*20000打企画:セクハラがひどい赤司とセクハラだと気付かない鈍感黒子の恋人未満赤黒ちゃん[どろんさまへ]












心一つで、千差万別の意味を成す




生まれながら帝王としての素質を備えた人間。帝光中学を支配している赤司征十郎くんはまさに王様そのものです。そんな彼からは圧倒的な覇王のオーラが漲り、誰もが恐れおののいてしまい…そんなこんなで、みんなが赤司くんへ抱く印象は、コワイ・ツヨイ・ヤバイ。まあ、確かに赤司くんは怖いし強いし…ヤバいなぁと感じる事もしばしば。だけれど、なんだか最近、僕は彼に対して全く異なる印象を抱くようになりました。


あの赤司くんを、カワイイ、なんて

そう思うのです、不思議なことに


それはきっと、僕だけが知る事を許されているからだ。みんなの前では決して見せない、甘えたがりの可愛らしい一面を。僕だけに心を開いて甘える愛らしい姿に、胸がキュンとするなんて、僕はオカシイのでしょうか?


赤司くん=甘えん坊ならぬ甘えん王


時折、僕がバスケ部の皆さんへその真実を伝えれば、彼等はとても複雑極まりない表情で完全否定をします。やはり、僕だけにしか甘えず、皆さんには凶悪な面ばかりを見せていますから、中々信じてもらえないのですね…とても残念です。



そんなある日、部活動の休憩中。赤司くんの申し出により、僕は全身の汗を拭いてもらっていました。ハードな基礎練習と先程まで行われていたミニゲームによって、僕の身体から滲み出た汗の粒は赤司くんのタオルが吸収していきます。風邪を引くといけない、そう言って嫌な顔ひとつせず、むしろ嬉しそうに世話を焼いてくれる優しさにキュンとしていると…


「赤司、さっきのミニゲームの内容についてちょっと話が……そう、怖い顔をするな、すぐに終わるから」


呼ばれてしまった赤司くんは、溜息をつき名残惜しそうに僕を残して、若干引きつり気味の監督の元へ行きました。そうして、彼の遠退く背中を目で追っていると、僕の隣へ誰かが近付く気配。チラリとそちらを見ると、その人物は珍しく神妙な面持ちの黄瀬くんだった。何かあったのかと訊ねようとすれば、無駄にイケメンな顔を歪めた彼は開口一番、


「…黒子っち!あ、あのさ…騙されちゃダメッスよ!」

「は?」

「…あのずる賢い肉欲大魔王はウブニブな黒子っちの前では邪悪な猫を被って、好き勝手やらかしてっ…!」

「ちょっと、黄瀬くん、落ち着いて下さい…目が血走ってますよ」

「だって!このままじゃ黒子っちの貞操が危ういッス!!不純な赤司っちに奪われる位ならいっそ…純粋に黒子っちを愛してる俺がっ…!!」

「涼太、いや、嘘八百発情駄犬…ちょっと、こっちにハウスしようか」

「ヒッ…!?!?あ、赤司っち…あああああの、俺の飼い主は…黒子っちなので…、」

「…僕の言う事をきかない犬は……誰の犬であろうと、厳しく躾をされるって知らないのかな…?」

「い、ぎゃ、わわ、くろこっち、たすけ…キャアアアアアア!?!?!?」


黄瀬くん、結局何を伝えたかったのでしょうか?けどまぁそんな事はどうでもいいですけどね。いま目の前で、赤司くんの魅力が大いに発揮されているのですから、そちらに心を奪われてしまいます。僕と一緒にいる時の柔らかな物腰とは正反対。その他の人間に対しては容赦なく凶悪制裁を加える横暴さ。はぁ…そのギャップがたまりません。ボロ雑巾犬になった黄瀬くんを引きずり回して躾し直す赤い王様の姿に見惚れていた僕。そんな時、いつも以上に眉間へシワを寄せた緑間くんにコソコソと手招きをされたのです。不思議に思いながらも、僕は彼の元へ向かいました。


