「そーいや、赤司は黒子と幼なじみなんだよな?」


部活が終わり、一年生が後片付けをする中、部室の中で偶然鉢合わせてしまった虹村先輩に何の気なしにされた質問に、


「…そうですよ。僕らは、僕とテツヤは…赤ん坊の頃から、ずっとずっと一緒ですから」


僕はテツヤのそばにいた十年以上の重みを滲ませて答えた。僕が自信をもって誇れる事、それは誰よりもテツヤと共有してきた大切な時間


「ふーん……ま、長けりゃいいってもんでもねーしな」


なのに、それを軽々と蹴散らされそうで怖い、すごく怖いんだ







「灰崎からバニラシェイク代も徴収したし…そろそろ、帰るか黒子」

「は、はいっ…!」


口約束もなしに当たり前のように一緒に歩っていた帰り道。当たり前のようにそばにいたテツヤがいない。こんなに寂しくて悔しい思いをしたのは、生まれて初めてだった。遠ざかっていくふたりの明るい笑い声が僕の胸に虚しくこだまする。テツヤが追っていたのは僕の背中だけだったはずなのに。一回り大きな虹村先輩の背中を、追いかけるテツヤの小さな背中を見つめる惨めな僕は“幼なじみ”という脇役に過ぎないとでも言いたげな世界。本当に、僕はもう一生、テツヤの“ヒーロー”にはなれないのだろうか?




『征くんは…ぼくのこと、好きですか…?』

『……、…さぁな』

『…そう、ですか……でも、ぼくはすごくてかっこいい征くん、大好きです…』

『……そうか…』

『はいっ!好きです!征くん!!』


本当は、好きだよ、大好きだよ、素直になれなくて、ごめん。テツヤのこと、ほんとにほんとに好きなんだ。そうでなかったら、こんな想いなんてしない。心臓がぐちゃぐちゃになって痛くて苦しいよ、テツヤ。助けて、助けて、助けて。叫んでも、きっとお前には届かない。神様が届けてくれない。臆病で弱虫な僕はテツヤに相応しくない、相応しいのはきっと虹村先輩だ、わかってはいる、わかってはいるけれど、そんなの、


「……奪われたくない……テツヤを一番愛しているのは、僕なんだ…」


絶対に嫌だ、諦めたくない、最早手遅れだったとしても、この想いは殺せない。テツヤが虹村先輩に憧れようが、虹村先輩がテツヤを気にかけようが、ふたりの心が近付こうが結ばれようが、関係ない。僕の運命は僕が決める。今度こそ僕はテツヤの“ヒーロー”になってやる。昔からの僕の“ヒロイン”はテツヤただひとり。どんな困難が待ち受けていても、絶対に僕が勝ち取ってみせる、



「……悪足掻きでも意地汚くてもいい……テツヤの隣で、最後に笑うのは僕だ」



世界にたったひとつ、テツヤの愛を







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