黒子の耳に念仏。喫茶店、ぬるくなったコーヒーと溶けかけのバニラアイス、向かい合ったふたり。今日のラッキーアイテム、人事を尽くす事の意義、最近読んだ本のあらすじ、和菓子談義、その他諸々、黒子へ向けて発信しているのに、全く届かない。奴の意識はどこか遠く遠くにある。今、この場にいない人間のことを想っている。おそらく、
「そういえば、赤司が、」
パッ、と長い眠りから覚醒した花のように、見開いた瞳
「赤司くん、が?」
あぁ、やはり、そうなのか
黒子を揺さぶるもの、それは赤いアイツしかいない
俺の答えを待つ黒子の射すような瞳、みつめているのは、この子を危険状態に陥らせた策士・赤司征十郎だ
■赤司くんにしか意識を向けないよう躾けられた黒子くんのお話