ウルウル、グスン、停電と甘えん坊




鈍色の雷雲が立ち込める空。今日の予報は、大荒れ。

「テツヤッ!!あの荻原とかいう輩は一体お前の何なんだっ?!?!」

ふたりきりの放課後の部室。問いただされたのは、バスケの大会で久しぶりに再会した友人との関係。慌ただしいスケジュールの中、偶然会った彼との一分にも満たないやり取りをよりにもよってこの人に目撃されていたのか。それにしても、いちいち人の交友関係に口を出さないで欲しいものだ。僕はキミの所有物ではありません。

「…は?彼は僕の大事な人ですが…」
「だ、大事な、だと…そんなっ…この僕より大事なのか!?」

荻原君は僕にバスケを教えてくれた特別な友人。誰かと比べるまでもなく、僕の中では別格の人である。そして、バスケを諦めようとしていた僕を救ってくれたのは目の前にいる赤司征十郎、その人で。口には決して出さないにしても、キミだって僕にとっては特別な存在なんだ。それぞれ大切で、比べることに意味などない。どうして、わかってくれないの。その気持ちを事細かくこの分からずやな詰問者に説明しても無駄でしょうね。鼻息荒い血眼で肩を掴まれて前後に激しく揺らされて、嫉妬しいにも程がある。キミは僕の恋人気取りなんですか?あぁ馬鹿らしい、

「…はぁ…面倒ですねぇ。僕と彼の大切な絆、部外者のキミには全く関係ないでしょう?」

情け容赦なし、一発言葉の右ストレートをお見舞いしてやれば、ガーン!という効果音を響かせながらヨロヨロよろめく顔面蒼白ショックの赤司君は、

「い、いやだああっ…!!そんなポッと出にテツヤを奪われたくないいっ…!!テツヤは僕のモノなんだああああっ…!!!」

ジタバタと暴れながら駄々っ子を存分に発揮して僕をドン引かせる。

「…あの…勘違いしているようですが、彼との出会いはキミよりずっと先です。小学生時代からの友人ですからね。むしろポッと出は赤司君の方ですよ」
「え……な、何故だ…どうして、どうして……、」

ゴロゴロゴロゴロ…、マズイ、これは、落ちる

「どうして…神様は…僕とテツヤを赤ん坊の頃からの幼馴染み設定にしてくれなかったんだっ…!!ちっくしょうううううっ…!!!!!」

バリバリバリピッシャー!!!!!

「…わっ!?凄まじいカミナリ…近くに落ちましたね…ゴロ司様、ウザ……ゲフン、…落ち着いて下さい、赤司く…」

プツリ、

「え?」「あっ」「…停電しましたね…」「………」

ガクガクブルブル、真っ暗な部屋、そばから聴こえるあからさまな恐怖感。

「赤司君?なに、震えて…」

ギュウウウ!!!

「ちょっ!赤司君!どうし…」
「こわい…まっくら、こわいよ…テツヤァ…」

ウルウル、暗がりの中でもわかる、潤んだ赤い瞳。えっ、何が起きたんですか、ゴロ司君、えええ?ウル司くん??

子どものように抱きついて助けを求められたら、

「…あ、あかしくん…なかないで…」

拒否する訳にもいかず、絆されて優しく抱き締め返してしまった。

「…うっ、うっ、…テツヤ…テツヤァ……」
「(グスグス泣く、この赤司君は、可愛いかも…)グス司君…落ち着いて下さい…僕がそばにいますから、大丈夫ですよ」

赤子をあやすように背中をなでれば、

「…ぐすっ、…テツヤ…ありがとう…だいすき……やさしいお前を、あいしてるよ」

どきん!慣れてるはずなのに、何も見えず声と温もりを頼りにしているこの状況。妙に新鮮な愛の告白と密着した肌から伝わる温度に僕の心臓はビリビリ痺れる。

「(…不意打ちは、ズルいです…心臓の音、バレませんように…)そう、いえば…雷おさまりましたね…」
「…うん」
「早く、電気がつけばいいですね…」
「……う、ん…でも、…」

自分の動揺を誤魔化かのよう、ぎこちなく言葉を繋いでいれば、

パッ!!

「あっ!電気つきましたよ!…良かったですね、赤司君」
「…う…ん、」
「赤司くん…?」

どうしたのだろう、暗所恐怖症の彼にしたら嬉しいはずなのに、

「…テツヤ、怒らないでね?」
「えっ…?」
「…ほんとは、もう少し、あのままが良かったな…なんて、ゴメン」

ドッキン!また、心臓が変だ、どうしよう、こんなの僕じゃない。




[*prev] [next#]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -