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三年生怖いです。何がどう怖いって謎の自信がありすぎて怖いです。

「正面玄関はどこだあああああ!!!」
「先輩、左門、どこ行くんだよ。こっちだって」
「…(そっちは食堂ですうううう!!!)」



***
こうなったわけをどこからお話すればいいのか…!
最初に言っておくと、今日は何にも見えてません。そういうこともあるんです!

今日は保健委員会の活動にお呼ばれしてませんし、喜八郎くんは委員会です。ちょっと嫌がってた姿はまあ置いておいて…。
滝夜叉丸くんと田村くんは委員会の後輩を迎えに行ってしまいました。いい先輩ですね!尊敬します!!
そして、僕は特に予定もなかったのでぶらぶらと歩いていました。

いいなー。僕も後輩を迎えに行ったりしてみたいです!きっと後輩からとっても慕われてるんでしょうねぇ!!

「……どこだー…」

うん?
誰か探しているんでしょうか?
それとも迷子でしょうか?

お…お手伝いしてあげたいんですけど人捜しなら交友関係の狭い僕は役にたたないでしょうし…。
あああでも迷子さんなら校内はご案内できるし…。あれですよね!僕もうちょっと色々な人と接した方がいいですよね!!

迷子ということなら一年か二年生でしょう!どちらでも保健委員のお二人のお友達かもしれませんから会わせれば……はっ!もしかしてこれって…逃げ道…!?
ううううう…僕、助けは求めません!!猪名寺くんも川西くんもお勉強でお忙しいかもしれませんし!!四年生のくせにいちいち頼ってくんなよとか思われませんように!!!
勿論お二人がそんなこと思わない心の広い方だということは重々承知ですが!!

とにかく…声をかけてみましょう…!頑張れ僕!!


「正面玄関はどこだあああああ!!!!!」

よし!迷子くんだ、とりあえずセーフ!!

建物の影から出てきたのは萌葱色の男の子が2人でした。あれ?なんか見たこと…ある?

「あ!四年生だ!!」
はい四年生です!!!


三年生の二人は仲良く手を繋なぎ、四年生ー!と言いながら寄ってきました。年上の人には敬語使わなきゃ怒られちゃうよ!僕は怒るなんてそんなことできませんが!!!

「道がわからないのか?」
「そうなんだ」
「ちげーよ」
えええぇ!?二人して真反対なこと言われても!!

「…それで?」
「今日は体育委員と会計委員の合同トレーニングがあるんだ」
「そんで俺らが迷子になるからとかって、先輩が迎えに来てくれるはずだったんだよ」

おおお!!優しい先輩がここにも!

「困ったもんだよなー。迷子探しが迷子かよ」
「三之助!迷子になっているのは僕たちのほうだぞ!!」
「(迷子探しが迷子!!凄い)面白い(言葉まわし!!)」
「なにが?」

あ!話が脱線してる!!こんなとこで話してるバヤイじゃないよね!早く連れて行かないと!!

「正面玄関に行きたいのだったな」
「そうだ!どっちの方向にあるか教えてくれ」
「そっちの──」
「こっちかあああああああ!!!」
えええええええぇ!!!!????どこ行くの!?
「ちょっと待──」
「じゃああっちかな」
ちがううううううう!!!!!


そうして冒頭に至るのです。
三年生二人は相変わらず手を繋いでるんだまま走り回り、僕はただただ「違う」とか「まって」とか言いながら追いかけるばかり。
二人とも走るの早いよ!!!


ひぃひぃ言いそうになりながら追いかけていると背後から閻魔様みたいな声が聞こえました。

「かああああんざきいいい!!!!!」
「つううううぎいいやああああ!!!」

閻魔様かと思ったら般若にそっくりな滝夜叉丸くんと田村くんでした!!!ごめんなさい冗談です調子のりました!!!

「おお!田村三木エ門ではないか!」
「滝夜叉丸どこ行ってたんだよ」

!!
先輩って田村くんと滝夜叉丸くんのことだったんですか!!そういえば田村くんは会計委員会でしたね…!!


「お前たちはどうしてジッとしていることもできないんだ!!!」
ガミガミと怒る田村くんは今まで走り回っていたんでしょうか、滝夜叉丸くんもなんですけど、自慢の御髪が飛び跳ねています。

「すまなかった剛。大変だっただろう」
「(すごく大変でした!!!嘘です冗談です普段お二人がされてる苦労に比べたらこんなこと)なんてことはない」
「無理をするな」

そんなことないよ!今まで走って探してたんだろうし僕なんてただ追いかけてただけだったし!!
思ったことを全部ひっくるめて、僕はゆるく頭をふりました。田村くんに怒られていた三年生の二人がシュバッと手をあげます。

「礼を言うぞ四年生!」
「サンキュー」
「上級生には敬語を使え!!大和も怒らないか!」

いえいえ!僕が怒る理由はないので!!あ、でも上級生の威厳は見せた方がいいのかな!?なら一応怒ったフリだけでもしておくべきだよね!!

「…コラ」
「…」「…」
「…」「…」
四人揃ってしょっぱい顔されました!!!!

コホン、と田村くんが咳払いをして、いい加減集合場所に向かうことになりました。

「ではな!四年生!」
「もう迷うなよ」

え!?僕が迷子になったの!?違うよ!!迷子になったのは君たちでしょう!!?
そうして滝夜叉丸くんと田村くん、三年生くん二人は手を振り去っていきました。

ふぅ、疲れた…。
今日はもう誰にも会いたくないなぁ。
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