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親愛なるおじいちゃん
いつも新鮮なお肉やお魚、パンなどありがとうございます。確かに受け取りました。
実は数日前から黒い大きなワンちゃんと一緒に暮らしています。噛みついたりしないしとても穏和ないい子です。
私はワンちゃんのご飯はよくわからないので、おじいちゃん、差し出がましいお願いですが、これからはワンちゃんの分のご飯も一緒に送ってくれると嬉しいです。
ワンちゃん繋がりで、
そういえば最近ミネというネコさんが遊びにきてくれません。あまり若くないとおじいちゃんは教えてくれましたね、彼女は元気ですか?
具合がよくないなら無理にとは言いません。けれど、そちらにミネが居るなら、私がほんの少し寂しがっていることをお伝えください。
夏らしい日差しになってきました。体を充分ご自愛なされますよう。
P.S.そろそろ"おじいちゃん"ではなく"ダンブルドア先生"とお呼びする許可をください。
ナマエより
***
僕は寮のテーブルの、一番先生たちに近い席に座っていた。
だから聞こえたんだとおもう。ダンブルドア先生とマクゴナガル教授の、微笑ましい会話を。
梟便の時間になると数えるほどの梟しか食堂に来なかった。こんな時期に梟便だなんて相当の親バカしかいないだろうと僕は思ってる。
そしてその半数が校長の元へ滑っていった。あとほんの数日で学期も終わりだっていうのに、校長先生はお忙しいんだな。
その数ある封筒の中から一つだけ大事そうに抜き取り、それは嬉しそうな顔をして目を通した。
「ミネルバ、彼女が寂しがっているようじゃ」
読み終わったのだろう。言いながら校長先生は手紙をマクゴナガル教授にまわした。
何かを咀嚼していた教授は口元に手をあてて上品に、けれどとても嬉しそうに手紙を受け取った。
読み進めていくうちによくわからない表情になっていく。
一言じゃ言い表せない…とにかく複雑な表情。
「ダンブルドア…。あなたは一体どのように説明したのです?」
「その通りじゃよ。君の体を労ってのことじゃ。余計なお世話だったかの?」
「ええ、余計なお世話です」
「すまんすまん。まぁ夏休みに入ったら、宜しく頼む」
ほっほっほ。
いつも通り朗らかに笑う校長先生に、教授は手紙を見つめながら慈愛に満ちた表情で答えた。
「喜んで」
じっと見ていたらこちらに気付いたダンブルドア先生にウインクをされた。
あっ!と思ってプレーンスコーンを口に運ぶ。
「しかしダンブルドア。この犬というのは…?」
「何も気にすることはない。穏和な良い子のようじゃからの。ほっほっほ」
あれは誰からの手紙なんだろう?
まあ僕はあの好奇心旺盛な英雄ハリー・ポッターとは違うので。深入りする気なんて全然ないので。
きっとホグワーツの卒業生だ。そうそう。