一歩も動けなかった、心の中では崩れ落ちて泣き喚く赤司くんを優しく抱き締めてあげたかったのに、僕は彼の言葉に雁字搦めにされて何も出来なかった


“あの日からテツヤの為に僕は勝ち続けて、……テツヤを取り戻し…、”


涙声でも、僕にはそうハッキリと、耳に聴こえた言葉達

射殺すような瞳で、裏切り者と罵られたあの日を、再び思い出す

あの瞳から垂れ流された、憎い、憎い、裏切り者が憎い、とめどない憎悪

どうして、そんなにも憎いのか、自分に置き換えて、考えれば、

あの時、彼は、もしかしたら、退部届けを出した時の僕と同じ心情だったのだろうか、言葉とは裏腹に

あの瞳の奥に秘められた心を読み解かないまま、恋のかなしみの反作用、衝動的に僕は彼から離反してしまった

彼のこぼした言葉の真意を問いたくても、口さえ動かない僕には、どうする事も出来ない

試合後、洛山のチームメイト達に支えられて連れられていった彼の背中は、とても弱々しく小さかった

全く動けない僕の、空色の瞳だけは、最後の最後まで彼を追っていた、未練がましく

全くもって、今更、だと云うのに

試合を見に来てたのであろう紫原くんが、赤司くんを優しく抱き締めたのを見て、情けない嫉妬をする位なら、この瞼さえも閉じていれば、良かった

赤司くんのそばから離れる決断をしたのは、他ならぬ黒子テツヤ自身なのに

したくなかった、こんな後悔なんて

どんなに傷付いてでも、素直に生きていれば良かった

弱くて浅はかな僕は、どうしても、弱くて意固地な君を、忘れられないんだ








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