「どうしたんですか、緑間くん」

「シッ……静かにするのだよ…彼奴に気付かれてはならないからな…」

「はぁ……それで、用件は何でしょうか?」

「…黒子、これを今日から肌身離さず持ち歩くのだよ」

「……なんですか、コレ…お札??」

「そうだ…人を疑う事を知らない、自分の身に何が起こっているのか解っていない、命知らず…いや、貞操知らずなお前を護る大事なお札だ…」

「あの、余計な気を回してもらって申し訳ないのですが……僕、別に危険な目に遭っていないので、こんなの必要ありませんよ?」

「何を言うかっ!!あれだけの過激性的スキンシップに犯されておいてっ!!」

「はい??そんな事されていませんよ…そもそも、一体誰に…」

「バカかっ!ニブニブ天使黒子っ!!そんなの、あの姑息極まりない変態悪魔に決まって…、」

「真太郎、何コソコソと痴れ事を並べてテツヤを困惑させているんだい??」

「!…くっ、出たなっ!!いたいけな黒子を脅かす色欲に塗れた赤い魔王め……はぁ〜〜っ…色魔・退散っ!!!」

「…ほう、この僕を色魔呼ばわりか…真太郎も随分と偉くなったものだな……いいよ、この僕に楯突くとどうなるか…その身にとくと思い知らせてあげるよ、死ん太郎」

「死んっ…?!…そう簡単に倒されてたまるかっ!今の俺はこの強力な退魔グッズのおかげで、たとえ最凶のお前にすら負ける気がしな…、なっ、なにす、う、わああああああっ目がああああぁぁあっ!?!?!?」


わぁ、さすがです、赤司くん。完全武装した緑間くんの一瞬の隙をつき、目にも留まらぬ速さでミドリンメガネ共々両眼を粉砕しました…視覚を奪われた緑間くんはお気の毒でしたが、そこからはもう虐殺王・赤司様の独壇場です。こうして、散々に虐げられて動かなくなった緑間くん。その上へ優雅に腰掛けて高笑いをする赤い人。そのお姿をポ〜〜ッと頬に熱を感じながら見つめていると、急に背後から肩を組まれました。


「テーツ!何やってんだよ、一緒に練習しようぜ!!」

「青峰くん…はい、そうですね…そろそろ練習しましょうか……だけど、その前に…」

「あん?なんだよ?」

「…あの…青峰くん、肩を組むドサクサに紛れて僕のTシャツの中に手を突っ込まないで下さい…そして、さりげに僕の乳首を触らないで下さい…完全なるセクシャルハラスメントですよ」

「別にイイだろ、俺のテツは俺のモノ、テツの乳首は俺のモノ」

「…僕の乳首は僕のモノです。青峰くんに弄られても何も感じませんから止めて下さ…」


ガッ、グシャアアアアアア…!!!


「えっ、」

「大輝…一度此の世から滅亡して真っ当なガングロに生まれ変わろうか」

「…あ、か、し…おまっ…ひと、のこと、…いえね、だろ……おま、え、こそ…テツへ…セクハ、」

「えっ?」


グシャッ!!!


「…全く、年がら年中飢えてるエロ峰には困ったものだな……テツヤ、僕が来たからにはもう大丈夫…お前に指一本触れさせやしないから、安心して?」


あぁ、赤司くんは、僕だけを守ってくれる最強騎士様ですね。僕にいやらしい行為をしでかしたエロ峰被疑者の顔面を勢い良く掴み取り思いっ切り潰して瞬殺して下さいました。その勇ましさと共に、強張った僕の心をほぐすよう、穏やかな笑みを向けてくれる彼の優しさで、胸の奥は柔らかな熱を帯びてゆきます。ご自分よりも大きな人間を軽々と振り回しては床へぶん投げて叩きつける拷問を繰り返し、性的嫌がらせをしたガングロ罪人を粛清している姿は、さながらこの世の悪を裁く神様のようですね。


