*あんけーと:悲恋赤黒ちゃん
※死の描写が有る為、閲覧注意














“ごめんなさい、赤司くん、さようなら”


儚げに微笑んで涙を流すお前の拍動は途絶える寸前、


ピッ…、ピーーーーー……、


その無情な機会音は、僕の世界の崩壊を示した







黒子テツヤは、死んでしまった、らしい

らしい、というのは、僕はそれを信じていないから

確かに、テツヤはある難治の病気を患って、病魔と戦っていたけれど

誰よりも芯が強いテツヤが、そんな簡単にこんなに早く、負けてしまうわけが無いじゃないか

この僕を、初めて負かした、あのテツヤは、どんな苦境に立たされたって、最後まで絶対に諦めない心を武器に、勝利を手にしたんだから

死ぬなんて、あり得ないだろう?

何故だか、白い花々が溢れる静謐な棺へ入れられてしまったテツヤは、いつもよりいっそう美しい

青白く透き通る肌に触れたら、氷よりも冷たくて冷たくて、霜焼けになったのか、ジリジリ指先が熱くなった

シクシクシク…かなしみの音が鳴り止まない

涼太も真太郎も大輝も敦も桃井も、みんなみんな、シクシクシクシク

涙を流す理由があるようだ、それは一体何?

テツヤがこんなにも、美しいのに

純白、あぁ、結婚式だね、僕とテツヤの結婚式なんだ

あんなにみんなで取り合った可愛い可愛いテツヤを、僕に掻っ攫われる事が哀しいのだろう?

大丈夫、世界中の誰よりも、僕がテツヤを幸せに出来るんだ、絶対に

だから、安心して、みんな笑えばいいのに

誓いの言葉は、僕だけでいい

テツヤは、クチナシになってしまったようだから

それでも、僕は、


「テツヤ、僕は一生涯かけてお前を愛し抜く事を誓う」


赤司テツヤに、愛を捧げる


あぁなるほど、目を瞑り続けているのは、僕の唇をずっと待ち続けていたからなんだね

なんて愛らしい花嫁だ


「愛しているよ、テツヤ」


ちゅ、触れ合った熱い唇と冷たい唇


それは、永遠の愛を誓うくちづけ


ふわ、り、



“ぼくも、愛しています、征十郎くん”



一瞬、安らかな表情の、お前が笑った、ほのかであまい幸せが溢れて笑ったんだ




ポタリ、

瞳から、何かが落ちて、テツヤの頬に、キラリと光る

反応は、無い、何も、何も、

無、




「…っ、う、あ、…うわあああああっ…!!!いやだいやだどうして、っ!?テツヤが死ななきゃいけないんだっ!!!テツヤがいない世界なんて要らない…!!!テツヤを見殺しにした神なんて死んでしまえっ…!!!ひっ、く…う、あっ…あ……あいしてるんだ……テツヤ…テツヤ、テツヤ、…死ぬほど…あいしてる……お、ねがい……おねがいだから……ぼくを、おいていかないで……、」




テツヤといっしょに、死んでしまおう

何度も、赤い鋏を自分に向けて、真っ赤に染めようとした

それでも、どうしても、自分の心臓を殺せなかったのは、



『赤司くん、もし僕が死んでも、君は絶対に生きて下さいね。僕の分も一生懸命心臓を動かして、自分のいのちを大切にして下さい。凛とした君の背中を、僕はいつでも見守っていますからね』



テツヤのやさしく残酷な言霊の力



ひどいよ、テツヤ、僕はお前がいなければ死人同然で、赤ん坊のように泣き喚いて、廃人のように気がおかしくなるんだ、まばたきすら辛くて辛くて、たまらない、何度まばたきをしたって、見間違いじゃない現実に、心が血だらけになっている、どうすればお前無しで生きていけるのか、もうすぐ炎に曝されてしまうお前と一緒に煙になって天へ昇りたい、そしたらずっといっしょ、なのに、その選択をお前は絶対に赦しはしない、頑固なお前の強い願いは解っているのに、僕は本当に弱い人間だ、テツヤがいなければ呼吸もままならない、なんて、弱過ぎて、お前は苦笑するかな、でも、お前が笑ってくれるなら、なんでもいい、テツヤの笑顔が幸せの象徴なんだ、多分きっと、僕がこの一生分のかなしみを胸に抱きながらもお前の言葉の通りに生を全うしたら、テツヤは笑って笑ってくれるだろう、笑って、



「…さよなら、テツヤ……また、逢う日まで……」



いつか、僕をやさしく迎えてくれるだろう


その日まで僕は、この心臓を、テツヤの化身を、一生涯かけて守り抜くよ、この愛に誓って、お前の最期の願いを、叶えてみせる、どうか、僕を、空の彼方から見守ってくれ



テツヤ、














“ありがとう、赤司くん、君はやっぱり、僕が愛する、強く優しい人です”










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