ぼくらは、ふたつ、ではなく、ひとつ



まずは、おだやかに、ごあいさつ


「こんにちは、テツヤ」
「いらっしゃい、征十郎くん」
「おじゃまします……あ、バニラシェイクを買ってきたよ」
「わぁ、ありがとうございます! さぁ、上がって寛いで下さい……僕の家は征十郎くんの家でもあるんですから」
「ふふっ……そうだね、ありがとう」


つぎに、こっそり、ゆびきりげんまん


「……今日は、ふたりっきりですから、思う存分、」
「シッ、……ダメだよ、テツヤ……」
「あっ……、」
「……それは、僕らの暗黙の了解で、」
「ふたりの秘密、ですよね」
「そうだよ……まぁ、それは後ほどふたりでね」
「はい……じゃあ、先に部屋へどうぞ。僕はお茶とお菓子を用意してから行きますから」
「分かった……テツヤの部屋で、待ってるね」


たまに、うそつき、すきまをねらう


ギュウゥッ!!

「……わっ、征十郎くん。ビックリしました……不意打ちハグなんて、ズルいですよ」
「台所に立つテツヤが可愛過ぎるのがいけない……抱き締めずにはいられないだろう?」

ぽすっ、ちゅっ、

「わわっ、く、くすぐったいです……肩にキスしないでください……もう、お返しです」

ちゅっ、

「……髪にするよりも、唇にしてくれると殊更嬉しいのだが……」
「……それは、後のお楽しみってことで……今はやっぱり、恥ずかしいです」
「まぁ、仕方ないか……黄色い邪魔犬と可愛い我が子の目があるからな」


そして、まったり、こいびとごっこ


「テツヤ、ゆっくりお飲み」

ちゅ〜〜……、ぷはっ、

「……はい、すみません。ついつい勢い任せに飲んでしまって……あの、ミルクティー、どうですか?」
「あぁ、とても美味しいよ……大分上達したね。テツヤの家に初めて上がった時に出されたミルクティーは……新感覚の不可思議な味がして、思わず目が点になってしまったからな」
「もうっ!! その大失敗は忘れて下さいっ!!……特訓に付き合ってくれた感謝の気持ちを込めて淹れたのに、あんなことになるなんて……申し訳ないやら、恥ずかしいやら、反省して練習しましたよ……」
「ごめんごめん……ふてくされるテツヤも可愛いけれど……甘いものでも食べて、笑って欲しいな……はい、あーんして、テツヤ」

ぱくり、もぐもぐ、ごくん

「……じゃあ、征十郎くんも、あーん、してください」

ぱくり、もぐもぐ、ごくん

「おいしいです」
「おいしいね」


甘い甘いバニラシェイクとミルクティーとショートケーキを堪能したら、


「もっと、美味しいもの、知ってますけど」
「僕も、知っているよ、世界で一番美味しいもの」


そろそろ本当のお食事を始めようか?


グシャリと
無粋な瞳を潰して
ドスッと
僕らの子どもに助けてもらおう


「やっと、ふたりきりだね、テツヤ」






透明な影の殺風景な棲家では、ふたりの少年が愛を育んでいる

この空間は、二色しか、漂えない

赤色と空色、茜空と青空、移ろう瞬間が延々と流れたまま

穏やかな気怠さ、柔らかく融解していくのは、個々の身体と心

どうして、ひとつで良かったのに、僕らは分離して生まれてしまったのか

想いはいつも、ただひとつなのにね

自然の摂理のように、惹かれあったふたり

きっと、もともとは、ひとりだったんだ

そうでなければ、どうしてこんなにも僕らは、求め合うことを止められないの?

