ここはどこでわたしはだぁれ?
僕がこのわけの分からない生活になって、早くも3日が経ってしまった。
相変わらず僕は6歳(これは母子手帳で確認)のまま。
名前も雪原白銀ではなく、仁王雅治(漢字も母子手帳で確認)のまま。
…漢字まで、"あの"仁王雅治と同じだ。
生憎、金色の瞳は生前(?)と変わらず、髪は短くなっただけ。
6歳児にしては肉付きが悪く、ガリガリなのだがそれは仕方がない。
僕は、この3日間まともにものを食べた覚えがない。
いわゆる育児放棄。
年の離れた姉がいると小耳に挟んだが、その姉の姿も見たことがない。
姉は8つだそうだが…僕から見た感じ、仁王雅治の母はまだ20代前半。一体どれだけ早く産んだのか。
どうやら姉は遠い全寮制の小中高一貫校に入学したらしい。
僕を、見捨てて。
まぁいいか…と僕は自己完結した。
いきなり姉とかいう存在が目の前に現れても面倒なこと限りなしである。
母親は夜遅くか明け方に帰ってくるものの、僕を見た瞬間、ゴミを見るような目になる。
…酷い時はそのまま平手打ち。
何の仕事をしているのだとか、父親はどうしたのか、と聞けるわけもない。
僕がたとえ呻き声だったとしても声を発すれば無条件で蹴り飛ばされた。
家は一戸建てで、それなりの大きさ。
しかし部屋は荒れ放題で、壁紙はびりびり、花瓶や皿やコップは床に欠片となって散らばっている。
テレビも同じく画面が壊され、一目で機能しないと分かる。
僕が外の情報を得るたった一つの方法が…新聞。
毎朝郵便受けに突っ込まれる新聞をこっそりと取り、全てを記憶に焼き付け元に戻す。
そうして、記憶を頼りに一日かけて熟読する。
…この記憶力は、生まれつきではなく生き抜くための術だ。
でも、
僕はある時…見てしまったんだ。
新聞に大きく書かれた文字。否、名前
"越前南次郎、謎の引退!?"
えちぜんなんじろう。
テニスの王子様の主人公、越前リョーマの父…
天衣無縫の極み…プロテニスプレイヤー……
『…う、そ………だ…』
僕はぐしゃり!と新聞が大きな音をたててしまったのにもかかわらず、細かく声も体も震わせていることしかできなかった。
越前南次郎がいる、ということは…僕の名前が"仁王雅治"だということは…
頭が混乱した。
この世界へ初めてきた瞬間よりも、ずっとずっと信じたくなくて信じられなかったことを目の前に突き出されて頭も体も言うことを聞かない。
だから、背後に立った影にも気がつけなかった。
ドゴッ!
背中に衝撃。
足で蹴られたのだとすぐに分かった。
だって、この3日間、毎日味わってきた痛みだもの。
玄関のドアの前に立っていた僕は、蹴られた衝撃でドアに真正面から叩きつけられることになった。
「あんた…!何やってるのよ!」
『…ごめんなさい、おかあさん』
「お母さんなんて呼ぶんじゃないわよ!好きでなったんじゃないわ!」
…知ってるよ。
「その気持ち悪い目で見ないでちょうだい!」
…仕方ないじゃないか。
「あんたなんて産まなきゃ良かった!」
…僕だって
…僕だって、こんな世界に生まれたくなかった。
…僕だって、お前なんかから生まれたくなかった!
母は僕を一通り蹴り尽くしてから、僕の身長では触れることの出来ないドアノブを回して家から出ていった。
ガチャン……
重々しい音と共に閉められたドア。
一瞬だけ見えて、一瞬で消えた外の光。
それはまるで、僕の希望の光を表すかのように。
希望が消えたことを、僕に痛いほど分からせるように。
ここはどこでぼくはだれ?(此処は"テニスの王子様"の世界)
(僕は………仁王雅治)
……………………
会話が少ない。名前が出てこない。
仁王的要素皆無!
お姉ちゃんでてこないぃ!弟は出すと思いますが。
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