こんにちは、黒子テツヤです

皆さん、最近は如何お過ごしでしょうか?

変態に付き纏われたり、変態に抱きつかれそうになったり、変態に視姦されたり、変態に求愛されたりしていませんか?

え?それは、僕だけですって?いやですねぇ、そんな事無…い訳ないんですよ、最悪なんですよ、これが、近頃、著しく、間接的に変態の餌食になっているんです、最悪です

あの変態大魔王が、ある呪いを僕にかけているらしいのですから、たまったもんじゃありません

おかしな思いつきをし、意味不明な呪文を唱え、彼の思惑通りになるよう画策している

いつもノイローゼになりそうな程に、僕へ四六時中ベッタリ張り付いている彼が、最近何故かフラッといなくなるのを不思議に思っていた時、僕の相棒である青峰くんが、そう教えてくれたのです…



『テツー、いよいよお前の苗字変わるらしいなァ』

『は?アホ峰くん、何寝ぼけた事言ってるんですか?』

『赤司の奴がさ、ウキウキしながら黒魔術の本を広げて目を輝かせてたぞ』

『…はい?何ですか、それ…もしかして最近時々いなくなるのは……イヤな予感・100%なんですけど…』

『その予感は的中だな。なんせ、テツに夢中な赤司はお前が“赤司”になりたくなる、結婚したくなる黒魔術をかけてんだからな』

『え、』

『ある赤司信者から、聞いたんだけどよ…、』



以下、赤司信者@の目撃情報・証言より抜粋

今日も我らが赤司様はとても麗しく何者にも屈しない誇り高き絶対的勝利者のオーラが漲っておられます

一介の赤司様信者である私は、赤司様を陰ながらお見守りして、その言動を記録し、赤司教徒の中で情報を共有し、皆で私達の神様のお力になれる事はないか議論の指揮を執る役目を担っています

さて、今日も赤司様は愛しの黒子様へ熱烈濃厚アプローチを致しましたが、あえなく撃沈

相変わらず、黒子様は赤司様に手厳しいお方です

まさか、あのイグナイトパスで弁慶の泣き所を狙い、赤司様をボロ泣させるなんて、さすが赤司様の唯一の泣き所ですね!

そうそう、捨てゼリフも格好良かったのですよ!


『僕への数々の変態ストーカー行為…君は恥ずかしいと思わないのですか?全く、高名な“赤司”の姓が泣きますね』


そう言って鼻で笑い、泣き所を押さえながらのたうち回っていた赤司様に背を向けて颯爽と歩いていかれました

ひとり取り残された赤司様、さぞや落ち込んでるかと思いきや、ピタリと動きを止め、何かを閃いたようなキラキラしたお顔をなさっている


『…“赤司”の姓を憂う程…もしや、テツヤは“赤司”の姓を好んで…いや、むしろ、“赤司”の姓になる事を密かに望んでいる…?!?!』


あぁ、赤司様の暴走大跳躍思考回路が、黒子様の何気ないイヤミによって、発動されてしまったようです


『…赤司テツヤ赤司テツヤ赤司テツヤ赤司テツヤ赤司テツヤ赤司テツヤ赤司テツヤ赤司テツヤ……っ、いい!!なんて素敵な甘い響きっ!!これは早急に婚姻届けを要するな…フフフ……赤司テツヤ……アハハハハハッ…!!!ときめき過ぎて笑いが止まらないっ……!!!!』


あぁ、本当に、とっても嬉しそうで楽しそうです…完璧なる勘違いなどと、盲目なあの方が気付く可能性はゼロに違いありますせん


『…ハハハッ…フフフッ…さて、どうやって、意地っ張りで天邪鬼で照れ屋さんなテツヤに本心を引き出させて僕の元へ投降してもらおうかな……高名な“赤司”の姓に…いや、僕の嫁になりたくても、慎ましいテツヤは庶民の引け目を感じ…屈強な精神によって自身の願望を無理矢理抑え込み…その反動が僕へのひねくれ愛の暴力へと化しているんだ…ふふふ、いじらしい僕のテツヤ、可ん愛いっ!!!』


もう誰にも止められません、赤司様の暴走妄想タイム

そのお考えは全て赤司様の捻じ曲げた願望であり、現実とは真逆であるのに…

自分勝手に黒子様の思考を決めつけて的外れ過ぎたアプローチをしては、必ず報われない現状を自ら創造している

赤司様は並外れた天才で頭脳明晰であられるのに、黒子様については並外れたお馬鹿様になってしまいます…とても、残念です

しかし、馬鹿な子ほど可愛いと申しますか、私をはじめ信者の面々はそんな馬鹿可愛い赤司様の最初で最後の恋を叶えて差し上げたいと、一致団結しているのです!

