四月一日。今日はエイプリルフール。どんな嘘をついても笑って許される日だ。きっと今日はあちらこちらで様々な嘘つきが出没するだろう。まぁ、この僕にどんな嘘が舞い込んだとしても、それに動じる事なんてあり得ないけれど。馬鹿素直で何でも信じ込んでしまう、良くも悪くも純粋な人間ではないからね、僕は。それに、全てを見抜く瞳を持った僕に対して、無謀な挑戦を仕掛けてくる浅はかな人間はそうそう現れないだろう。もしそんな馬鹿者が勝負をしに来たとて、「この僕がそんな安っぽい嘘に騙される訳がないだろう?」と鼻で笑いながら存分に見下してやろうじゃないか?



「赤司くん、正直に申し上げます。僕は君の事、あまり好きではないようです」



ん?テツヤ、何て嘘をついているんだい?いくらエイプリルフールだからといって、そんな下らない嘘を僕について、許されると思っているのか?お前が僕を好きじゃない訳がないだろう?僕は地獄で苦しんでいたお前に蜘蛛の糸を垂らしてあげた神様なんだぞ??



「もしかして、嘘だろ、って、思っていませんか?…察しの良い赤司くんなら、勘付いてくれると、期待していましたが…残念ですね……本当ですよ」



またまた、テツヤったら、人が悪いなぁ。そんな嫌悪感丸出しの表情を熱演してまで、この僕を騙したいのかい??嘘をつくなら、もっと、笑える嘘をついてくれないか?



「僕だって…こんな汚い感情を一応の恩人である君に抱きたくなかったです…それでも、抱かずにはいられませんでした……君は、あまりにも、僕を馬鹿にしている」



馬鹿になんか、してないよ?ただ、愛しているだけ、とてつもなく、愛しているだけだ。なのに、愛しいお前はそんな僕に対して、非道だなぁ。こんなにも憎々しい言葉をぶつけるなんて、非道いなぁ。先程の質の悪いおふざけは、今回だけ目を瞑ってあげる。あんな心臓に悪い嘘は、金輪際禁止にしてあげよう。



「…どうせ、君は…僕の叫びに、耳を貸して、頭に取り込んで、心で理解してくれる訳がないでしょうが……それでも、言わせてもらいます…今日から僕は、生まれ変わりたいんです。」



えっ、誤解だよ、テツヤ。僕はお前の言葉ひとつひとつを大切に心の中へしまい込んでいるんだよ?今、目の前でお前が吐き出す、刺々しいものすら間に受けて、ズキズキと心が傷んでしまうんだ。一体、この償いを、どうしてくれるの?僕を苦しませるこの痛みを、お前は知っているのかい???



「何ですか…その、僕を責めるような、瞳は……僕が君に掠り傷ひとつでもつけたら、大罪なんですか?そんなに君は、自分の為す事全てが正義で成り立つ程、大層な人間様なんですかっ?!」



あれっ?どうして、テツヤは悲痛な涙を流しているの?もしかして、僕と同じように、苦しんでいるのか?いや、もしかしたら、僕以上に、



「僕はっ…赤司くんの操り人形なんかじゃない!!…自分の意志を持った、ひとりの人間なんです…もう、君の思い通りには、させない…!!!」



もがき苦しんでいたのかな?

いや、まさかね、全部ウソだろう??



「…君の、その、とぼけた顔、イグナイトパスで、潰してやりたいですよ……腹立たしいですね……あぁあ、めんどくせぇ、もう、ぶっちゃけていいますよ…」



えっ、テツヤ、もう、いいよ、



「黒子テツヤは、赤司征十郎が、大嫌いです」



天邪鬼なお前の可愛い嘘はもう十分

だから、エイプリルフールのお遊びは、もう終わりにして

素直に大好きと言ってくれないか?



「君は、僕の神様なんかじゃない、ただの高慢ちきな人間だ」



プチリ、

あっ、糸が、切れちゃった

ボトリ、

地獄へ落ちたのは、



「絶交です、さよなら、赤司くん」



僕だったのは、何故どうして?

あれれ、もしかして、

僕の神様は、



「この僕が…、そん、な…や、安っぽい嘘に、騙される訳が、…ないだろう?」



震え声の僕を鼻で嗤いながら見下す、



「赤司くん、僕は、いつだって、本気ですよ」



テツヤ、お前だったのかい???




四月一日、
自称・神様の失墜











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