すかさず、僕の悲観的鼓膜に、幻聴
“オマエごときが、キボウをイダクな、オコガマシイ”
   あぁ、でもダメだ、僕なんかがオカシな期待をしちゃいけない。それに、ぬか喜びほど、滑稽極まりないことは無いのだから。理由を訊きたくても、訊かないままが最善の選択だ。やっぱり、逃げ出したい、見せかけの希望が破壊されるだけの現実から。
「……赤司くん、僕はもう大丈夫です」
「……テツヤ? 何を急に、大丈夫な訳が無いだろ」
「十二分に君の優しさを恵んで貰いましたから、僕はひとりでも生きていけます……だから、」
「テツヤ、僕の言葉が、聞こえているのか?」
「そろそろ……この手を離して頂けませ、」
「イヤだ」
   ギュウゥゥ、いっそう、繋がりが強固になってしまった、ふたり。僕の自己防衛的な申し出は、完全に拒否されてしまい、凄みを増した彼の瞳に気圧されて、もう抵抗出来ない。
   こわい、こわい、こわい、だけれど、
「僕は、テツヤをひとりになんてしないよ。したくないんだ……でも、お前にはずっと見えない孤独の壁があって、僕は拒絶されるのが、怖かった……テツヤに嫌われるのが、どれだけ恐ろしいことか……死ぬより、ずっと、おそろしい……だから、やっと、お前から僕へ少しだけ心を開いてくれて……それがどれだけ嬉しかったか……なのに、お前はまた僕から逃げ出そうとする。僕の気持ちを知ろうともしないで、勝手にひとりになろうとしないでくれ……」
   こわかったのは、僕だけでは無かったと、初めて思い知らされた。
「……僕は、ひとりなんて、いやだ……テツヤがいない世界なんて、イヤなんだ。もう、限界なんだよ」
   ハラハラと流れ落ちる澄み切った涙、僕の孤独な殻を、破り始める。
「……テツヤ、ひとりぼっちで死に立ち向かうのは、さみしくないのか……?」