そう、


『…ハッ、そうだ…赤司家に代々伝わるあれを……あの黒魔術を使う時が来たなっ…!!楽しみにしてて、テツヤ…もうすぐお前は自分の気持ちに素直になれる……“赤司テツヤ”に変わる決断をする日は近いぞっ!!!』


悪びれもなく無邪気に禁じ手を駆使してまで、恋愛成就しようとする我らが純愛大魔王様を、生温かい目で見守りながら影で全力で応援させて頂きます!!!



『………………』

『おい、大丈夫か、テツ』

『あのバカの思考回路が馬鹿馬鹿し過ぎて、言葉を失いましたよ……僕はそういう意味合いで口にした訳では無いのに……僕、“赤司”なんかになりたくないです。そして、何故男の僕が赤司くんの嫁にならなければ…悪夢です』

『だけどよ、その赤司がかけた黒魔術とやらはテツに全く効いてねぇだろ?』

『…そういえば、そうですね…あの執念深い大魔王の黒魔術ですから…僕の意思に反しても効果覿面な気がしますが…』

『実はよ、その“結婚したくなる”黒魔術には、条件があってさ…』

『…条件…?それは、一体何ですか?』

『…本人同士が両想いである事』

『…両想いどころか、僕は赤司くんに幻滅して嫌いなんですけど…』

『そうなんだよ…だから、効かねぇんだ…アイツ、全然解ってない上に勘違い野郎だからさ…テツが自分を好きだと思い込んでいる上に結婚を望んでいると勘違いしてよ…まず先に“自分を好きになる”黒魔術を使う段取りが全く頭にねぇんだよな…それを認識して段階を踏みながら黒魔術をかければ、全て上手くいくのによ』

『青峰くん、赤司くんに極悪なアドバイスなんてしたら、君の命がどうなるか解っていますよね、僕を貶めたら…』

『わーってるよ、俺はそこんとこはアホじゃねぇからな』

『そうですね…ありがとうございます』

『…でもよ、テツ……』

『…え?』

『…きっと、面倒な事になんぞ』




そうですか?と呆けた返しをしたあの時の僕は、考えが浅かったのですね

青峰くんの予言通り、とっても面倒な事になりました

それは、僕に大迷惑な黒魔術をかけた魔王様ではなく…いや彼に関する人々ではありますが

相手が、返り討ちしづらい一般人、そして赤司くん信者の方々なのです

彼自身には何をされても様々な常套手段を用いてボコボコに撃退すれば良いだけの話で済みますが…、


ババババッ…!!

「え…ちょっと、どうして…土下座を…、」

「お願いします!赤司様は…本気で一途に純粋に…あなたを好きなんです……どうか、赤司様を好きになって下さいっ…黒子様ァァアア…!!!」


大人数で涙を流しながら地面に頭を付けられると、さすがの僕も無碍には扱えなくてとても心苦しくなります

話を訊けば、即効性のあるあの黒魔術が全く効果を示さない事に、ひどく焦り出し混乱し始めた赤司くんは食べる間も寝る間も惜しんで、半狂乱気味に呪文を唱えているそうで

知ったこっちゃねぇよ、と内心毒づきましたが、彼らが本気で赤司くんを心配しているのが感じられたので、言葉にはしませんでした

崇拝する人間がどうしようもなく馬鹿だと、崇拝者達はその馬鹿さ加減に付き合わされて、土下座までするに至り…

あのカリスマ詐欺な魔王様に心臓を捧げてしまったが故に、こんな行動へ走ってしまうなんて、なんだか可哀想になります

赤司くんなんて、ただの重症厨二病を患った変態暴走人間なのに


「すみません…あなた方に土下座されても、仮に赤司くんに一億積まれても、無理なものは無理なんです。僕はあんな変態野郎の嫁になどなるつもりは毛頭ありませんから…」


彼らの想いを踏みにじるのは申し訳ないですが、僕は魔王の花嫁という生贄になんてなりたくはありませんので、丁重にお断りさせて頂きます


「そんなっ…うっ、うっ、…でも、あんなに常軌を逸した勘違い脳で黒子様をドン引きさせる赤司様ですけど……黒子様を愛する気持ちは真剣そのものなんですっ…!どうか、あの方に慈悲をっ…!!」


