「私は君のことが好きじゃない」

 突然投げ掛けられた言葉に豪炎寺は作業を止める。後ろを振り返ってみれば、声の主が不機嫌そうにこちらを睨んでいた。

「……そう言われても困るんだが」

 それに、いちいち告白しなくとも、嫌いならば嫌いなりに避けるなりなんなりすればいいではないかと思った豪炎寺だが、それを口にする前に遮られてしまった。

「私は、君のことも、私のことも好きじゃない。きっとこの先も好きになることはないだろうし、好きになろうともしないだろうね」
「涼野……何が言いたい」
「別に君に非があるわけではないよ。ただ、君と私は少し似ていると思ってね」
「俺と、お前がか?」

 小さく頷いた涼野は僅かに笑っていた。豪炎寺は涼野と自分が似ている部分が一体何処なのか、そして涼野が笑っている理由が解らず、首を傾げる。
 訳が解らないと言ったように目で訴えてくる豪炎寺を見ると、涼野は目を逸らし静かに瞼を閉じた。
 
 豪炎寺と自分は似ている。そんなことを思ったのは初めて豪炎寺を目にしたときだった。彼の目には見ただけでは解らない、けれどとてつもない何かが秘められている。そう直感的に思った。あの目には、何かがあると。
 そしてある日、南雲が涼野に言ったのだ。「お前とあの豪炎寺、似てる気がすんな。何でだろ、なんか似てるわ」と。
 そのとき、涼野は解ったのだ。彼、豪炎寺修也は、自分と似ているのだと。彼の目は、自分の目と同じ目をしていたのだ。

「君を見ると、まるで鏡に写る私を見ているかのようで、たまらなかった。ただ、それだけの理由さ」


title by 神葬


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