「…ふぅ、こんなものかな……全く、涼太も真太郎も大輝もオイタが過ぎたね……なんだか僕、みんなを躾し過ぎて疲れちゃった……ねぇ、テツヤ…良かったら、少し膝を貸してくれないか?テツヤの膝枕で安らぎたいんだ…いいかな…?」


眉毛を下げてちょっと申し訳なさそうに、小首を傾げて膝枕をお願いする赤司くん

控えめでしおらしいおねだりをする僕だけの可愛い王様

ああもうっ、彼の可愛さは正義ですよね!?!?






「う〜ん…正義とかよくわかんね〜けどぉ〜……赤ちんが可愛くなるのって黒ちんの前だけじゃん。それって黒ちんが唯一特別だからでしょ。それにしてもさ〜…あんま大きな声じゃあ言えないけど、赤ちんはなんかズルいよね〜どんだけ黒ちんに触っても許されるなんてズル過ぎるよ〜」


あれっ?紫原くん、赤司くんへ決して逆らわずに子どものように懐いている君は、僕の同志に近い人間だと思っていたのですが、違ったようですね…ちょっと、悲しいです。


「そんなカオしないでよぉ…かぶりつきたくなるじゃん。なんだかんだ黒ちんだってズルいってかヒドいし。俺がもし黒ちんを性的な意味で食べようとしたら拒否するくせに、赤ちんが同じ事したら普通に受け入れるんでしょお?」


ちょっと涙目でプクッと頬が膨らんだ不貞腐れ紫原くんに言われた事を想像して考えてみると………確かに、そうですね、としか返せませんでした。そうすれば、更にプクゥっと膨らむ、紫色の子どもの頬っぺた。彼もどちらかと言えば僕の中で可愛い部類に入る友人ですが、手放しで全ての言動を受容出来る相手ではありません。そんな紫原くんの問いかけで、改めて、僕は実感しました。



赤司くんにとって特別な僕は、赤司くんが特別なのですね、とてもとても







初めて、触られたのは、お尻でした。試合の前に、コート脇でスタンバイしていると、殿部に感じたのは誰かの手で撫でられ揉みほぐされる感覚。最初は何が起きたか解りませんでした。何故ならば、その手の主がバスケ部鬼主将・赤司征十郎くんだったのですから、思わず石化してしまいます。だけれど、


『テツヤのプルンとした桃尻を撫で回してモミモミしていると…張り詰めた心がフワリと安らぐね…』


なるほど、赤司くん、意外に緊張しいなのですね。完全無欠な彼の人間らしい素顔を見た気がして、僕はなんだか親近感をおぼえました。赤司くんの試合に対する不安感を僕の尻ひとつで拭えるのなら安いもの、むしろなんだかありがたいように感じたのです。それからというもの、『テツヤ、いつもの頼む』という一声で僕は赤司くんの緊張不安緩和役としての任務を全うするべく、進んでお尻を差し出しています。


こんな事もありました。お昼休みはふたりっきりで一緒にお弁当を食べるのが習慣になっているのですが…赤司家自慢の豪華重箱弁当が一向に減らない時があったのです。よく少食な僕に対して食事に関する注意喚起をする彼のそんな姿を心配すると、


『最近、なんだか胃腸の調子が悪くてね…消化不良であまり食欲が無いんだ……でもちゃんと食べないといけないな…このままじゃ力が出ずに部活で倒れるかもしれない……え?何なら食べられそうかって?…そうだな…出来ればこの弁当のおかずを吸収し易く粥状化して欲しいな……テツヤのお口で』


そう上目遣いで頼まれたので、常日頃お世話になっている赤司くんの為ならばと…僕は意を決して色取り取りのおかずを口に入れしっかりと咀嚼し唾液と混ぜて柔らかくして…、多少恥じらいながらも口移しで赤司くんへ栄養補給をしました。その度、後頭部を押さえ付けられ、そのまま舌と舌が絡み合うキスへと強制的に移行してしまい、中々食事が進まない事が難点でしたが…彼が満足そうに笑っていたので良かったです。


