何から何まで気に食わない

例えば、僕を苗字で呼ぶこと

あいつは他のキセキメンバーも苗字で呼ぶけれど、この僕さえも十把一絡げの扱い

何度、名前で呼べと命令したか解らない

その度に、ウンザリした顔で、面倒です、と拒否するものだから

僕は怒りに任せて、聞き分けのない役立たずな唇を殺そうと噛み付いた

感触が柔らかいと、味がどこか甘酸っぱいと、胸が高鳴ったのは一瞬で、後はもう憤りに任せてむしゃぶりついて、僕の力を知らしめようとした

全くの無抵抗、まるで人形を犯しているかのような不快感が徐々に募ってきて、仕方なく唇を離せば、あいつは一言、


「これで、満足ですか?」


完全に、この僕を見下している

僕のぶつけた焦燥の赤を、歯牙にもかけず、鼻で薄ら笑うのは、透明な無感情の表れ

この空気のように掴めない人間もどきは、僕の心を逆撫でする為に生まれてきたのかもしれない


「テツヤ、お前は絶対に僕がこの手で殺してみせる」


お前の“無”を死なせる、その瞬間まで、この身を焦がしてやろうじゃないか


「どうぞ、お好きに」


やれるもんならやってみろ、本心は綺麗な弧を描く甘美な唇だけが教えてくれるのだった







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