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  モノクロスクリーンの向こう側


重々しい音をたてて開いた木製の大門をくぐると向こう側は一面銀世界…ではなく。

見事な日本庭園だった。


大きな松とか…石、ってか岩とか…池とかあるんだけど。

庭に橋とかかかっちゃってるよ…鯉とかめっちゃいっぱい泳いでるよー。




「あんまりキョロキョロするんじゃないわよ!みすぼらしいわね!」



君の方が挙動不審だよ。

案内してくれる人がいなかったら絶対不法侵入に見えるくらいにね。


僕は精神的には大人だしねー。見知らぬお宅をジロジロ見るような失礼なマネ何かしないよ。




と、脳内だけで反論していたらどうやら本邸についたようだ。

ってか別館ありまくりだよー。離れっていうの?





家から出てきたのは…薄紫の一目で高いものだと分かる着物を着たお祖母さん…だと思う。

だってさ!すごい背筋とかピーン!ってしてるんだよ。

若々しいし、白髪なんだけどきちんとセットされてて下手に染めるよりもずっと似合ってる。

今の自分の自信に溢れてる…って言うのかな……




「初めまして。私(ワタクシ)、仁王雅子と申します。これから長らくお世話になります」



にっこり。
そんな効果音がつきそうな貼り付けた笑顔で母親が言った。

分かると思うけど仁王雅子っていうのが母親の名前だよ。てかワタクシってなんだよホント。


ありきたりなセリフを吐いた母はすぐに見抜かれたのか…お祖母さんはジロリ、と鋭い視線を向けた。



「アンタも挨拶しなさい!」



…あろう事か僕が挨拶しない所為だと思ってるよこのアマっ!

っと、口が悪くなっちゃったよ。


『…仁王雅治です。母共々、お世話になります。多々迷惑をかけることもあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。』


にこり。とこちらも微笑む。

私の作り笑顔歴ナメんなよ!しかも仁王雅治は超がつくほど美形だから数倍輝かしく見えるだろう!

ってか凄いしっかりしたこと言ったやったぜエヘン。


驚いてる驚いてる、両方ね。特に母親なんて悔しそうな顔しちゃってるよざまぁ。

あ、また口悪くなった。気をつけないとなー。



「…私は日吉巴と申します。旧家日吉家に恥じぬように振る舞ってくださいね」


ともえさん、というらしい。

僕はこの方のお眼鏡には引っかからなかったようで、母のように睨まれることはなかった。

ま、この髪と目は変な顔されたけどね。ま、今更だよ。



「雅子さん!」
「良雄さん!会えて嬉しいわ…!」


よしおさん。こいつが新しいお父さん…や、お義父さんってことか。

さっきの巴さんとはうってかわって何か軟弱な雰囲気。

…だから母親みたいなのに引っかかったりするんだよ。


「お義母さん、離婚も結婚も認めてくださったのね!本当に嬉しい…!」


わざとらしい…っていうか、離婚?

この人こんな母親と一緒になるために離婚までしちゃったの!?

そうか、お腹の子はこの人とのか!





…おや?


良雄さんの後ろに着物…っていうか胴着?みたいなのを着た小さな男の子…

茶色の髪が綺麗に切りそろえられている。

何かキノコみた…げふん!


「あらっ!その子が前に言っていた若くん?可愛いわねー」


ほー。わかしくん、というらしい。

っていうかホントに空気の読めない人だよね。若くんめちゃくちゃ睨んでるのに気がついてない。


「ほら、若。新しいお母さんに挨拶しなさい」

「……日吉若です」

「よろしくねっ!」


子供ってこういうのに敏感なのに…

こんな人お母さんじゃない、って全身で言ってるよ。

かくいう僕もこんなの母親だとは思っててもお母さんだと思った事なんてないからねー…








そうこうしている内に母親と良雄さんはどこかへ行ってしまったらしい。

まぁいいか。と思ったけど…



「……………」

『………………』


何でこの子を置いていってしまうんだいー?

超睨んでくるんですけど。どうしろって?


「あんたがおれのにいさん?」

『……そうじゃな』

「へんなしゃべりかた…」

『だから何じゃ?』


最近は家でもこの喋り方を止めない。

母親は僕とまともに話したりしないし?分かった所でいつもみたいな変な目で見られるだけ。


「…おまえなんてあにじゃない」

『…ほーかの』



最後にもう一度ジロリ、と僕を睨んで静かな足取りで立ち去った。

うーん…着物を着慣れている人の足取りって感じだよね。


…最後に"げこくじょうだ…"って聞こえた気がする。

……気のせい気のせい………ははは…





っていうかあの子絶対父親似じゃない。母親は見たことないから分かんないけど…お祖母さん似だよ。

ジロリ、っていう目が凄いそっくりだ。



……まぁ僕にはどうでもいいけどね。


僕はこの家でやらなくてはならないことが山ほどあるんだ。




…テニスを始める。

…一通りの教養を身につける。

…上手く立ち回れる土台を築く。




何だってやってやるさ。


僕が"俺"として動けるように、何だってやる。


僕が"俺"になれなければ…




比呂士には逢えないんだから…






モノクロスクリーンの向こう
(君の元へ還れるように)








………………………

ちび若少な!

つつつつ次はメインだからね!早くデレて!





 

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