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  そして交錯する


愛らしいピンクの花びらが舞い散る中、第XX回私立立海大附属中学校の入学式は執り行われようとしていた。


その中に、きっちりミリ単位もずれることなく校則通りの服装をした男子生徒がいた。

リボンの付いた造花を胸につけているため、新入生だろう。

背筋をしゃんと伸ばし、知的な眼鏡の端を光らせて歩いている。

服装と同じく整えられた自然な茶髪は暖かい春風にそよいでいた。


彼の名は、柳生比呂士という。






眼下に広がる海を視界の端に入れ、こつこつと真新しいローファーを鳴らして歩く生徒が一人。

高めの身長を隠すように猫背気味の前傾姿勢、緩められたネクタイに第二ボタンまではずれたワイシャツ。

そして何より、まだ低い太陽の光を余すことなく反射し、煌めく銀髪。

透明にも近いそれからちらちらと覗く、月のような金色の両眼。

全てが全てこの世の物とは思えず、妖艶で不可思議な雰囲気を醸し出している。



彼の名は、仁王雅治。




幼き日より止まっていた二人の時間は、動き出す。












いち早く立海大に着いた柳生は、受付を済ませたは良いものの、やることがなくて困っていた。

受付を手伝おうとしても、何も知らない自分が入っては迷惑だろうし、会場の準備などは漏れもなく完璧だった。

近くを通りかかった教師に、時間になるまで校内を見て回ったらどうかと言われ、行動に移した。


広大な敷地を持つ立海大で、彼がひたすら探すのは、たった一人。

自分がまだ未熟な小学生だったころ。

別れも言えず、離ればなれになってしまった"彼女"を探していた。

前世の記憶を持ち、突然男の身体になってしまったという、奇怪どころでは済まない過去を背負う人。

自分が…………片時も忘れたことのない、親友。


「再会を、必ず」


それだけ書かれたメモと、少し泥が付いた四つ葉のクローバー。

それらは小さな袋に入れ、肌身離さず持ち歩いている。




いつしか、新しい場所に行けば自然と彼女の影を探すようになり。

あらゆる雑音の中から彼女の声を探し。


黒や茶色に紛れることのない月光の髪を求めた。











ふ、と

目に入ったのは大きな桜の木。

かなりの高さがあるであろうその木を眺めていると、初めて彼女に出会った日を思い出す。


彼女は、大木をすいすいと登っていた。


「(…私の思考は、白銀さんが中心ですね)」




そう思い苦笑する。

雪のように舞う花びらを辿り、視線を上へ向けると。


桃色に囲まれ、雪のようにではなく、正しく新雪色がそよいでいた。



ヒュウッ、と息を飲む。


体が硬直し、意思に反して震えた。




「あ……あぁ、あ……」


『…逢いたかった』



震える口で告げようとしたことを、先に拾われた。


男子にしては高めのボーイソプラノは、柳生の前だけで出す声だ。




覚束ない足取りで木に近づけば、ふわりと音も無く上から飛び降りる。






『…久しぶりだね比呂士』

「…えぇ、本当ですね白銀さん」





そして交錯する
(待ちくたびれた!)




………………………

ほんとに再会だけ…orz




 

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