへの告白の件を、この子が知らない筈がない。それなのに、何とも間の抜けた顔をしている。この反応には、切羽詰まっていた僕も思わず拍子抜けしてしまった。


「…大輝から…告白されたんだろ?テツヤの事が、好きだって……」

「…青峰くんが…?僕を、好き…?…そんなの、当たり前じゃないですか。僕たち、一度袂を分かちましたが、今でもお互い特別な親友ですよ。確かに昨日、青峰くんに呼び出されて、“好き”だと言われて、僕もです、ありがとうございますってお返事しましたが…」


意を決して、本題を突きつけてみせても、テツヤは大輝の“好き”の意味すら、ちゃんと理解していないようだ。テツヤが奴へ向ける友情の意では無い事、言うべきか言わざるべきか。迷ったけれど、とりあえずこの問題を有耶無耶にするより、答えをハッキリさせておくのが最善だろう。


「…大輝は、ちゃんとまだ返事をもらっていないと言っていたぞ…」

「あ、それって、赤司くんと別れるかどうか、一晩考えろって言われた事ですかね」

「…は?…そんな事、言われたのか…?それで、お前は…」


僕と別れる、それを一晩考えたテツヤの答えを聞くのはとても怖かった。相手は青峰大輝、テツヤと相棒として親友として拳を突き合わせた仲。一度捻くれたものの改心した大輝と天秤にかけられて、勝利する絶対的な自信が今の僕にはなかった。冷や汗が背中を伝い、喉が小刻みに震える中、勇気を出して問いかければ、


「青峰くん、どうして僕と赤司くんが別れる事なんて考えさせたんでしょうね…今でも謎です。僕は、話の意図がよく分からないまま、とりあえず赤司くんの事を一晩考えていたんですけど…、」


テツヤは頬を赤らめて照れ臭そうに笑いながら、


「…赤司くんとの想い出で頭がいっぱいになって、赤司くんが恋しくなったんです…だから、今日赤司くんが突然会いに来てくれて…ビックリしたけど、すごく嬉しかった……王子様みたい、なんて、柄にもないこと、思っちゃいました…」


僕の心臓を、自由自在に弄ぶ

この子に恋する友人たちの言葉に翻弄されているんじゃない。やはり、元凶は僕の心を完璧に支配する黒子テツヤにあったんだ。テツヤと出逢って、テツヤと恋して、テツヤと離れて、テツヤと再び愛し合って。誰よりもテツヤの魅力を知っている僕は、一度手放した彼を二度と失いたくないんだ。テツヤとの幸せを知ってしまったが故、もうテツヤ無しでは生きていけない。誰にもテツヤを奪われたくない。絶対に何があっても、


「…僕だって、いつも、テツヤで頭も心もいっぱいで、テツヤが恋しくて愛おしくてしようがなくて、本当は片時も離れたくない…好きだ、大好きなんだ…黒子テツヤを一生大切にして幸せにすると誓うよ…だから、お願い…僕だけのテツヤでいてくれないか…?」


自分の心を曝け出して、愛を切望するよう、テツヤを優しく抱き締める。すると、あの時のように、僕の背中へ手を回して摩ってくれる優しいテツヤは、


「僕の心は一生、赤司くんのものだって…そんなの暗黙の了解でしょう?」


僕の胸の中で、天使が薄く嗤った気がした

ドキリ、疼いた心臓は、ある事に気付いてしまう

僕を踊らせている神様は、天上ではなく、ここにいたのだと

そうか、この子を独占する限り、僕は喪失の恐怖と戦っていかなければならないのか


「…赤司くん…好きですよ……世界で一番、大好きです…」


それでもいい、と思える程、心を捕らえられてしまった僕には、逃げるという選択肢など用意されていなかった

覚悟を決めて、あの時のテツヤのように、真っ直ぐに向き合うよ

この苦痛は、神様からの懲罰であり幸せの対価なのだから




心臓を優しく
縛っておくれ




空色の原石は天の落し物、理不尽だらけの地上を生き抜いて磨かれた、人々の心を虜にする特別な輝き


“赤司くんは一生僕のもの”


きらきらきらきら、もう僕は君以外愛せない











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