キリリク



「ろじー。次一緒の授業なんでしょ?」
「そうだよ。女装で町まで行くんだ。」
「そうなんだー。」
そうなんだー…って、知らなかったのかコイツ…。
「ろじの女装姿可愛いから好きー。」
「か、可愛くねぇし!!ど、どうせ道覚えてないんだろ?しょうがないから準備できたら迎えに行ってやるよ!」
「えー、道ならだいたい覚えてるよー?」
「嘘つけー!」
「嘘じゃないもーん。」
「嘘つきはこうしてやる!」
「やー、ほっぺちゅままないれー。」


***

「しろべ、しろべー。」
「どこ行ってたの剛。次変装の授業だよ。」
「知ってる!この授業面白いから好きー。あのねー、や…やー…」
「山田先生ね。」
「うん。山田先生の女装とっても綺麗だと思うの。」
「…そうだね?」
「そうだよ?」


私がばかもんじをいじり倒した後、暇を潰して散歩していると二年長屋から
「あれー?」
と剛の声が聞こえた。そういえばここ二、三日ほど授業や委員会で会えていなかったことを思い出す。

「何をしているんだ?」
「あ、た、ば…たらば蟹先輩。」
「立花仙蔵だ。」
「どうもすみません。」
ぼうっとした表情のまま頭を下げる剛。
うむ、可愛いから許してやろう。

見れば二人とも髪を下ろしてちんちくりんの女着物を纏っている。
「変装の授業か?」
「これから町へ行くんですがー、どうもうまくいかなくて。」
「ブリーフヘルペスミーってやつです。」
「…プリーズヘルプミー、な。よかろう。時友、指示はしてやるから自分でやれ。帯紐をもう少し綺麗にまき直せ。あぁ、剛は私がやってやるからそのままでいいぞ。」
「なんか差別されたような気分です。」
「それは被害妄想というやつだ。」


そうこうして剛も時友も可愛らしい町娘へと変貌を遂げた。
完璧だ…!
二人の全体を見ていると剛が先輩先輩、と嬉々として私を呼ぶ。
「可愛いですか?」
「あぁとても可愛いぞ。思わず攫ってしまいそうだよ。」
「授業の邪魔しないでください。」
「お皿をしまうんですか?」
「剛はお口チャックね。」
時友に言われ、両手で口を抑えながら んっ!と言う剛。
っべーわ、まじ可愛いわけ分からんくらい可愛いまじ可愛い。

久々の癒やしに心中で悶えていると、とたとたと足音がし池田が女装姿で顔を出した。
「準備できたかー?あ、立花先輩。」
やぁ。と言うと池田は頭を下げた。
それに嬉しそうに歩み寄る剛は可愛い。すごく可愛い。

「ろじー、先輩に可愛いって言ってもらえた!僕可愛い?」
「か…!お、男が女の格好なんかしても可愛いわけないだろ!!」
「えー。」
心なしかしゅんとして広げた両手を下ろす剛。
顔を真っ赤にして言ったので、池田の精一杯の照れ隠しによる天の邪鬼だと…剛は気付いていないのだろうな。

「何を言う。女装なんだから可愛くないといけないだろ。剛は十分可愛いよ。」
「わーい、ありがとうございます!」
素直に喜ぶ剛と頭を撫でてやる私を見て悔しそうに、うー…と唸る池田。
ふっ、まだまだだな。時には素直に褒めてやらねば。そんなんじゃあいつかすれ違いを起こして別れてしまうぞ。

そして何か閃いたように、あ。と言い池田はどこか意地の悪い笑みを浮かべた。
「剛、可愛いってなんて言う先輩に言われたの?」
「え?んーと、た、ば…あれ?ハバネロ先輩?」

!?
何故離れる…!!

ニヤリ
悪い笑顔が深くなる。
「…立花だ…!」
「どうもすみません。」
くっ…これで勝ったと思うなよ?
同じ方法で反撃してやろう。大人げない?私はまだただの忍たまだ。

「剛、ろじろじと呼んでいるがちゃんとした名前は覚えているのか?」
「三郎次です。」
「そうじゃなくて、苗字だ。」
「んー…け、けー…い?いけー…いけ、いけー…」
「だ。」
「池田!池田三郎次です!」
「ナイス四朗兵衛!」
「こら時友、助け舟を出すんじゃない。」
「だ。って言っただけです。」

「ろじろじ!合ってる?」
「合ってる!早くいかないと集合時間遅れるぞ!」
「しろべも行こー!」

「うん。じゃあ僕たちはこれで。」
「失礼しますね、立花先輩。」
「お手伝いしてくれてありがとうございましたー。」
そして三人はごく自然に手を繋いで出て行った。

ちくしょう…。
下級生に負けるなどとは思わなかった…。
どこか腹立たしいまま、そのあと不運にも私はあの湿り気コンビと出くわすのであった。
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