※ヤってるだけ。R15くらい。
ふたりだけの世界に湿った空気が漂っている。ほんのりと赤く染まった真緒の頬はいつ見てもそそられた。ちろりと伝う汗を舐め上げると、深い緑色の瞳がこちらを捉え、シーツを握っていた手は次第に凛月の身体に吸い込まれるようにして触れた。太股から腰、背中、胸と、順に焦らすように滑るそれは凛月を堪らなく刺激する。求めるように突き出した唇はあっという間に啄ばまれ、ときどき溢れる空気と一緒に真緒の名前もなぞった。真緒の指が突起を弾いたのと同時に声が漏れて、どちらのものかわからない唾液が凛月の顎を伝いシーツに染みを作る。
腕を引かれて、そのまま真緒の下に敷かれる形になった。服を胸元が見えるところまで捲り上げられ、真緒の顔が近づく。じわじわとこみ上げる小さな快感に、目の前にある赤い髪で遊びながらなんとか耐える。真緒は好きなんだろうが、凛月は直接的な快感を得られるわけではないので、そこばかり弄られるのは正直あまり好きではない。
顔を上げた真緒と目が合うとそのまま状態を起こして凛月から離れてしまった。凛月の捲られた服は丁寧に下ろされ、自分の少し乱れた髪と服を整える。まさか、もう終わりか。
「まって、やだ、ま〜くん」
「だめだって、腹痛いんだろ」
「ここまでやっておいてそれ言うの」
「いや、それは……」
「ねぇ、いいよ。いいから、やめないで。おねがい」
凛月も少し身体を起こして、真緒に手を伸ばす。抱き寄せるようにして真緒の唇に何度も軽く触れた。焦れったい小言なんて言えないように、何度も。
真緒が言うように腹は酷く痛むし、下半身は今すぐシャワーを浴びたいほどに気持ちが悪い。これと同じ状態の女なら行為を避けるだろうし、自ら望むなんて以ての外なのだろう。凛月はそれ以前に男であるし、本来ならば生理なんてくるはずがないし、子宮すら存在しない。けれど今、凛月の身体は子供を作る準備を行っている。もしこれが夢でもなく現実だったなら、凛月は。
しばらくして、真緒の眉が下がるのが見えた。諦めたように少し口を開いて、凛月の唇を迎える。また困らせちゃってるなあ、なんて思いながら、凛月は構うことなく真緒に身体を委ねた。
「ま〜くん。それ、いらない」
「は?」
「ゴム、いらない。そのままがいい」
「な、なに言ってんだよ、仮にもお前は生理中なわけで……」
「だからだよ、ま〜くん。ね、そのまましよ」
どろりとした赤がシーツを染める。身体から排出される血の量の多さに凛月は目眩がした。これではいくら血を頂戴してもキリがない。
真緒は優しく凛月の腹に触れて、額にキスを落とした。普段使う安物のローションの出番はなく、凛月の血でゆっくりと解される。ただでさえ気持ちが悪いのに今潤滑剤として使われているのは凛月のものであるという事実がたまらなくて仕方がない。部屋に響く水音に感化され、抑えきれない声が跳ね上がるように溢れた。
「……いつもより感じてる?」
「いつも以上に、気持ちわるいけどねぇ……」
「それなのにやめないでっていうんだから、お前も大概だよな」
「でも、処女を犯してるみたいでそそられるでしょ?」
「自分で言うなよ……」
「ふふ、否定しないんだ」
「……余裕こいてるとあとで泣くからな」
いつの間に増えた指が、バラバラに凛月の腹を散々に刺激して、ゆっくりと抜かれる。赤く染まった真緒の指を見て、当然気分は良くなかった。
放り出されたコンドームと凛月を交互に見て、どうやら最終確認をしているらしい。目が合うのを見計らって、いいよ、と口を動かす。少ししてから真緒に触れて、はじめての感触に身体が震えた。
「ほんとに、いいのか」
「先っちょ入れたまま言わないでよ」
「お前はそういうことを言うな!」
「今だから、欲しいの。ま〜くんが欲しい」
「……欲しいもなにも、昔からお前のものだよ」
じわじわとやってくる圧迫感に息が詰まる。直接感じる真緒の熱につられて凛月も次第と熱くなった。いつもと比べてなだらかではないその行為は、ふたりの心臓を激しく波打たせる。
手放しそうな意識を辛うじて握りしめながら、足を真緒の腰に絡めた。怒られるかと思ったが、真緒はその太腿に軽く触れて薄く笑った。
「最初からそのつもりだったろ」
「う〜ん、ばれた……?」
「お前のことは全部わかってるつもりだけど?」
「ずるいねぇ、ま〜くんは」
「そのままお返しするよ、りっちゃん」
腕を真緒の首に回して、今日何度目かわからないキスをねだった。角度を変えて、舌で触れて、吸い付くように唇を重ねる。
「俺が女だったら、よかったのにねぇ」
見開いた真緒の目に気付くことなく、凛月の視界は白く弾けた。