『マスタァーーーッ!!』

ガバッ

「…!!?」


どれくらいの月日が経ったでしょう。マスターと別れ離れになってから一度もあなたを忘れた事はありません。
麦わらたちに連れ去られたと聞いて、パンクハザードに残された私はどうする事も出来ずに、様々な情報を調べて、ここ「ゾウ」に辿り着くって知ったんですよ。

マスター目掛けて飛びついたわたしは、確かめるように彼の胸元へ顔をぐりぐりさせた。


「なんでお前がここにいる…!?」

『なんで、ってマスターを追い求めて探しに来たんじゃないですか!!』

「お前…生きてたのか」

『アアッ…マスターこんなにボロボロになって…ああ!!こんなにおヒゲも生えてさぞ麦わらたちから酷い扱いを受けていたんですね!?』

「いや、これはつけヒゲだ!…っ引っ張るんじゃねェ!」

『この帽子もどうしたんです?角が出ちゃうから帽子は好きじゃないって言ってたのに…』』

「だーー!!だから角を撫でんじゃねェ!!これは変装用の道具で…それよりもお前…本当に名前なのか…?」

『何言ってるんですか!マスターの想い人の名前ですよ!』

「…誰が想い人だ!!」

『いだっ』


思い切り頭をごつんと叩かれて結構痛いです、マスター。
でも…本当に久しぶりにマスターに会えて私は泣きそうなくらい嬉しいんですよ。潤んだ瞳で見つめられてる事にシーザーは戸惑い、視線を逸らした。


「…モネたちはどうした」

『最短の島へ運びました…医者に診てもらっています…』

「お前は無事だったのか」

『…はい、お生憎、ですよね』


私だけ無事に生き残ってしまってごめんなさい。にっこり笑ってマスターの顔を見上げたら、なんだか複雑そうな顔をしてたから何故か見れなくなって、地面を見つめた。なんでお前だけがなんて思うでしょうか。

吊り上がった目がわたしをじとりと睨んでいた。


『…でもほんとに良かったです!マスターが生きてて』

「勝手に殺すんじゃねェよ!」

『ずっと心配してたんですよ』

「オオ、そうかよ」

『マスター…、おかえりなさい』

「泣いてるのか」

『…嬉しいと涙が出るんものなんです』


口を少しへの字に曲げて、そういうもんなのかなんて言う。
あぁ、こんな風にまたマスターに会えるなんて、どこかで少し夢見ていた。

えへへ、と笑みがこぼれてもう一度マスターの顔を見上げた。その時。


「あ!!いたわ!バカ科学者!!」

「クォラ!シーザーー!!!!逃げてんじゃねェぞ、ナミさんの手を煩わせる前におれが三枚に下ろしてやるーー!」

「…ゲッ!!!!」


その瞬間、遠くからこちらに向かって走ってくる麦わらの一味らしきものが見えて、マスターとわたしの顔が一変する。


『…マスター、バカ科学者って呼ばれてるんです…?』

「うるせェ!!…逃げるぞ!!!」

『へ』


勢いよく身体が反転して、しばらくしてマスターの肩の上に担がれてることに気が付いた。麦わらたちが追いかけてくるのを肩越しに後ろから見つめながらマスターは必死に逃げてゆく。後ろでわたしを見た麦わらの仲間たちがまたなんか騒いでる。


『逃げきれてなかったんですかマスター…』

「気の毒そうに言ってんじゃねェ!!!あいつらの強さザラじゃねェんだよ!!」

「三億の凶悪科学者が何言ってるんですか」


よく見れば片腕に海楼石の錠がついていて、ガス化出来ないらしい。私を乗せながら足で走ってゆく。


「チキショー!!お前自分で走りやがれ!!」

『マスターが自ら担いだんじゃないですか!でもなんだか連れ去られる花嫁みたいで気分がいいですよ』

「お前黙れ…!!!!」








その後、二人はあっさり捕まえられましたとさ。

(マスターと一緒なら、どこまででも)


「なんか一人増えてるぞ!?」

「ちょっとあんた誰よ!?」

「あぁ可愛いレディーが何故こんなところに!」

『マスターと駆け落ちしようと思いまして』

「てめェ!!喋れなくさせてやろうか!!!」


20150401