12000番リクエスト



●月×日本日も晴天なり。

今日の散歩は忍術学園の保険室。
え?怪我はしてないよ。ちょっと気分転換。

誰がいるのかなーと屋根裏から覗くと見知らぬ生徒が寝転がっていた。足を組んで頭巾も着けず保健室の布団に寝転がっている。

知らない生徒に用はない。
とは思ったけど今は授業中のはずだ。見たところ怪我や病気で休んでるわけでもなさそうだし。
装束の色から見て六年生。あの子何やってんの。

ちょっとしばらく観察してよ。


「早く授業終わんねえかなー」
ごろごろ

ごろごろごろ
「暇だなー」
ごろごろごろごろ…


ねぇこの子本気で何やってんの?


授業終了の鐘がなった。
しかしその少し前に少年は寝てしまった。
鐘が鳴り終わるか、というときに廊下から、多分伊作君の翔る音がし、

スパーン!
「剛!!」
「ふがっ?」

勢いよく開けられた障子からはやっぱり伊作君がやってきた。ぷりぷり怒っている。

「また授業サボってー」
「んー…ちーがーいーまーすうー。保健室のー、番をしてたんですうー」
「何が番だよ今まで寝てたクセに…。ほらもうさっさと起きる!布団片付けてよ!!」

めんどくせぇなー。
とぶちぶち言いながらだらだら畳む。

「畳み方が汚い!!」
「お前はおかんか」


あたたたた…と言いながら背中の肩甲骨の辺りをさすった。
「剛怪我してるの!?」

もー!何したの!?と急いで脱がせる伊作くんに、まだ少し寝ぼけながら彼は言う。
「食満に喧嘩売られたから買った」
「…はぁ。留三郎が剛に喧嘩売るわけない。どうせまたなんか壊したんだろ?」
「アヒルボートの首持ったらもげた」
そしたら食満が喧嘩売ってきた。

そう続ける少年。
…。やっぱり頭は良くない子のようだ。
伊作くんも、ため息をつきながらも治療道具を出した。

「包帯巻いてー」
「こんな怪我なら要らないよ」


さて、そろそろ下りるか。
いつものように軽い音を立てて下りると、またいつものように一瞬警戒したように空気が張り詰める。

「やぁ、こんにちは」
「あ」
「誰だあんた?」

なんで彼は警戒しないんだろう?
と思ったらなんかケンケンしてる。ツンケン、じゃなくてケンケンしてる。
片一方の足でけんけんするのとは違うからね。

「タソガレドキ城忍び組頭、雑渡混奈門だよ」
「あ゛?で、なんでオッサンがこんなとこ来てるわけ?暇なわけ?」

ベシンッと頭を叩かれる。
「いって!!」
「雑渡さんに失礼な口きかないの!!」
「お前はおかんか!」



***
「ふーん、城の人か。戦で金がいるんなら俺んち使ってよ。いい値で貸すから」
「じゃあ実家は金貸しか」
「雑渡さん気をつけてください。利子すっごい高いですから」
「ま、世の中金だよな!」

拳をぐっと握って勝ち誇ったように言った。

「あながち間違ってはいないけど…君が言うとそれしか言えない馬鹿の子みたいだね」
「あ゛ぁん?」
「駄目だよ剛、まだ怪我治療できてないんだから!」

ぐっと綿を傷口に押し付ける。

「!!…っでぇ!!伊作てめぇ!!」
「あー、ごめんごめん」
あんまり謝る気はないらしい。

はい終わり。と言いながら彼の怪我したところをベシンッ!と叩く。再びギャンギャン煩い少年。
いいから早く上着なよ。

それから伊作君は彼の紺色の髪を触った。

「ねー、また髪の毛染めたの?」
「おう」
「へぇ、それ染めたんだ。綺麗にできてるね、気付かなかったよ」
「はんっ!ったりめーだろ。カリスマにさせたんだから」

「剛、目上の人には敬語使わないとダメだよ」
「っせーなぁ」

ちなみに前は赤茶色だった。と補足される。

「そんなのでよく学園にいれるねぇ」
「やること適当にやってりゃどうにかなんだよ」
「追試ばっかだけどね」
「てめぇもな」



また随分な生徒がいたものだ。少し失礼な言い方だけど、善法寺君は友だちなんて選べなさそうな質だよね。この医務室自体来るもの拒まず主義だし。

同情やら何やら、とにかく可哀想なものを見るように馬鹿で不良な少年を見ながら憂いの言葉をかける。
「彼の相手大変そうだね」
「そんなことないですよ?僕は剛がいるだけで、毎日楽しいですし」
そう笑顔でのたまった。
今ノロケられた?

「お前バッカじゃねーの」
顔はそっぽを向いている。けれど首の辺りは焼けたように真っ赤っか。

僕が馬鹿なら剛はもっと馬鹿だよ。
うるせぇよ馬鹿。

まるでカップルのような言葉の応酬。
なにこの二人、ラブラブなの?
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