一足遅く、大雨警報発令です




ラブレターにのせた想いに曖昧な感情はひとつもなかった


「ふ…フフフ…それはテツヤに宛てられたテツヤだけが読むべきテツヤの為の手紙だろう…??ふざけるのも大概にしないと…お前の命はないぞ…???」

静かにブチキレている赤司君を尻目に、先程よりも増えたギャラリーは好き勝手に口を動かし始める。

『えっ…赤司様って黒子君のことが好きだったんだー!』『えっ、でもさぁ、前から少し噂になってたじゃん…このふたり怪しいって』『つーか、あの影薄い人、初めて見えたんだけど…誰?』『…赤司って恋愛関係は謎だったけど、女好きでも男好きでもなく、黒子好きだったんだな…』

プルプルプル、怒りか悲しみか恥ずかしさか、帝光中学の王様の体は細かに震え出した。

「ほら…アホ峰のせいで、みんなに知られちゃったじゃないか…僕の大切な恋心を…」
「あ、赤司くん…」
「わ、ワリィワリィ!…まー、でもよ、テツも満更でもないし、この際…帝光中学公認カップルってことでいーじゃねーか!!」
「えっ…!」

突然バカなことを言い出した相棒に度肝を抜かれる。自分の罪を棚にあげようと、この僕を生贄にするなんて。勝手なことは言わないで欲しい。まだ僕は自分の心に整理がついていない。いや、それよりも、急所を曝け出されたことに、空いた口が塞がらず、瞬時に反応出来ないでいると…パアアア!!驚きつつも花を咲かせながら光り輝く笑顔。喜色を浮かべる赤司君にギョッとしてついカッとなって、

「ちょっ、ドアホ峰くんっ!くだらないウソをつかないで下さいっ…!!僕は別にっ、ゴロ司くんのことなんかっ…屁とも思っていませんからっ…!!!」

血迷って言葉を選び間違えてしまった。親友に自分の心を見透かされて、ひどく狼狽えてしまったんだ。

本人の口から吐き出した音、恋に惑う人間には、嘘も真実に聴こえる


「テツ…お前、それは…」
「え、…あっ…」
「……そう、なのか」
「!!……あ、かしくん…」
「…わかっていたさ…テツヤが僕を何とも思っていないことくらい…ただの駄々っ子ゴロ司だと面倒くさがられていることくらい…僕のことこれっぽっちも好きじゃないこと、くらい……!」

ポロッ、赤い瞳から一粒こぼれて、ゴロゴロと空が鳴り出した。

「…あかしく、」
「…バイバイ、テツヤ」
「赤司くんっ…!!」

風のように走り去って灰色の世界へ消えて行く。ダメだ、立ち尽くしてる場合じゃない。ビリリッ、心に電気が流れてすぐに我に返った僕は、

「テツ、追いかけろ、素直になれ!」

青峰君にバンッと背中を叩かれ、身体へ電気が流れるままに、赤い彼の背中を目指して駆け出した。


ポタッ、パタパタ…サー…ザーーザァーーー…

「…大雨、ですか…、大泣きしてるんですね」


どこかでちぢこまってひとりないている彼の姿に胸が痛む。はやく、はやく、キミをみつけなきゃ。




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