すぐに見つけられて
壁際に追い詰められて
手首を拘束されて
首筋を舐められて
切なげに微笑まれたら
ただただ硬直するしかない


   自分の中では、ただの気まぐれのお遊びだった。小説を読み終わった赤司くんが気怠そうに、『あぁ、退屈だなぁ……』なんて、口にするから『じゃあ、暇つぶしに……僕の一番得意なかくれんぼで勝負でもしましょうか?』そう、何気なく発案したゲームがこんなことになるなんて。


「……負けた方が勝った方のいう事を何でもきく……時間以内に、僕がテツヤを見つけられたら……僕の願いを叶えてくれる……そういう約束だったよね?」
「……は、い……そ、うですけど……、」
「……うん、だからね……、負けたテツヤは……勝った僕のお願いをきいてよ……」
「……あかしくん……あの、ぼく……こんな、つもり、じゃ……」
「え?じゃあ、どんなつもりだったの?まさか、この僕が負ける訳がないだろ?いくら、ミスディレクションが得意なテツヤの勝率が高いかくれんぼだからって……僕がこんなチャンスをみすみす逃すと思うかい?…僕が本気を出したら、勝利以外あり得ない。テツヤに関する勝負事で……真剣にならない訳ないんだよ……気まぐれのお遊びでも、暇つぶしでも、何気ないゲームでも、無い……」

   ギリッ、ギリギリギリ……、手首の締め付けが赤司君の遣る瀬無さに比例して強まっていく。

「……ぁ、……いたっ、……いた、いです。あかしくん、……てくびが……、」
「……いまから、もっと、いたいことするんだよ……?これくらい、我慢して……テツヤがあまりにも無防備過ぎて、腹が立つ……その隙につけ込みやすいけれど、それは僕だけじゃ無いから、腹立たしいんだ……」

   チュ……、ガリッ!!猛獣のように獲物にかぶりついて、マーキングをする彼はライオンにしか見えなかった。

「うっ、……やだ、くびを、噛まないで……跡が……」
「本当はもっと、僕の印を付けなきゃいけないんだ……テツヤは僕のモノだって、アイツらにしっかりと解らせなきゃ……まぁ、今から、思う存分テツヤの全てに僕を刻められるから、……少しは、この血潮が煮え繰り返るような憤りもおさまるかな……ねぇ、テツヤ?」
「……おねがい、あかしくん、やめてください。ぼくは、……」
「……どうして、テツヤは、僕を、拒否するの……?」

   ズキン!突如小さな泣き虫の少年に変貌、僕の良心を痛めつける彼に、動揺する。

「あ、かしくん、……どうして、そんなカオ……いやです、そんなカオ、しないで……」
「もう、野放しになんか、出来ないよ……みんなに愛されてるテツヤをただ好きでいるだけなんて限界だ……誰かのものになるなんて、イヤだ。耐えられない……」

   ポタ、ポタポタ……、ポタ、まばらに降ってくる雨の音が、僕の心に沁み渡って、辛い。

「……やだ、あかしくん、なかないで……、」

“僕まで、泣きたくなる、切なくて”

「お願い……身も心も僕のものになってよ、テツヤ……」

   彼の震える唇が、僕の無動の唇に、触れた瞬間、痛いほど解った。

「……この世で一番、お前を、愛しているのは、この僕なんだから」

   赤司征十郎という人間は、とても弱くてとても涙脆くてとても僕を愛しているのだと。






















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