ふたりきり、クリスマス・イヴの、はじまり
「……………」
「……………」
あれから、赤司くんの拘束を解いて、食べかけていた夕食を勧めて、沈黙の中完食して、今現在リビングの大きなソファの上、ふたり座っている
ふたりの間に重い空気が流れても、ふたり言葉無くても、ふたり分の距離が離れていても、
そばにいる、なんだかそれだけで、さみしさは消えた、
と、一瞬、感じたのに
東京と京都の距離に比べたら、今のこの距離は、微々たるもの、解っているけれど、
届きそうなのに、届かない
伝えたいのに、伝えられない
素直になりたいのに、素直になれない
近距離の息苦しいもどかしさで、涙が出そう
不安と緊張と恐怖で、心から凍えてきた身体が、カタカタ震え出す
せっかく、紫原くんが、サンタさんが、千載一遇のチャンスをくれたのに
僕は、やっぱり、弱い人間だ
拒絶されるのが、離れられるのが、嫌われるのが、怖くて怖くて、寒気が走る
次こそ失敗したら、完璧な僕の初恋の終わり、完全に心は死亡してしまうだろう
ただでさえ、裏切り者のレッテルを貼られた不必要な僕
そんな人間が身勝手に、また君のそばにいて良いのか、全く解らない
解らない、わからない、からこそ、
「…赤司くん、」
「……、テツヤ…、えっ、!?」
ギュウッ、決死のダイブ、抱きついて、押し倒して、
「……あ、かし、くん……ご、めんなさ…い……あのとき、…うらぎって、…すみません……でも、たえられなかったんです…あのころのしょうりに……ぼくのそんざいいぎはなきものになって、つらかった…ぼくがにげたら、もしかしたら、きみがきづいて、てをのばして、つなぎとめてくれるかも、なんて、あまえて、はなれるふりをしてしまった…だけど、きみはぼくをあっさりうらぎりものよばわりしてきえろといって…ぼくは、こころがしにました……こいやあいのきもちが、にくしみにかわって…きみを、ばすけで、たおすことばかりかんがえて、ひっしにれんしゅうしてたたかって、……きみに、かてて、うれしい、はずなのに、…きみが、ないたら、ぼくだって、なきたくなる…かなしみしか、うまれなかった……そばにいても、はなれても、ぼくのせかいのちゅうしんは、…あかしくん、きみしかいない、と、わかったんです……もう、ひねくれたりしません……すなおにつたえます……きみがすき、なんです……どうしても、きみが…こころから…きえない…けせない……はなれたく、なかった…そばに、いたかった……もう、はなれたくない、そばにいたい……かこも、げんざいも、みらいも、あかしくんが、すきです、だいすきなんです、あいしてます」
いっそ、死ぬ気で、ぶつかってみようか
涙ながらに、君への想いを届けて伝えて素直になって
すべてを告白した僕へ、その答えとしてもたらされたのはひとつだけ
フワリ、すべてを受け入れる、チュウ、赤い唇の抱擁
チラチラ、フワフワ、天使の羽根
雪が降り始めたと知ったのは、赤い少年のキスの雨が降り止んでから
真っ白な雪は、素直で美しい
いつかは溶けると解っていても、しんしんと心に降り積もる姿は、
「……テツヤ、あいしてるよ」
「……赤司くん、あいしてます」
清らかな無償の愛そのもの、だ
そういう愛の形を作っていこう、一生涯かけて、ゆっくりと
ふたり手を繋いで、素直に愛して生きましょう
いとしけりゃこそ、ね