さよなら、してしまった、とくべつなあの子と

こころが、こわれそう、おかしくなる

僕が間違っていたというの?いや、僕はテツヤの為に、バスケが大好きなテツヤの為に、勝ち続けて、だから、正しいんだ、なのに、テツヤは、僕から離れてしまった、どうして?どうして?僕が悪いの?テツヤが悪いの?どっちなの?僕の勝利が嫌い?僕が嫌い?僕のテツヤへの愛は誤っていたの?もう、わからない、たすけて、たすけて、


“わからせればいい、おまえの愛が正しいと”


誰かの声が聴こえた、黒い声が聴こえて、僕の苦悩をピタリと止めた

敵になってしまったわからず屋のテツヤに、思い知らせればいいのか、テツヤが愛するバスケで

赤司征十郎の勝利が正しいと

赤司征十郎のそばにいるべきだったと

赤司征十郎の愛を裏切らなければ良かったと

心に誓った、テツヤをこの手で潰して解らせて取り戻す、と

それから僕は、裏切りの原因なんて考えず、過去の自分なんて省みず、

一心不乱に貪欲に必死に、非の打ち所の無い完璧な勝利を求め続けて、

さあ、最後の決戦、白黒を、いや、正しいのは赤か黒か、決着をつけようか

“君に、必ず、勝ちます”という瞳で、僕を見つめるテツヤ

久しぶりの澄み切った空色の瞳、それを見て自然と頬が緩んで胸が高鳴った時

そこで、あれ、そういえば、と、僕は気が付いた

あの時の、裏切りを告知した時の、テツヤの瞳は濁っていた、気がすると

一度思いを馳せれば、思い巡らされる、過去の記憶

試合が終わる直前までには、誰がこの瞳を濁らせたか、なんて、もう知らないフリはできなかった

一点差リード、最後の攻防、ここでテツヤのパスを防げば、僕の勝利が確定する場面

繋がった瞳と瞳、美しい意志の籠った空色の瞳と汚い意地に塗れた赤と金の瞳

グラリ、揺らいだのは、僕の心

あぁ、僕と離れて、お前はお前らしさを、取り戻したんだ

その瞳はバスケに喜びを見出した頃のテツヤの瞳

仲間になれた喜び、その純粋な輝きを、新たなチームメイト達によって与えられたんだ


『火神くんっ!!』
『黒子っ…!!』


勝利への道へ一人歩きして、テツヤを置いてけぼりにした裏切り者は、誰?

それは、もう、解り過ぎている

心を寂寥と悲哀に埋め尽くされたこの子を裏切らせたのは、紛れもなく僕自身だ

すべては、赤司征十郎の黒子テツヤへの盲目的ないとおしさが、悪因

今更、自身の過失を理解しても、もう終わり、らしい

死刑を告げる音が、鼓膜に響き渡る


ザンッ、
ブーーッ……、


崩壊する、僕の盲愛を貫徹した、勝利というアイデンティティ

おわり、僕の果てしない恋のおわりだ

テツヤの完全なる別離を繋ぎ止める手段は、テツヤの大好きなバスケで勝ち続けて、僕の背中を必死に追わせる事なのに


『……ぼくは、…ぼくは……、負けた…の、か?…よりによって、…テツヤ、に……ふ、ふ…っ、…あは、は……もう、ダメだ……おわり、だ……すべてが、むいみ……バスケ、なんて、……もう、…しない……あの日から、テツヤの為に…ぼくは、…かちつづけて……テツヤ…を、…とりもどし、…っ、う…ああああああぁぁっ…!!!』


弱い敗者の僕なんて、テツヤは見向きもせずキレイサッパリ忘れてしまうのだろう

あぁ、なんて、むなしい勝負だったのだろうか

こんな涙を流す位なら、ひねくれた意地をはらなければ良かった

あの時、僕が素直な人間だったのならば、心の中に秘められた想いを、包み隠さず伝えていたのに

後悔しても遅い現実は、心臓が絞め殺される程に、痛感している

だけど、もし、お前と向き合うチャンスが巡って来たら、

やっと認めたこの大切な想いを、返り討ち覚悟でぶつけたい


“テツヤ、テツヤ、テツヤ、すき、だいすき。たくさん傷つけてごめん。手をのばしてあげられなくてごめん。もう、後悔なんてしたくないから、素直に伝えるよ。ずっとぼくのそばにいてくれないか。おまえがぼくの人生に必要不可欠なんだ。一生、はなれたくない、はなしたくない、あいしてる、愛してるんだ”


赤い唇に詰め込んだ、僕の真実の愛を、一思いに





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