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バックビークと別れを告げ、ひとまず町外れをうろつき良さそうな住処を探す。
ガサガサ
人の足音が聞こえて反射的に犬の姿へと変化した。
「なんだあれ、野犬か?」
「こんなところに餌なんかねーぞー」
町民か。町外れといえどすぐ近くに多くの人が住んでいる。林を抜けておこうか。
ああ、空腹で死にそうだ。
林の中頃に至ると家を発見した。住人は見えない。
「(外出中…か?)」
扉には鍵が掛かっていたので、窓から侵入する。
強盗紛いなことはしたくないが、多少食料をもらっても罰は当たらないだろう。
いつ戻ってくるかもわからないので、安全のために犬のままふんふんと台所を物色する。
「わっ!あなたどこから入ってきたの?」
「!」
声に驚き振り向くと、
日に当たると銀にも見えそうな、薄い緑の髪をした女性が勝手口に立っていた。年の頃はよくわからないが、年下とみて間違いはないだろう。
服は土だらけ、手には同じく土だらけの人参やらなんやら。庭で野菜を採っていたらしい。
「クゥーン…」
「お腹…すいてるの?もう夕時だもんねぇ」
「ワン!」
少しの間だけ、ここで犬として飼われるのもいいかもしれない。人になれば脱獄犯として通報される恐れもあることだし。
正直なところ野宿なんてもう懲り懲りだった。
ホグワーツで潜んでいたあの一年間、まともなものなんて食べられなかった。あの日々を考えたら少しくらい人を騙してでも普通の生活を送りたいと願うのは当然のことだ。
…まぁ犬の姿で、だが。
「(ハリー…)」
私はここで生きているよ。