そういえば、あんな事もしましたね。肌寒い日は必ず赤司くんにビッタリと密着されるのが常ではありますが、その日は大寒波到来、とっても寒い日でした。丁度次の日がお休みだったので、赤司くんの提案で赤司家へお泊りする事になったのです。部活を終えた寒空の帰り道、腕を組んで身を寄せて北風を耐え忍び、さながら二人三脚のように歩いて豪華絢爛なお宅に着きました。赤司家へ入れば、丁度良く効いた暖房と執事さんから頂いた温かいホットココアのお陰で、やっと南極から生還したような気持ちに。そうして、お食事をしてお風呂に入ってテレビでバスケの試合のDVDを見て…気が付けば就寝の時間になり、赤司くんの大きなベッドひとつにふたりで眠る事になりました。赤司くんとは普段からくっついて生活をしているので、何ら抵抗はありません。逆に赤司くんがそばにいないと違和感があります。案の定、ベッドの中でも身を寄せ合って眠ろうとしましたが…その年一番寒さを記録した夜、寒がりな赤司くんの身体は未だにプルプルと震えています。それを見兼ねて、暖房の設定温度をもう少しあげようかとベッドから出ようとした時、僕の身体はすぐに引っ張られてベッドの中へ戻されてしまって、


『暖房の温度を上げたって…中々肌へ温かさが伝わらないよ。…こういう時はやっぱり人肌が一番だ…この寒さを凌ぐ為には、今すぐ素肌で密着し潔く目合って汗をかくという最善策しか残されていないよ、テツヤ』


へぇ、そうなんですか。と、感心するやいなや、スルスルと脱がされていく僕のパジャマ。冷たい空気に晒されていく肌がプツプツと鳥肌を立てていく。早く温まりたいな、そんな気持ちが赤司くんのパジャマを脱がせていく手の動きを段々と速めていきました。全ての肌を曝け出して、寒さの境地へ立たされた僕らは、赤司くん曰くこの状況における最善策なるものを実行に移す。ふたりの温度を分け合って浸透させて、ひとりとひとりを繋げば、熱くて熱くてたまらない。ここだけ、熱帯雨林のように、あつくてしめっぽい。赤司くんの言った通りですね。人肌はこんなにも、あたたかくて、しかも、ここちよい。



『……テツヤ、テツヤ、…××しているよ……』



とろけるように、意識を消失していく最中に聴こえた、やさしくてあまい言葉。とろけ過ぎて彼が何と口にしたかはよく憶えていないけれど。ただただ僕は、朧げなしあわせを感じていたのです。







「…あのさぁ……正直ドン引きしてガチ泣きしそうなんだけど………赤ちんのこれまでの黒ちんに対する行動って、200%セクハラじゃねぇの…?」



え?赤司くんが??僕にセクハラ???

なんですか、それ、不味そうですね

彼のは、セクハラなんかじゃ、無いですよ

何故なら、僕は全くもって、嫌じゃないですから

赤司くんに触れられると、素直に嬉しいんです

理由?そんなの野暮ですね

僕は、極めてシンプルな感情を、彼に抱いています

ただ単に、“好き”という心を



理屈抜きで受容するままに、黒子テツヤは赤司征十郎の全てを愛しているのでしょう







ふたりの間に罪は無い

在るのは道理知らずの愛だけだ








「ん?僕がテツヤへセクハラしているだと??何を言うか、セクハラなんて下衆の為せる卑劣な犯罪だろう。僕の行動は断じてセクハラなどではないよ……、」



あぁもう、いい加減理解してくれ

道理を振りかざす単細胞共め

テツヤに対する僕の行動の全ては

溢れ出す本能に従ったまでの




「れっきとした、愛情表現さ」




テツヤへの純粋な愛欲なんだと










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