幼き頃の赤司が夢中になって読んだ絵本
お宝が大好きな冒険家の男が、世界一美しいダイヤモンドを探す旅に出るお話
ずっとひとりぼっちで誰も信じず愛さず、お宝だけに囲まれて生きてきたその寂しい男は、その旅の途中で沢山の苦難に見舞われる
その荒波の中で、ボロボロになった男に手を差し伸べてくれた優しい女がいた
その出逢いにより、初めて人の優しさに触れた男は、心の美しい彼女に恋をする
そして、彼女の優しさを胸に、苦境を乗り越え、やっとの思いで探し出したその大切な宝石
しかし、男はそれを自分のものにはせずに、優しい彼女へプレゼント、感謝と愛を伝えた
ふたりは想いが通じ合い、ダイヤモンドを介して、永遠の愛を誓い、幸せに暮らしたという
あの絵本だけは英才教育を強制させた厳しい両親に唯一許され、教育係りの執事であった・東雲から与えられた唯一の年相応の書物
それを読む時だけは、難解な文字だらけの心に、純粋な子どもらしい感情が生まれた
それが、15歳となり子どもらしさの欠片も無く、異様に無機質に大人びいてしまった自分へ生まれている
信じ難いけれど、不思議と不快じゃない感覚が
この“さがしもの”は、他人の隠された宝物であって、自分が喉から手が出る程求めているものではないのに、こんなにも気持ちが高鳴るのは、何故なのか
理由は、分からない、分からないけれど、
もう、探していた宝石は目の前、ゴクリと喉が鳴る
もう今は亡きあの優しい瞳をした執事に似た、この木の下で眠る、その人物は、
「……、……ぁ…………、」
“黒子テツヤ”
ドッ………!!!
心臓に、強く優しい、雷撃