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×
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だ、
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ポタリと涙を零して
ポツリと嘆きを呟いた
自分自身の無力さに
失望したあの瞬間は
今でも忘れられない

努力という手段しか
その手に与えられなかった
並以下人間である
可哀想な自分全てを
手離して諦めようとした

僕には何も無いから
潔く透明になって
この不条理な世界から
消えてしまえばいいんだ

誰からも必要の無い僕は
誰からも気付いてもらえない
誰なんでしょうね、僕は、無意味?

そう、自己を手放して
暗闇に埋もれかけていた時
スッと、力強く眩い光が
黒の世界へ射し込んだんだ

『唯一無二の才能を秘めている、お前を、黒子テツヤを、この僕が、導いてやる』

自分に絶望し
自分の消失を甘受し
透明になりかけた僕へ
手を差し伸べて
救ってくれたのは
神々しい光を纏った
赤い少年だった

怜悧に徹し猛々しく燃える
彼の二色の双眸
その奥に潜む
やわらかな何かが
死にかけていた僕の
とある琴線を刺激して
思わず、縋ってしまった手

その、把握反射から
僕の世界は、一変する

世界を覆す武器を
この無力な手に与えられたから

あの、赤司征十郎に
教え込まれたパスという
僕の新たな生命線を

『テツヤ、お前は僕達光の、かけがえのない影だ』
『テツヤの存在も、キセキなんだよ』
『テツヤがいなければ、僕の創る勝利は成り立たない』

そうして、
ズブズブ、底無し沼の如き
現実世界は
フワフワ、無重力宇宙の如き
夢の世界へ


生きてて、良かった


強くて頼もしい仲間が
自分を必要としてくれて
何よりも大好きな
バスケが出来る力を
やっと手に入れた

後天的であっても
まるで先天的であるかのよう
夢のような現実感覚

そう、まさしく
人智を超える絶対的な力を
その身に宿した人間に
僕は運良く助けられ
類稀なる力を
この身に宿してもらえたのだ

僕とは果てしなく違い
生まれながらの勝利者である
赤司征十郎くんに


いわば、僕の本当の神様だ


神様は赤司くんだったのか
そう錯覚する程、
彼は僕の全てを統べていた

赤司くんを中心に
クルクル回る世界
心地が良い、むしろ、心地が良過ぎた

『テツヤ、お前は、本当に愛らしいね』

誰からも、神童と評される、神が生んだ神の子は、僕をこよなく愛してくれているから

誰もが言っていたこと
赤司くんは、神様みたいだと
僕は、それを、噛み締めるように、
深く深く、頷く

誰かが言っていたこと
僕は、赤司くんという神に、
唯一愛された人間だと
僕は、それを、聴き流して
ただただ、甘やかされる


「…ほら…テツヤ、頑張ったご褒美だ…」

今日も、君の、赤い唇が、僕に、触れた
やわらかく、あまく、いとおしく

今日も、僕の赤い頬を、君が、撫でる
やわらかく、あまく、いとおしく

君の、その、赤は、きっと、本物、だ

生まれながらにして、愛が、宿っているそれは、君が、僕を、見つけ出してくれた時に、僕が、気付いてしまった、君の、唯一の弱点

君の真っ赤な水晶玉に揺らめいた、あの、やわらかい、消えない熱を、見抜いたのは、必然的に、僕だけ

ドクン、ドクン、ドクン、

聴こえる、自分の、生きている音

ジクン、ジクン、ジクン、

聴こえる、自分の、やましい音

生まれ変わっても、僕は、
透明でなければならない、人間
消えてしまえばいい、人間

変わったようで、変わらないのは、
生まれながらにして宿した黒が滲む魂

それに、気付いたら、
もう後戻りなんて、出来なかった



きっと、赤司くんには、解らない

僕がどんなに愚か者か、なんて、解らないだろう

君と、僕は、あまりに、正反対、だから

「テツヤは、純粋だね、僕とは違って、無垢で、綺麗だ」

あやうく、泣きそうに、なる

嘘、と、訂正を出来ないのは、僕が君にそんな嘘をつかせる、偽りにまみれた人間だからだ

僕が君にどうにか好かれたいせいで、トバッチリ、君もとんでもないホラフキに成り下がる

共倒れも覚悟はしている、それでも僕は、 君より先に

「あかしくん、」
「なんだい、テツヤ」
「ぼく、しあわせ、です」
「……どうして?」
「……君と出逢えて、君に見つけてもらって、君を好きになれた」
「…………うん」
「そして……君も……、」
「好きだよ」
「… ………はい」
「どうしようもない位、テツヤが、好きだ」

心臓に、切り刻まれる、罪悪感

「……僕も、同じ気持ちです……それ以上です」
「ははっ……テツヤが僕に勝つ事は無いよ。愛する相手を想う気持ちの強さと深さは、特にね」

君は、笑う
慈愛に満ちた
美しい感情を滲ませて


いっそ、泣いて、しまいたい


君は、綺麗だ
僕は、穢い

盲目的に僕を愛する君は
僕を盲信してくれている

僕が、ずっと、

「僕は、一生をかけて、テツヤに敗北を味合わせるよ……むせかえる程に、ね」

君のそばに、いると
(ぼくは、いつか、きえるのに)

「……はい、楽しみにしています……あかしくん」

笑ったフリをして、泣いてしまえたら、僕は楽になれるのだろうか

君が僕に向ける純粋無垢な美しい愛が、僕を、やさしく、絞め殺す愛なんて、信じられない

ましてや、力と自信と光に満ち溢れる、神に愛された天才の愛情なんて、幻以外の何物でも無い

稀有な愛情という異物を信じ、心への侵入を許可してしまったら、きっと僕は重篤な病に感染して、馬鹿をみながら死に至るだろう

だけど、そんな風に彼の想いを疑いながらも、自分に対する依存心を、感じ取っていた僕は、それを利用する事にした

君の寵愛を無碍にしないのは、素晴らし過ぎて妬まし過ぎる君の心を、徹底的に打ち砕いて壊す為の大切な布石

ちっぽけな僕を
より一層どん底へと
知らず知らずの内に
突き落とす、君へ

神に愛されなかった
凡人以下の僕を
ひどく惨めにさせる
黴に酷似した感情を
何も知らずに向ける
惨めさなんて知らない
赤司くん、なんて、キライ

もっと、僕を
苦しめれば、いい
痛めつければ、いい
絞め殺せば、いい

君が僕へ犯した、
無意識の暴力の分だけ、

「テツヤ、僕は、お前の愛があれば、酸素さえも、要らない」

尊くて愛しくて憎らしい君へ、一生消えない致命傷を捧げられるから


キエテヤル、キエテヤル、キエテヤル


無力で愚かな人間の
鉾先を間違えた
穢らしい復讐心なんて、

「……ありがとう、ございます……アイしてます……あかしくん」

絶対、君には、一生、解らない



殺られる



殺って




神殺し











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