もう、終わりだ。

   ガクリッ、全身から、力が抜けて、膝が床へ落ちて、ゴツンッ、音を立てる。

「!!……あか、しくん……今の、きいて……」

   僕の存在を認識した、カラフルな人間達と透明なあの子。他の人間はどうでもいい、だけれど、一番どうでもよくない人間に、見られたくは無かった。赤司征十郎の情けない姿、驚いたまん丸のビー玉に映って、余計に侘しくなる。

「……あかしく、あの……、だいじょうぶ、ですか?……もしかして、具合が悪いんじゃ……、」

   悪いのはこの無力な心だ、好きなだけで何も出来ずに、どうして、どうして、ぼくは、

「え、っ、な、なん、で……なんでっ、泣いているんですかっ……?!」

   あの頃のように、ただ泣く事しか出来ないのだろうか。

「……ぁ、なかないで、……なかないでください……あかしくん、なきやんで……」

   ポロポロポロポロ、止まらない雫達は三歳の頃と変わらず、ひとりぼっちで寂しげだ。テツヤに触れたい自分と、テツヤを壊したくない自分。相入れない彼等は、赤司征十郎の中で、涙ながらに首を絞め合い、未だその勝負に決着がつかない。どうしたら、このジレンマを無くす事が出来るのか、その術を見つけられずにいたけれど。結局、“嫌われている”と、誤解されてしまった、“好き過ぎている”テツヤに。本当を、何も、伝えられないまま、ようやく、僕の虚しい恋は、終わりを迎えるのだ

   美しいものを壊す力しか無い僕の手は、もう二度と同じ過ちを繰り返してはならない。神様、この涙が枯れたのならば、あの死ねない花も枯らしてはくれないだろうか。お願いです、僕の宝物、純真無垢な硝子細工への想いを、殺して下さい。

   そう、僕が、死刑を願った瞬間、訪れたのは、

フワッ……、ギュウッ……、ホワリ……、

透明なやさしい温もり。

   ドックン……!! 一瞬、心臓が止まって、すぐに、バクバクと波打っていく、心膜が破けて血液が溢れ出しそうな程。

   何が起こったのか、よく解らなかった。身体中を埋め尽くしていた真っ黒は消え去り、頭は真っ白で、心は真っ赤で、見事なパニック状態。僕の中に増悪し続けた、怒りも妬みも悲しみも、この温かみによってキレイサッパリ葬られてしまった。そして、僕の心に残ったのは、

「……ごめん……ごめんね、テツヤ……ぼくは、……ぼくは、……テツヤが、すき、好きなんだ……」

素直な想い、ただひとつだけ。



美しい想いは、
死ねない
消えない
壊れない




   突然の告白への驚きで力が弱まった後、それに応えるように力が強められた抱擁。その温かさで回復した心臓により、隅々まで血が通い始めた身体。震えながらも、愛しい宝物へ、伸びてゆく、僕の指先。やっと、愛しい硝子細工へ触れて、恐る恐る抱き締め返した僕へ、伝えられたのは、

「……君に、触れられる。この瞬間を……ずっと、ずっと、願い続けて、夢を見ていました……嬉しくて、嬉し過ぎて、……あぁ、もう、赤司くんの涙、移っちゃったじゃないですか……、……好き、赤司くん……大好きです」

夢よりも夢のような、愛の言葉。




「テツヤ……抱きしめても、いいか?」

「赤司くん……どうして、いつまでたっても、そんなに、ビクビクしているんですか」

「……だって、テツヤは、硝子のように、華奢で繊細で……容易く壊れてしまいそうだから、」

「馬鹿ですね……僕は硝子なんかじゃないですよ……もっと頑丈な鉄だと思って、力の限り抱き締めて下さい」

「鉄か……でも、どうしても、壊してしまうんじゃないかって、不安なんだ……僕のテツヤへの愛が有り余って、力加減が出来そうにないから……」

「あぁもうっ!埒が明きませんね!……じゃあ、トラウマ克服の為の勝負をしましょうか」

「勝負? それは、どういう、勝負なんだ?」

「ふたりで抱き締め合って、相手への愛情の強さを、抱き締める力で競い合います。勝った方が相手をより一層想っていると証明されて…負けた方に願い事をひとつ叶えさせる権利が得られます……どうですか?」

「……お相手願おうか……テツヤ」

「……望む所ですよ……赤司くん」



ギュウギュウギュウウウウウ……!!!



ふたりで証明していこう、永遠に壊れない愛の形を





*感謝と謝罪

高智さま、相互記念作品の完成が物凄く遅れてしまい、本当に申し訳ありませんでしたっ!!加えて、リクエスト内容から飛び越えた展開も作ってしまい、すみません…両片思いで帰結出来ない技量不足を恥じながら…勝手に両思い赤黒ちゃんで締めくくらせて頂きました…書いている内に、弱弱しい赤司さまが可哀想になってきて、どうにか幸せにしてあげたい気持ちが優ってしまったのも理由のひとつです。一応、この作品を捧げさせて頂きますが、書き直しも可能ですので、その際は遠慮なさらずお申し付け下さいませ。

そして、改めて、こんなどうしようもない人間と相互サイトとしてお付き合い下さいまして、心より感謝を申し上げます!!心優しい高智さまのお支えのおかげで、落ち込んだりしながらもどうにか頑張っていられます……ありがとうございます。どうかこれからも何卒よろしくお願い致しますね!!


2013.2.4.ニニ子










「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -