どんなに落ちてもその手で引き上げてくれて、どんなに迷ってもその背中で導いてくれて、どんなに苦しんでもその胸で抱き留めてくれた。これまでの僕の人生の中で、一等特別な存在だった。今はもうそばにいない、赤司くん。勝利至上主義である彼の手で絶望を味あわされた僕は、心の蝕みを食い止める事しか考えられなかった。深手を負っていた所を助けられ拾われ育てられて愛でられて。その恩を返す前に、自分を守る為に、ヨロヨロと羽ばたいた。僕を捕まえる手は、どこにもなく、宙ぶらりん。どうして、簡単に、手放せるの?あんなに、誰にも、触れさせようとしなかったくせに。飛び出した先に見えた空は青くても、心の奥は寂しい灰色。自由にされる位なら束縛された方が良かったなんて、口が裂けても言えない。彼の赤い籠から逃げたのは、僕なんだ。僕からは戻れない、だけど、いつか自ら籠へ帰ってしまいそうで、怖い。


“もう、だいじょうぶだよ”


あの時巻かれた白い包帯は、恐ろしい彼の優しい呪縛なのだろうか


“ぼくはぜったいにテツヤをみのがさない”


ほどけない、ほどきたくない、ほどかない




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