ツン勘とおとカノ
ツンデレ勘ちゃん(ただし泣き虫)



おっとり彼女(ただしキレやすい)


楽しいお話。

とある同級生の見解


***

僕の友人、尾浜勘衛門は少し変わった性格です。

「撫子ー!」
「まぁ、勘ちゃん先輩とー…鉢屋…先輩ですか?」

その彼女で一つ下の撫子ちゃんはもう少し変わった性格。

「違うよ。僕は不破雷蔵」
「まぁ…すみません」

「ねぇねぇ撫子!もうくのいちは授業終わり?暇なら一緒にいてあげてもいいよ?」

ほらまたそんな言い方して…。
本当は自分がイチャイチャしたいだけだろうに。

「はい。くのいちの授業はもう終わりです。ですが宿題があるのでー…すみません」

言われ、しゅーんとあからさまに眉を下げる勘衛門。
「ふーん、じゃあ仕方ないね。俺もやらなきゃいけないことあるし!」

でも口は違うように動く。
ちょっと唇を突き出して拗ねたような顔して、でも口から何とも思ってないような言葉を出す。

素直じゃない友人のために!ここは僕の出番かな!!

「やらなきゃいけないこと?兵助がい組の宿題はないって言ってたし、三郎も委員会の仕事がないって暇してたけど…何かあるの?」

ビッと勘衛門の変わった髪先が動く。

「そ…そうだっけ?じゃあ…暇だから撫子の宿題…手伝って…あげてもー…いいよ?」

「まぁー、いいんですか?」

こうでもしないと勘衛門は本当に動かない。
いや、動くんだけど…頭と体がちぐはぐになる。
それで頭を抱えて部屋の隅で影を作る。らしい。
僕は見たことないんだけど、兵助が鬱陶しそうにしていたのは何度か見かけた。それも二人が付き合う前の話…だけではなくって…。

それでどうやって上手くいっているのかはわからないけれど、何だかんだでやっているらしい。

「それじゃあ、わたしお部屋に教科書などを取ってきますね」
「じゃあ僕は先に図書室に行っているよ」

くのいちは勝手に忍たま寮に入ってはいけない。
忍たまは勝手にくのいち寮に入ってはいけない。

ならば二人で勉強するには食堂か図書室しかないわけで。
だけど食堂なんかで好んでいちゃこく人なんかいない。

くのいち寮に行く撫子ちゃんについて行こうとする勘衛門に耳打ちをする。

「隅っこの机、空けといてあげるからね」

ばっ!と驚いた顔で振り返る勘衛門と嬉しそうに先を歩く撫子ちゃんに手を降り図書室への道を急いだ。


「まったく…雷蔵のやつ…。」
「大変お優しいお友だちで、羨ましいかぎりです」
「撫子、今は二人きりなんだから…。」

勘衛門は言いかけただけだったけど、それを察して笑みを深める撫子ちゃん。

「勘衛門」
「なあに、撫子」
甘えるように名前を呼び合い微笑み合う二人。

「あぁ、勘衛門」
ふと、撫子ちゃんは思い出したように笑いを止めた。

「どうしたの?撫子」

「さっきわたしに嘘ついたわよね?
不破先輩がいなかったらわかんないような。わたしには嘘か本当かわかんない嘘ついたわよね?」

「え、あ、いや…それは…」

くるりと体の向きを変えて。
さっきまでの笑顔もしまって。

「わたしには嘘つかないって言ったわよねぇ?
忍者は人を騙すものだけどわたしには絶対に嘘つかないって誓ってくれたわよねぇ?」

「…撫子、顔が大変怖いです…」

「は?今そんなことどうでもいいのよ。あんたの照れ隠しだかなんだか知らないけどそんなしょうもないことで嘘つかれちゃこっちも何信じていいんだかわかんないのよ。いい加減にしなさいよ何度目だと思ってんのよ」

「うっ…うぇっ…だって…」

「だってじゃないの。何度目だって聞いてんのよ勘衛門が自分から誓うって言い出したんだからね?
ほらほらなんとか言いなさいよ男でしょう?いつまでも口つぐんでないでほらほらほらほら!!」

「ふっ…うぇーん!!」

とうとう勘衛門は泣き出した。
まだ下級生だったころ、勘衛門はよく怪我をしてよく泣くやつだったって兵助は言っていた。
僕らが仲良くなったのは彼の泣き癖が治ったあとだと思っていたが…。

「またすぐ泣く…。びーびー泣いてんじゃないわよいつまでも子供じゃないんだから!」

もう一つの知らなかったこと。
僕は学園で二人が知り合っていたと思ったが、元々同じ村の出身で幼なじみだったらしい。

「うぇーん!うあーん!!」
「そんなに泣いてちゃ後輩からの威厳なくすわよこのうどん頭」

「うどん頭じゃないもーん!!」

「うるさい馬鹿黙りなさいよ馬鹿勘衛門。ばかんえもん」
「うあーん!俺馬鹿じゃないぃー!!」

ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てるけれど、幸か不幸か周りには誰も居ない。
キレやすいけれど冷めるのも早い撫子ちゃんが一つため息をついた。

「あーもー、ほらさっさと泣き止むー。今から図書室で宿題のお手伝いしてくれるんでしょう?」

「…ずっ…ごめ…なさ…。もう嘘つかないからぁ…。」

そんなこと言って、またついうっかりどうでもいい嘘をついてしまうんだろう。
そういえば少し前、二人の交際が僕たちに知れたころに三郎が撫子ちゃんにこんなことを聞いていた。

『なぁなぁ、勘衛門って撫子ちゃんの前ではどんななの?嘘ついたりしねぇの?』

『そうですねー。どんな…と聞かれてもどのようにお答えすれば良いのか困りますがー…。勘ちゃん先輩だって嘘つくときはありますよ?』

まぁ撫子ちゃんの前では全然態度が違うからね。なんて相づちを打つ。
普段は何てことない普通の誠実な勘衛門だけど、彼女が視界に入ると途端にツンツンしたりデレデレしたりする。

『嘘つかれたら嫌じゃない?』

『何度も嘘をつかれたりすると流石に少し…怒りますけど、でも照れ隠しだってわかってますから。』

照れたように微笑む彼女の理解力に感心し、三郎と
撫子ちゃんが怒ることもあるんだー。
と言ったり、
まぁ怒ってもそんな怖くねぇんだろ?
なんて言っていたけれど…。

まさかこんなに豹変するだなんて誰に想像できただろう。



「わたしが教科書取りに行く間にその情けない顔どうにかしてね?」

「…うん。」



そうして図書室に入ってきた勘衛門は鼻先と目が若干赤くなっているような気がしたけれど…僕は何かを顔にぶつけたのだろうぐらいにしか思わなかった。

いやぁ、人って変わるものだ…。

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