※【お悔やみ申し上げます】と同じ設定












かえりたい、

懐かしい景色から暗転、パチリと世界が変わった。ボヤけた視界、だんだんと霧が晴れて気付いた居場所。ここは、あぁ、そうか、僕の部屋だった。夕暮れ、本を読みながら何時の間にか眠りこけて、気付けば真っ暗。何の変哲もない、ひとりぼっちのこの場所。かえりたい、なんて、一体僕はどうしたのだろう。急に焦がれるような寂しさに包まれて目が覚めた。東京から離れて京都で住む僕の帰る場所は静かで殺風景なここで。もしくは、過剰なプレッシャーを投げかける事が趣味な父親がいる、あの窮屈なだだっ広い家なのか。仕方なしに帰ってくる今の住処と諦めて帰らなければならない昔の住処。そこには僕の欲求が原動しておらず、ただそうしなければ生きていけなかっただけの話。本当は、ここにもあそこにもどこにも、帰りたくない。心休まる場所なんて、僕にはない。それでも、帰りたい、かえりたい、省りたい


「…あの頃に、……テツヤが、…そばにいた頃に、…かえりたい」


かえれない、僕の心の故郷はとうに自分の手で焼き払って消えてなくなってしまったんだ






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