青春トライアングル | ナノ
初め

始まりは、ほんの些細な出来事だった。いわゆる一目惚れってやつなんだろうか?

文化祭の準備期間初日。大量の本を抱えて前がほとんど見えなくて、壁にぶつかってしまって…。

「ハハハ、気を付けろよ一年〜」

「うう…」
クスクスと上級生に笑われている中、慌てて本を拾い上げて悔しさをグッとこらえた。

「君! 大丈夫かい!?」

「すっ すみません。今片付けるんで…」

『手伝うよ』
そう言って散らばった本を一つずつ丁寧に拾ってくれたあの人。よく見てみたらネクタイの色が違う、二年生なんだ。

「あの ありがとうございます。後は大丈夫ですので…」

『こんなにたくさん本を持っては危ないよ。それに足首、怪我してるじゃないか』
右足首が少し血で滲んでいた。ズキズキするけど、歩けないほど痛いってわけではない。


「あ、じゃあ…一年二組までお願いします」

『わかった。すぐ持って行くから君はここで待っていて』
軽々と本を持ち上げた先輩はあっという間に見えなくなった。

(待っていろと言われたものの、流石に痛くなってきた…)
白ソックスをめくると、赤々と腫れた物から血が少し流れていた。放置すれば悪化するかも…。

『お待たせ。じゃあ行こうか』

「お帰りなさ…え?」
戻ってきたかと思えば先輩は身を屈めて背中をこちらに向けたのだ。

「なんです…か?」

『保健室。さあ、乗って』

「いや、あの…一人で大丈夫なので」

『無理してはいけないよ! 怪我人なんだから。ここは遠慮しないで』

「あ、ハイ…」
正直こんなにまで大袈裟にしてもらわなくても…と思いつつ、先輩の情熱に負けた名前は先輩の背中におぶさった。







――――――

『失礼します。レイヴン先生怪我人を…』
保健室には誰も居なかった。普段先生が作業している机には“お出かけしてまーす”と書かれたメモが貼ってあった。

「またレイヴン先生サボって…」

『また? よくレイヴン先生は居ないのかい?』

「まあ…あの人が仕事してるとこなんてめったにみれませんよ」

『そうか。じゃあ僕が手当するよ』

「…お願いします」
一瞬躊躇ったが、今までの事から察するに断っても先輩は突き通してくる。半ば折れる形で黙って手当てを受けた。
とっても丁寧な手つきで…あんまり大きな怪我じゃないのに…真剣で…。


『ふう… 終わったよ』

「!!」

『…どうしたんだい?』
手当てしてもらっている間、名前無意識にずーっと先輩の顔を見ていた。ふとみせた笑顔に、自らの顔が火照っているのを嫌というほど感じた。

「はの! ああありがとうございました! 後は平気なんで…大丈夫なんで!!」
悟られまいと必死に誤魔化して目をそらした。

『なら良かったよ。じゃあ僕はここで失礼するよ、お大事にね』
救急箱を元の場所に戻すと、先輩は静かに保健室を出て行った。

私はただその方角を、じっと見ていた















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