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  登場人物Nの独白


小学校に入学して、僕の日常が少し変わった。



相変わらず母親はどこほっつき歩いてるのか、夜遅くまで帰ってきはしないけれど…母親への情なんてあるわけがない。

最近は憎悪も感じなくなって来た。つまるところが無関心。

好きの反対は無関心だとはよく言ったものだ。


家ではろくにものを食べられないけど、学校には給食がある。

母親は面倒事が嫌いなのか、給食費などはきちんと払っている。

朝食と夕食を食べないせいか、胃袋が小さくなってきているのがありありと分かる。



でも、一番変わったのは、




「…おはようございます、におうくん」

『おはよ、やぎゅー』



柳生比呂士…

…僕は少なからず君に救われているよ。

この学校で、僕とまともに接してくれるのは君くらい。


僕の服は姉のお下がりばかりで可愛らしいものばかり。

最近はあからさまに"オカマ"とか言ってくる奴もいるし…気にしてないけど。



僕自身が前世が女で、大人だったばっかりに…男子と接するのがとても苦手。

鬼ごっこも隠れんぼもつまらないしやりたくない。

泥団子のぶつけ合いなんてもってのほか。馬鹿じゃないの?って感じ。


そんな僕には友達という友達がいない…あー違うや、柳生は友達。

女子はねー…僕が綺麗で可愛いから嫉妬してるんだって柳生が言ってた。マジで?って思ったけど。そんなに綺麗かな…

男子はさっき言ったとおり。こっちも妬みらしいけどね。




どっちにしろガキくさくてうんざりだ。

もちろん教師には媚び売って家とかに連絡されないようにしてるよ?母親にばれたらどうなることか。




こんな僕とまともに会話できるのが柳生。

っていうか、柳生から近寄ってくるんだけどね。


「こないだ"としょしつ"にいってきたんですよ。おもしろい本がいっぱいでした。」

『へぇ。一年で読める本なんてそんなにあるっけ?』

「こうがくねんのものもよめるんです。におうくんもよめるでしょう?」

『まあねー』


この通り、柳生も他の同級生とは精神年齢が合わないんだとか。

大人っぽくて、まだまだ小学生らしさは抜けないものの…下手な5.6年より話が出来るよ。





僕が柳生とこんなに仲良くできるのは、やっぱり僕が"仁王雅治"だからなのかな…

違う人物として僕が君に会っていたら、君はこんなに仲良くなってはくれなかったのかな…



最近、そんな不安ばかりが頭に浮かぶ…





『やぎゅー』

「はい、なんですか?」


にっこり、と僕は滅多に見せない笑顔をいとも簡単にこちらへ向けてくる柳生に、一言。





『柳生はなんで俺と一緒にいるの?』





ぱちり、と眼鏡の向こうにある瞳が動いた。

何故そんなことを聞くのか、という表情だ。


「わたしは、におうくんにひかれているんですよ」

『…引かれてる?』

「…字がちがうきがします」


惹かれている。…男に?


「れんあいとかではなく、こんぽんてきななにかにです」


…それは、この世界の理だから?


「ありていに言ってしまえば、"あなたがすきだから"です」

『…俺が?』

「あなたのくちょうも、しぐさも、せいかくも、わたしはすべて、すきですよ」


僕そのものの口調でも、仕草でも、性格でも?

僕のそのものを、君は好いてくれてるの?








君は、僕を見てくれてるの?




『…そっか』

「なぜそんなことをきくのですか?」

『…聞いてくれる?』



僕の全てを、君になら話してもいい気がした。

今この時を逃したら、もう話せない気がした。








『僕さ、前世の記憶があるんだよ』

「…ぜんせ?どういういみです?」

『"仁王雅治"になる前ってこと』
「…そのきおくがある、と?」

『ちなみに現役女子大生だったよ』










「へぇ、そうなんですか」










『…え、それだけ?』


淡泊どころじゃない柳生の反応に、僕は拍子抜けだ。

なにそのあっさりさ。




「におうくんはとても大人っぽく、小学生にはみえませんでしたから」

『柳生も十分大人っぽいけどねー』

「それに時々、じょせいのようなしぐさをしていましたから」

『スルーかオイ』


薄々勘づかれていたってか。

なら…全て話してしまっても………






いい、だろうか






『僕の世界にね、漫画があったんだ』

「まんが?」

『……その漫画はさ、この世界について描かれてるんだ』

「わたしたちがいまいる、このせかいがですか?」

『…そう、"仁王雅治"も"柳生比呂士"もでてくる漫画…』

「………。」

『…信じられない?』





先程とは違い、黙ってしまった柳生。

信じられなくて当然だ。

自分の生きている世界が漫画になっていて、しかも自分がそれに出ているなんt「しんじますよ。」




………。




『…はい?』

「うそをいっているようには見えませんから」



オイオイ僕は将来的には詐欺師なんだよ?
こんな怪しい話を簡単に信じちゃっていいのかい?
そもそも何で前世とか信じちゃったの?

ぐるぐると頭を巡る考えも、そのうちどれも一つの感情に納まった。









…嬉しい。

…信じてくれた。

…受け入れてくれた。






………嬉しい







『どんな話か、話そっか?あんま知らないけどね』

「きょうみありませんね。わたしはわたしですし、あなたはあなたでしょう。」



有り体な言葉でも、僕に響いてくるのは…柳生が本気でそう思っているからだろう。




そっか、


たとえ生前、この世界が漫画でも



たとえ生前、"仁王雅治"や"柳生比呂士"が紙上の人物でも










結局、僕は僕なのか











『くっ…くくく……』

「におうくん?」

『白銀って呼びんしゃい、やーぎゅ』

「白銀?というかそのくちょう…」

『物語に参加するのも面白そうじゃのう…』

「それが"まんが"での?」

『おん。おもろい口調じゃろ?』


僕がニヤリとシニカルに笑うと…柳生は何とも言い難い顔をした。



「わたしはまえのほうがすきです」

『ほーかの。…んじゃ、戻す』

「白銀というのが、ぜんせの?」





僕はもう一度、喉の奥で含み笑いを漏らし、右手を差し出した。








『改めて、雪原白銀さ。よろしく比呂士?』

「えぇ、よろしくおねがいします。白銀さん」



仕方ない、人生なんて楽しんだもの勝ちだ。



面白おかしく壊してやろうじゃないか。







首を洗って待っていろ、

お前のシナリオぐちゃぐちゃにしてあげるからね、

登場人物Nの独白
(聞こえてる?だぁーいっ嫌いな、カ・ミ・サ・マ?)





 

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