片想いは、不毛な恋だ。

   自分が相手をどんなに想えども、所詮一方通行。ひとりよがりな恋愛へ盲目的に夢中になれば、何時の間にか暴走してしまい、単身事故を起こして死亡。想い人が、ボロボロ涙を流して、自分の死を悼んでくれる保証など、有りやしないというのに。それ以上に、献身的な自己犠牲に基づく利他的片想いは、とてもとても惨めで残酷で救いが無い。なんて、哀れな結末だ


「赤司くん、僕……片想いでも、いいんです。青峰くんと桃井さんが両想いで幸せなら、それでいいんです。ふたりとも、僕の大切な友人で大事な仲間ですから……哀しくても嬉しいんですよ……矛盾してますけどね」


   馬鹿だ、相棒である男に想いを寄せる一方で、その男の幼なじみである女の相談にのり、自分は男だからという下らない理由で身を引きながらも、瀕死の心にトドメを刺せずに、自分が橋渡しをして結ばれたふたりを見届け、ひとり身投げをする、ひどく透明な少年は、馬鹿だ。


「ただ、僕が、ひとりよがりな恋情を抱いていただけで、報われなくてもこの想いに後悔はありません。だから、」


“泣かないで、ください”


   消え入りそうな声で、テツヤは儚い微笑みを僕に向ける。最愛の人の死を悼まない人間などいない。千切れた心臓を抱き締めると、あたたかな死体は、僕に身を任せて天寿を全うした。あのふたりが幸せそうに笑う反対側で、健気に死亡した黒子テツヤを悼むのは、僕だけでいい。


「じゃあ、テツヤも、泣いてくれないか」


   この心臓は、とうの昔に、死んでいる。テツヤの片想いを、知り得てから、ずっと。そう、僕の死を悼むのも、お前じゃなければ、


「僕の、為に、追悼を」


死んでも死に切れないんだ。










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