赤と黒は、ふたりでひとりの人間

磁石の如き引力は、そう確信させる

疑う余地など、ふたりの間には、存在しない

だからこそ、どうしても、ひとつになりたくて

ふたつの身体を寄せ合い
異なる質の肌に触れ合い
微かに差のある温度が通じ合い

だんだんと、とろけてなじんで、ひとつになれたような、夢心地

けれど、満たされたようで満たされないのは、それがただの儚い幻だからだ

結局、ひとりとひとりで、命が別れて、哀しくなるの

希くは、もっと、もっと、溶けて溶けて溶けて、綺麗に交じり合って、二度と離れられぬように

進化を止めて、退化を望んで、初めての着床から始めようか

ふたり、ふかふかベッドの上、無邪気に潜り込んだ、ふわふわ毛布の中

まるで、しあわせなふたりぼっち

思い出す、いつかの子宮の眠り

生命を繋ぐ、臍帯はどこにもないけれど、それで良いよ

母の愛よりもずっと、自分という君の全てが欲しい

酸素欠乏の密室、片割れの二酸化炭素こそが、僕を生かす

君の吐き出すものも何もかも全て飲み込んで、自分のモノにしたい

その切なる欲望により、ひとたび、君を食めば、純粋な甘さに酔いしれて

やみつきの食事、我を見失いそうになる程、君に夢中

中毒死の間際、気付いたのは、世界一美味しいモノの正体

それは、君の心、もうひとりの自分に対する自然の愛なんだと

運命、という言葉が、何処からともなく、聴こえて、泣いた

嬉しいのに、口惜しくて、切なくて、苦しいよ

こんなに想い合っているのに、どうして僕らはお互いの産声を知らないのだろうね

離れ過ぎた空白の温度を埋めたくて、必死に繋がろうとする日々

生き別れの寂しさは、永遠の死と同様の絶望感を味合わせる

片時も離れたくない、それでも、離れなければいけない、ひとりの人間としてふたりが生まれてしまったから

だからこそ、誰にも何にも侵されない“ふたりのせかい”は僕らの大切な時間

さぁ、ふたごの楽園で、戯れよう

額をくっつけて、四肢を絡めて、心臓の音が共鳴して

とくん、とくん、とくん、生きている

ふたつをひとつに感ずれば、やっと“生”に対して希望を持てた

1ミリでも離れれば、どこか欠損したように、心身不随へ陥る僕ら

お互いがもう、大切な自分の一部

心臓よりも、心臓なのは、君だけなんだ


死にたくない、

神様、お願いだから

こんなに愛し合う僕たちを

引き裂かないで

はなれたくない、

つながっていたいの

ずっとずっとずっとずっと……




「……テツヤに触れていると、落ち着く」

「……僕も、征十郎くんに触れていると、落ち着きますよ」


“だって、僕らは片割れ、君は僕で、僕は君だ”


一糸纏わぬ、生まれたばかりの姿で、抱き合っている赤と黒の少年

時折、ちゅっ、ちゅっ、と小鳥の囀りのようなかわいらしい音が聴こえてくる

頬に、額に、鼻先に、瞼に、首筋に、鎖骨に、軽快な口づけを落としては微笑み合う

愛の重さなんて、実質上測り知る事は出来ないけれど、同じ愛が同じ愛で返ってくる重量感をお互いが知り得ていた

ふたりだけには解る、鏡写しの愛情表現



「……テツヤの瞳は、丸くてコロコロして透き通っていて……まるでビー玉みたいだな……とてもかわいいね」

「征十郎くんの瞳って、色鮮やかでキラキラして宝石みたいですよね……とってもキレイ」


潤んだ瞳で見つめて、


「テツヤの髪は…水の糸のように、滑らかだ……僕の指でずっと梳かして流していたいな……」

「征十郎くんの髪は……僕らを繋ぐ赤い糸のようですね……僕の指にずっと絡めていたい……」


優しく髪を撫でて、


「あいしているよ、てつや」

「あいしています、せいじゅうろう」


耳元で愛を囁いて、共に唇を寄せる



君を食べて、僕が食べられて、共食い

君が僕のモノに、僕が君のモノに、共有

君と共に、僕と共に、生きて、共存



ふたりでひとつの僕らは、ずっとずっとずっと、“自分”を愛して止まないのでしょう



いつかきっと
ひとつの愛に生まれる
赤と黒のふたごたち






*感謝と謝罪

ミートさま…私が言い出しっぺの相互記念作品、果てしなく遅くなってしまい非常に申し訳ありませんでしたっ…!!!いくらミートさまが寛容なお方だからって、私はどんだけ甘ったれのど阿呆なのかと…本当にすみませんでした…。そして、もっと謝るべきは散々お待たせした癖にこのドン引きガッカリクオリティ駄文…敬愛の心を込めれば許されるって話ではありませんね…何度文章を書いたり消したりしても、私にはミートさまのように甘々ほのぼのイチャラブ幸せ赤黒ちゃんカップルを書く技量がありませんでした…加えて、まったりのんびりな赤黒ちゃんの妄想脳が働かず、苦肉の策で黄色と紫色の彼らにご助力してもらって、間接的にそんな風に見せかけて……その後はもうお言葉に甘えて好き勝手な赤黒ちゃんをぶちまけて…大変お粗末な結果です…ごめんなさい。まったりのんびり…を、ゆったりどろり…に、すり替えて、甘怠い赤黒ちゃんを書いた罪は、これから償っていきますので、どうかこれからも相互さまとして何卒よろしくお願い致します!!!とにもかくにも、ミートさまが大好きで尊敬している私と相互リンクをして下さいまして、誠にありがとうございました!!これからも赤黒ちゃんを共に愛でていきましょうね\(^o^)/


2013.3.26.ニニ子











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