春の陽気に誘われた



「たーいよーうさーんさん」
「三之助先輩!」
「おーててーがぱーちぱーち」
「喜八郎先輩!」

「おやまぁ、何をしているんだい?」
「あ、喜八郎先輩ー」
「暇だったのでころころしながら言葉遊びをしてました」

「あぁ、剛は数字にはまだ強いもんね」
「綾部先輩、強いというのは無理があります」

「今思ったんだけど一年は組の喜三太と喜八郎先輩って似てるね!」
「どこがかな」
「だってさー、喜ぶでしょ、数字でしょ、最後の文字なんか並べたら太郎だよ!」

「だからどうしたのかな?綾部先輩、剛を撫でないでください。それ甘やかしてるのと同じです!」
「可愛い可愛い」
「やーん」

「そうだ時友、さっき次屋を見たよ」
「ど…どのあたりでですか?」
「裏裏山かな?滝夜叉丸にも来る途中言ったら慌てて出ていってしまったよ」

「ごめん剛、僕ちょっと行ってくる」
「えー…。いららっしゃい」
「行ってらっしゃいね。行ってきます」


「しろべ居なくなったから寂しくなっちゃいました」
「おやまぁ僕がいるじゃないか。行くよ」
「わー。喜八郎先輩力持ちですー」

「剛を持ち上げるくらいわけないよ」
「どこ行くんですかー?」
「作法室で日向ぼっこ」
「わーい」



***

「ということがあったんです」
そう言って喜八郎は説明を打ち切った。
その膝の上には気持ちよさそうに眠る私の癒やし、大和剛。

「そしてそのあとお前も春の陽気に当てられて、委員会も忘れ眠りこけていた、ということだな」

「委員会なんてありましたっけ?」
「あるに決まっているだろう!!毎週この曜日だし今朝食堂でも言ったわ!!」
「うー…」

私が叫ぶように喜八郎を怒鳴ると天使のような声で剛がうなった。あー可愛い可愛い可愛い可愛い…!

「あぁあー。剛が起きちゃうじゃないですか。今日の委員会はお昼寝ということで、」
おやすみなさーい。と言って喜八郎は廊下でゴロンと寝転がった。

「わーい!」
「あっ!こら兵太夫!」
「ぼ…僕も良いでしょうか…?」
勝手に喜八郎たちの元へ飛び込んでいく兵太夫にそれを止められなかった藤内。あとどこから出したのか布羽織を手におずおずとこちらを伺う伝七。

…もはや怒る気力さえ失ったわ。

活動日誌には適当に絡繰り研究とでも書かせておこう。

藤内に。


「藤内、私も寝る。委員会日誌に適当なことを書いてお前も寝ろ」
「え?あ、はい」
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