体の調子も天気もよく、甲板で食料を釣る息子たちを見てた時のことだ。
居候が部屋へやってきた。若干困惑した表情をうかべて。

「親父さん…」
「何か用か?ナマエ」

ナマエは最近俺の船に乗ってきた異世界人。
一体どうやって来たかは知らねえが以前は国軍で働いていたという。まぁ今は俺んとこの居候だがなぁ!

「悪魔の実というのは遠隔操作もできるのか?」
「あぁ?なんだいきなり」

そう聞くとナマエは、いや…うーん、と口ごもりだした。
「言いたいことがあるんならはっきりしやがれ」

では聞くが…。
ナマエは眉間の皺を深めてから聞きだした。
「今日の新聞は見たか?」
「そんな遠回しな問答は好きじゃねえんだ。もっと手短に言え」

「イーストブルーで大地震が起こったらしい。あれは親父さんの仕業か?」
あ?

驚いて半開きになった口。こいつぁ何を言い出す。
イーストブルーなんざこっからどれだけ離れてると思っていやがる…。あぁ、ナマエはここがグランドラインであることも知らねえかもしれねえなぁ。

俺の能力は地震を起こすグラグラの実。なるほどな。
悪魔の実の能力で遠隔操作もできれば俺がその地震を起こしたかと思ってやがるのか!
「グララララ!!」

笑うとびくっとするナマエの肩。こいつぁ大声で笑われるのに未だ慣れていない。
「わ、笑うということは…肯定しているのか…?」

問いに答えず笑っていると、何を勘違いしたのかナマエが怒り出しやがった。

「何故だ親父さん!なんの罪もない…なんの関わりもない東の人たちを…!何故無意味に攻撃した!!いや、意味があっても許されることじゃない!あなたはそんな酷い人だったのか!!」

それに更に笑いが漏れる。
「グララララ!!」
同時に目くじら立てて信じられないとでも言うかのような顔で俺を見るナマエ。
やめてくれ、笑いが収まらない。

「そんな人の船にこれ以上乗ってはいられない!今まで世話になった。失礼する!」

ナマエは一つ大きなため息をつき扉へと歩き出した。
それを俺は笑いが止まらないまま見送る。

「船長さん、いいんですか…?」
ナマエと仲がいいというナースが俺を心配げに見上げる。
「なぁに、心配することはねーさ!」
グララララ!!


***

その頃の末っ子エースと言えば、相変わらずナマエの部屋で勝手にベッドで寝転んでやがった。ナマエが入るとエースは機嫌の悪いのを感じたんだろうよ。こいつも困惑した顔で声をかけた。

「…ナマエ、どうかしたのか?」
「私は今すぐ船を降りる。エース、今まで世話になったな」

なっ!?
とエースがベッドから跳ね上がるのとナマエが言い出したのはほぼ同時。
「親父さんには見損なった。私は人を見る目がなかったらしい」
「おい、ちょ…ちょっと待てよ!どういうことか説明しろって!!」

ナマエの肩に触れようとした手は躊躇なく払われ、怒りの籠もった目を向けられる。

「親父さんに聞け!自分の親だろう!!」

エースは血相抱えて部屋を出、ノックもせず俺の部屋に駆け込んできた。
「親父!!」
「誰か来るだろうとは思っちゃいたが…お前か、エース」

マルコが来ると思ってたんだがなぁ。あいつは一番ナマエのことを気に入ってやがるからよぉ。

「どういうことか説明してくれ!!まだ島の影も見えてねぇってのにナマエが船を降りるって言いだしたんだ!!」
「グララララ!!あいつは今どうしてる?」

「え、どうって…部屋で多分荷物まとめて…っそんなことより早く説明してくれよ!」

荷物つっても衣服はほとんどねぇし、研究かなんかの紙だけだろう。だったらもう甲板にでも歩いてるころだな。
「グララ!後で教えてやるよ」


***

甲板に着くと案の定、布で何か包まれたもんを持ってるナマエがマルコと話していた。話してるっつってもナマエは口を開いちゃいねぇがな。ナマエはこっちを見るとマルコを押しのける。

「あなたのことだから、見送りぐらいしてくれるだろうと思っていたよ」

マルコが俺を呼び、エースが後ろからナマエを呼ぶ。感動的なシーンだなぁこりゃ!

「まぁ待てや」
何か?と返事するナマエ。随分冷静さは取り戻したらしい。

「あれは俺じゃあねえ。悪魔の実にも限界ってもんがあるんだ。そんな遠くの海でなんざ地震は起こせねえ」
「…は?」

しばらくの間を置き、俺の言ったことを理解すると、
なっ!?
と今度はナマエが跳ね上がって驚いた。

「そっそうなのか!?だったら早く言ってくれよ!」
「てめぇが勘違いして勝手に出て行ったんだろうが!グララララ!!」

なんてことだ…。とナマエは顔を覆う。

俺たちを挟んで立ってる二人は勿論、釣りをしていた野郎どもにも何が起こっているのかわかっちゃいねえだろう。

グララララ!!
「で、どうするよ?降りるのか?」

はっ!と顔をあげるナマエ。そこにはさっきとは違って羞恥心が見てとれる。

「つ…次の島まで…どうかお願いします…」

グララララ!!今日はまた愉快な日だなぁ!!

「おい親父!どういうことだよ!?」
「そうだよいナマエ!降りるっつったり乗るっつったり…ちゃんと説明してくれよい!!」

グラーラララ!!
「お、親父さんの部屋で話そう!!流石にこんなところじゃ恥ずかしすぎる!」
うわー!
と顔を真っ赤にさせて俺たちを押すナマエ。

とりあえず居候延長だな!グララララ!!

- 2 -
[prev] | [next]




back top
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -