Diary
** 【覆面単車4z♀】
「フォーゼと仲良くなってどうするんだい?」
「彼らを引っ掻き回そうかと」
「へぇ」
「鬼島さんも手伝ってくださいね」
「面倒だねぇ…。あんた、あたしの駒なんだろう?」
「ただ指示を待つ駒より、自分で考えて作戦を練る駒の方が手間が掛からなくて便利でしょう?」
「ま、それも一理あるっちゃあるんだけど」
それは現れたゾディアーツを倒すため彼らが変身していたあとのこと。
ゾディアーツにはまんまと逃げられてしまい、仕方なくメテオが物影で変身を解いたときのこと。
「朔田くん?」
「!?(見られた!)あ、やぁ…」
「どうしたの?そんなところでうずくまって…具合でも悪いの?」
「あ、そ…そうなんです。ちょっと…お腹が痛くて」
「本当…に?」
「…」
片や何かを探るように、片や不安げに。朔田流星と×○は互いの目の奥を見ようとする。
「見てましたか?」
「あなたの青い被り物が消えるところ?」
「…あれは」
マズいマズいマズいと頭の中で警鐘が鳴る。
「私誰にも言わない」
「え?」
「そこに歌星君たちが居るのにこんなところで隠れてた。なら、他の人には隠してるってことでしょう?
大丈夫。私、隠し事は得意だから」
ね?
と○は安心させるような笑みを作った。
「もし信用してくれるなら、あの被り物の名前を教えて」
「…」
「おーい、流星!いつまでそんなとこに隠れてんだー?」
「あ、如月くん」
「よう!○も居たのか」
「それじゃあ僕はこれで」
「あ…うん。またね」
間一髪変身を解いた弦太郎に見つかり、仮面ライダー部へと連行されるのであった。
***
「すまない、タチバナさん。この学校の女子生徒に──」
「一般人なら問題はない。以後気をつけるように」
流星が全て伝えきる前にタチバナは通信を切った。
「…?」
あれほどバラしてはいけないと言っていたくせに…一体どういうことか。そう思うものの、彼の正体も何もわかっていないし探りをいれないようにも釘を刺されている身分。
タチバナがいいと言うのだから今は良いだろう。と自身を納得させた。
***
「そう、メテオっていうの」
「誰にも言うな」
「そんな怖い顔しなくっても、言う相手なんて誰も居ないもの」
「此方としてもあまり一般人を巻き込みたくないんだ」
「そう…」
放課後の教室にて。
一見ロマンチックなシチュエーションではあるが一方はライダーとして死活問題である。
「あ」
「…なんだ?」
ハッと何かを思い出したように、何かに気付いたような声をあげる○。
「ううん、何でも…ないの」
明らかに目をそらす彼女に不信感を抱かないわけもなく。流星は苛立たしげに○へ迫った。
「言え。なんだ」
「え、別に今の話には…関係ないっていうか…」
「関係あるかないかは俺が決める」
迫られれば後ろに下がるのが人の常。前へ進む流星に合わせて後ろへ下がっていけば、行き着く先は当然壁。
ドンッ
と逃げられないよう片方の手で退路を塞ぐ。
「朔…田くん…?」
念のため擁護しておくと彼は恋愛感情で彼女を追いつめたわけではなく、ただ純粋に友人を助け出す計画のために自身の秘密を共有する彼女の不審な言動を言及しているにすぎない。
しかし○がそれを分かっているかはまた別な話である。
「なんだと聞いてるんだ。さっさと言ったらどうだ」
「それは先生も聞きたいなぁ」
「!?」
教卓側の扉に学園の校長が寄りかかって立っていた。
「(聞かれた!?)」
「こんな時間に何をしている?昴星高校の生徒が、まさかうちの生徒に迫っているとは」
そんな子だとは思わなかったよ
と
相変わらず胡散臭い笑みをたたえてこちらへ歩んでくる。
「あの、違うんです!えっと…朔田くん内気だから、性格矯正しようと…してるところでして!」
「へぇ」
あまりにも苦しい言い訳だ。
「別に迫られてるとか、全然違うので!安全ですよ。朔田くん優しい良い子だから…」
「すみません…」
面倒だとは思いながらも、流星は申しわけなさそうに目をふせて謝った。彼女の口走ったことはとりあえず右から左。どうせ本人だってなにを言っているかわかってないだろうし。
「君がそういうなら仕方がない」
反転して教室を出ようとしたところで○が声をかける。
「先生…どのあたりから聞いてましたか?」
「私が来たとき、すぐに君が気がついた。話の内容はそれほど聞こえてはいなかったよ」
早く帰るように
と一言言い残して校長こと、速水公平は出て行った。
その様にホッと胸を撫で下ろした二人。
「校長先生が…じーっと見てたから、その…今の話はヤバいんじゃないかなーって」
思って。
と言い終わるにつれて徐々に小さくなる声で○は言った。
「そうか、すまなかった」
「いいよ。誤解もちゃんととけたみたいだし」
それじゃあ。と○は鞄を持ち直して教室を出た。
自分もライダー部へ行こうと、机にかけた鞄を手にする。
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