そう、ふたりの出逢いは、ただの“運命”なんだ、と
その赤い少年は、とても美しかった
人目を惹きつける真っ赤な髪と赤と金の二色の瞳、人形のように綺麗に整った顔立ち
完璧な容姿だけでも十二分であったのに、神様が彼へ与えたものはそれだけに止まらなかった
知力・体力は勿論の事、あらゆる物事をまるで魔法のようにサラリとこなしてしまうキセキのような才能
加えて、王者の風格を生まれながらにして持ち合わせた彼に、魅了されない人間などいなかった
誰もが、彼の虜になってしまう
たとえ、己の無能さが起因する妬みを向ける人間がいたとて、それは羨望の感情が歪曲したもの
無自覚だとしても、彼の存在そのものに自己の意識を奪われてしまった事と同列だ
一挙一動、ただ歩くだけで、ただ話すだけで、ただそこにいるだけで、皆の瞳が集まってしまう存在感
それこそ、赤司征十郎の、天賦の才であった
「あっ、…赤司様だ…今日もとても美しい…」
「あぁ…なんて、素晴らしいお方なんだろう…」
「赤司様っ!お慕い申しております!!」
毎日毎日毎日、見つめられ口にされ崇められ、ウンザリを通り越して、ひどくつまらない
顔や口には出さずとも、何の不自由も不足もない赤司の心は、冷淡な空虚感が渦巻いていた
慣れた、と言ったら慣れたのだろう、視線の鎖に縛られた自分の人生
親や先生をはじめとした周囲の大人からの期待だけではなく、自分の同級生・先輩・後輩など自分とさして変わらぬ子供からも一身に期待を背負わされる
期待に応えるのは、そこまで難しい事では無い
むしろ、簡単過ぎて反吐が出る始末
ただただ、煩わしかった、身勝手極まりない期待に満ちた瞳が、嫌いだった
邪魔な感情抜きでそばにいてくれる人間は、もういない、から
ココロは、からっぽ
酸素すら、行き届いていない
何かが、足りない、何かが、無い
赤司征十郎は、その何かを、今日も、心のどこかで、探していた
[←] [→]
[◇]