曲がり角で、人にぶつかる瞬間、相手を確認し、ニヤリとほくそ笑んだ。


   僕の瞳は、未来を、読める。今から、一体何が起こるかが解ってしまう。人よりも、一歩先に進める力。その一歩が、勝敗を決める、大事な一手となる。

   凡人共によって繰り広げられる、競争率の激しい争奪戦は、一人当たりの勝率が低くなるけれど、それは一般的なケースだ。競争者の中に、僕がいた場合、ただそれだけで、他の人間の勝利は有り得ない。

   僕の勝率=完全無欠の100パーセント。

   この絶対的勝利者である僕に、勝負を挑む愚かな奴らの先には、絶望しか残されていない。希望は僕の手の中にしか、有りやしないというのに。

   まるで飼い犬の如く一方的にひっついても、無駄。
   素直になれず憎まれ口を叩いて後悔しても、無駄。
   相棒として親友として友情を育んでも、無駄。
   人畜無害を装って子供のように甘えても、無駄。

   実を結ばない無駄なモノ、僕は嫌いだ。これ以上無駄なモノが増えないよう、そろそろお前らに与えてやろうか。

   僕が好き好んでぶつかる相手は、ひとりしかいない。

「あっ、いた!黒子っち、」
「どこに行ってたのだよ黒子、」
「探したぜテツ、」
「いたぁ〜黒ちん、」
「……え、わっ! あぶな、」
「……テツヤ、」

   突然の僕の登場に、まあるく大きくなったキレイなビー玉。驚くのは、まだ、早いよ。

   ドンッ!……チュッ!!

「え」「な」「は」「あ」

   接触事故を目撃した黄色・緑色・青色・紫色の声。同時に廊下へ響いて、間抜けな協和音を奏でる。

   あっけにとられた顔が4つ並んで面白い。あぁ、滑稽だなぁ。いなくなった影の子をみんなで探していたけれど、最初に見つけたのは、僕。一瞬で、捉えたのは、ずっとずっと狙っていた、清らかな小さな唇。この好機を逃す程、僕は甘くないし優しくない。ほら、早々に諦めがつくだろう?

「あかし、くん、」
「……テツヤ、……キス、しちゃった、ゴメンね?」

   お前たちがどう頑張っても平静なままの黒子テツヤは、僕の口づけによって、花も恥らう乙女のようだ。

「……ぁ、いま、かお、みないで、ください……ぼく、おかしくなって、ます」

   彼の陶器のような頬へ、愛らしい紅をさせるのは、赤司征十郎、だけ。

「やだよ、可愛いテツヤを、この瞳に焼きつけたいから」

   誰もが愛しむ空色の少年の唇を、事故を装い奪い取った赤い少年の唇は、弧の軌跡を計画通り美しく描き出す。

「……あかしくん、は、ズルいです……僕の心を、先読み、するなんて、ズルい……」

未必の故意は、無罪?有罪?

「なんのことだい?僕はただ、テツヤが恋しいだけだよ」

恋い願われた犯罪は、非合法であろうと、彼 の正義か?


正義は、勝つ、絶対に









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