ひゅ〜〜どろどろどろどろ…
ジメジメヒヤヒヤした気味が悪い空間、不意を突いて襲い来る化け物たち
帝光バスケ部仲良しキセキ組で入った、とあるテーマパークの死ぬ程怖いと評判のお化け屋敷
冷える肝(きも)、凍る背筋、そして肌にはサブイボ
この灼熱の暑さを紛らわせる為、わざわざ金を払い恐怖体験をする、ご存知日本の夏の風物詩
提案者は、個性的な彼らの取り締まり役である最高権力者・赤司征十郎
メンバーの何人かはお化け屋敷へ踏み込む事に怖気づいていたが、結局入りたくないとは物申せず
拒否それは彼へ逆らった事と同意義、すなわち鋏による死罪に値してしまう
赤司征十郎の言う事は絶対、それが彼らの命を守る為のスローガンだ
こうしてみると、赤色魔王による恐怖政治を敷かれている日常の方がよっぽど恐ろしい
さあ、後戻りは出来ない、覚悟を決めて進むだけ
お化け屋敷の中、カラフルキセキ達のリアクションは多種多様
キャーキャー女子のように騒ぎまくる黄、ウオオオッオワアアアアッと見かけに反してビビりまくる青、ガタガタブルブル予想通り怯えまくる緑、バリバリムシャムシャただただ食べまくる紫
そんな彼らに挟まれて一番安全な所にいるのは、赤と黒だ
数々の仕掛けに対しても無反応、スタスタ平然と歩き続ける赤と後ろをついていく黒
一見、黒もいつもと変わらない無表情、だがしかし微かに震える手は赤の服の裾を無意識にコッソリつまんでいた
「…黒子、怖いのか?」
「…えっ……あっ…いえ、ちょっと、だけです」
「そうか、怖いんだな」
「え…」
ギュッ、安心させるように繋がれた手と手
嫌に冷えたこのおどろおどろしい異空間で、そこだけに灯る心地良い熱
「…赤司くん…ありがとうございます…」
「…うん…どういたしまして」
止まった手の震えの代わりに、震え出した心臓
それでも、怖くなんかない、きっとこれは、夢にまでみた喜び
暗がりで良かった、太陽に出会うまでには、この頬の色づきを消さなければならない
それでも、君への密やかな熱は、もう誤魔化せないね
この世で一番怖かったのは、好きな人からの拒絶
光に照らされた時、お互いの顔を見つめて、消し忘れた同じ色に、同時にプッと吹き出して笑い合った赤と黒は気付いてしまった
“もう怖いものなしだね”