恋を飛び越えて、愛が芽生えてしまった赤司征十郎
急転直下、受け止めきれない、新しい自分の世界に戸惑いながら、涙腺は脆くなっていく
「…ぁ…っ…、…う…、っ…、」
ギュウギュウ喉を締め上げる、恐ろしくて苦しくて切ない感情に、つい微かな嗚咽が漏れてしまった
すると、スヤスヤと眠りについていた小さな天使は、条件反射のように、パチリと大きなビー玉のような瞳を開き、バッと起き上がり、
スーーーッ……実体が消えていく
せっかく見つけ出した彼が、透明になっていく姿に、壊れた人形の如く固まっていた赤司はやっと身体と意識が繋がり、その消失を防ごうと、
「イヤだっ!消えないでくれっ…!!……黒子テツヤっ!!」
消えかけた手をグッと掴み、力任せに芝生の上へドサリと押し倒した
すぐに、しまった、と後悔するのに
我を忘れてしまう程の焦り、赤司はこれまで培った冷静さを無駄にして、荒々しい方策を選んでしまった
“こわい、たすけて”という言葉が読み取れる、自分を見上げた“黒子テツヤ”の瞳の奥
加えて、芝生に縫い付けた細い手首がカタカタ震えているのだから、その推測は正解で違いない
別に自分は彼を乱暴にしたかった訳でも怖がらせたかった訳でもなかったのに
“赤司征十郎”を“黒子テツヤ”に、恐怖の対象として捉えられた事が、とてもとても哀しい
千切れんばかりに痛む、彼を想う心臓
ダメだ、嫌われた、終わった
せめて、解放してあげなければ
赤司は自身に渦巻くかなしみをどうにか抑制して、青ざめながら怯える黒子から手を離し、覆いかぶさっていた身体を退けた
すると、黒子は脱兎の如く、一目散に逃げて行く
赤司はそれを耳で確認して、瞳は虚空を見つめて、失意のドン底へ落ちてしまった
どうして、せっかく見つけたのに、すぐに失ってしまうのだろう
どうして、愛おしいのにすぐに嫌われてしまうのだろう
くるしい、せつない、いたい、いたい、ココロが、いたい
ポタポタポタポタ…、瞳から零れ落ちる、二度目の涙
解っている、解り過ぎている
なくしてしまったら
「……っく、…うっ……ぁ……また、…ぼくは……ひとり…なんだ……」
かえってはこない、もう二度と