セーブもリセットも出来ないリアルな世界
だから、理想の現実までコンティニュー
どこまでも、どこまでも、ボタン連打
それでも、カウントダウンは、既に始まっていた
三、
『僕は、もう赤司くんのそばにいられません』
ねえ、テツヤ
どうして、僕の前から消えたの?
どうして、僕の手から離れたの?
どうして、僕のバスケをしてくれないの?
テツヤは、僕を、コートに、ひとりぼっちにするのかい???
『…赤司くんは、僕がいてもいなくても、バスケができるんですよ…無力な影なんて、君には必要ないのですから』
お前は、僕に、意味の無いバスケをしろというのか、
そんな、バスケなんて、
『さよなら、赤司くん』
“テツヤのいないバスケなんて、殺してやる”
二、
あの頃、バスケの世界のどん底にいた乞食の如き無力な僕
そんな窮地を救ってくれたのは、世界の頂点に君臨する赤い王様だった
新たな存在意義を見出され、幸せだったはずの成り上がりの影
だけれど、結局僕は底辺に変わりなかった
王様も王様の優秀な駒達も、どんどんと高みへ昇っていく現実
あぁ、届かない、届くはずも無い
半ば裏切り半ば裏切られた僕は、泣く泣く、離れ離れの、自分のバスケを選んだ
もう一度、バスケをやり直したい
弱り切った心の底からの湧き立つ、その強い信念だけを頼りに
恩を仇で返す事になっても、僕は王様に逆らった
茫然としながら僕を抱き締めた王様の震える腕を振りほどいて、残酷な現実から逃げ出したんだ
そうして月日は流れ、王様・赤司くんと敵同士になって初めての直接対決の日を迎えた
きっと彼は、勝手に居なくなった僕を、さぞかし恨んでいるだろう
いや、無関心か、無力な僕なんて才能を持て余した彼にとっては、取るに足りない存在なのだから
なのに、僕の予想は、おかしな重力方向へ引き寄せられ、眩暈がする程裏返ってしまう
「やっと、会えたね…テツヤッ!!」
頬を紅潮させ涙ながらに再会を喜ぶ、赤い少年は、一体誰なのだろう??
「テツヤと、バスケができるなんて、うれしいな」
無邪気に殺意の微笑みを浮かべる君は、僕の知らない赤司征十郎らしい
「ねぇねぇ、テツヤのバスケに勝ったら、もう一度、僕のバスケをしてよ……ずっとずっと一緒に」
どうやら僕は、二度目の人生の岐路に立たせられているようだ
死ぬ気で戦う、選択肢はこの一択のみ
あの日に帰りたい、
そんな後戻りの選択肢なんて、この世界に有り得るはずも無いのだから
一、
勝ったのに、一生勝てないと、恐怖戦慄
「…テツヤ、テツヤ、お前はとても強いね…この僕を負かすなんて、スゴイよ、スゴイ…もっと、もっと、お前とバスケがしたくなる……次は負けないよ、次こそ僕が勝って……黒子テツヤを手に入れるから、それまで僕の揺るぎない想いを決して忘れないで…僕が誰よりもテツヤと共にバスケをしたい気持ちを…テツヤを狂おしい程愛している心を…忘れないで、お願い、テツヤ」
どうすれば僕は、赤司征十郎の愛憎に狂った瞳から逃れられるのか
どう足掻いても、僕には彼から勝ち逃げする道が、何処にも見当たらないのだった
絶望の末路、悟って、零(ゼロ)
きっと、
かならず、
ゲームオーバー
ラスボスに陥落・寵愛、クリアな未来は其処に無い