…そりゃ、赤司くんの気持ちが生半可では無い事は、痛い程、イタい程、理解しては、いますが…

『テツヤ、』

…いけません、どうして柔らかく微笑みながら僕の名前を呼ぶ赤司くんなんて、思い出すのでしょう

ここで、絆されては、いけません…自制心、自制心…


「…あの…むしろ、あなた方が赤司くんへ“普通“の人間に戻るようお願いしたらどうですか?」


これは、自分なりの良策だ

僕が彼を好きになるのは現状では不可能だろう

だったら、彼が“普通”の人間に変われば、まだ話は早い

普通の綺麗な赤司くんだったら、僕はどちらかというと好ましい部類に入る…いや、むしろ、“赤司”になっても、なんて、血迷い過ぎですが


「……で、でも…赤司様はきっと、今の自分が……黒子様を好き過ぎてブッ壊れている自分が…“普通”だと、考えておられると…」

「えっ……、僕を、好きな…赤司くんが……“普通”……?」


不覚にも、ドキリとした

信者さん達の深読みした解釈だと一蹴出来れば良かったのに

もし、そうだったら、と考えると、胸の奥にジワジワ広がってゆくナニカを感じてしまう


「…黒子様、貴方が今、どんな顔をしているか、解りますか?」

「…えっ……、」

「…今の、“普通”の、貴方に恋する赤司様に、恋のトキメキをおぼえた、愛らしいお顔ですよ…」

「…!…そ、そんな…僕は…、」



赤司くんが、僕と出逢って、僕に恋して、“普通”の、僕が求めた“マトモ”な“本当”の赤司征十郎になれた、という、不確かながらも確実性のある推測に、ときめいてしまったというのですか?





ダダダダダ…、ババッ!!!


「テツヤっ…!!まさか、闇の力を操る僕の黒魔術をものともしないとは…お前の鉄壁さには脱帽したよっ!だけど、僕はもう限界だ…その閉ざした恋心をオープン・ザ・ドアしてくれっ!僕の元へ素直に投降してくれない事は良く解った…だから、この者達のように、この僕が、魔界を統べる覇王として誉れ高いこの僕が、必死にプライドを捨てて全身全霊で土下座をしたら、恥じらいながらも即座に“赤司テツヤ”へなってくれるよね?!?!」

ザッ!ビタッ!!ドーン!!!

「ほらっ、土下座したぞっ!さぁっ、いよいよ婚姻届けにサインだっ、赤司テツヤっ!!!」

「戯れ言は永眠してからほざいて下さい」

「…赤司様……見事な自滅土下座です……」


急に現れた諸悪の根元は、鮮烈な土下座を用いて僕に直接求婚してきた

めまぐるしい暴挙に情けなく緩んでしまっていた顔面筋が岩のように硬直する

こんな状態が、“普通”なんて、こんな彼が”マトモ”だなんて、世界がひっくり返らない限り、認められたものじゃない

百聞は一見に如かず、信者さん達の言葉に惑わされかけましたが、生身の赤司くんを一目見て冷静に確信しました


「ひどいっ!テツヤのいけずぅっ!赤司家の花嫁になる準備は万端なのにっ!僕達の初夜が待ち遠しいくせにぃっ!早く愛の巣でヒナを育もうよぅっ…!!」


僕に裏切られたと盛大に勘違いし、泣き喚きながらキチガイな愛を叫ぶ、赤司征十郎

やはり、彼は、一度死んで生まれ変わった方がいいのかもしれない






一向に平和が訪れないこの戦い、お願いです、終息を迎える為の打開策、それを誰か見つけてくれませんか?





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