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「#幼馴染」のBL小説を読む
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  たかが時代が引き裂けるとでも?


つくづく自分は数奇な人生を歩んでると思う。



19歳、平凡でしがない大学生だった僕が何をどう間違えばうっかり殺されてうっかり生まれ変わるのだろう。

しかも漫画の世界とかふざけんなよ…こんなの喜ぶの哀川さんくらいだよ。


「お姉ちゃん数学教えて!このままじゃ期末危ないの!」

『むしろまだ出席日数が足りていることに驚きなんだけど…』

ここは"今"の僕の部屋。
殺された僕は神社の娘として再び生を受けた。

その部屋で、僕は黒くなった髪にいつもの双葉アホ毛を揺らしながら机の前に座っている。

僕の前で頭を下げて必死に頼みごとをしているのは4つ下の妹。残念ながらはるかなではない。


彼女の名前は日暮かごめ。
膨大な霊力をその身に宿す巫女の生まれ変わり。


僕も生まれ変わった身だからどうのこうのと言うつもりはない。ひょっとしたら僕の前の世界も何かの小説か漫画だったのかもしれないし。

だからと言って、何故たかだか語り部の僕がこんなポジションに置かれるのだろうか?


『あと何日なの?』
「3日!」
『もっと早く言えこのバカ』

ビシッとふざけたことを言い出すかごめにチョップを落とした。
とはいえ僕はこの妹が可愛いし、女子供には甘い性格も相まって結局は面倒を見てしまうんだけど。

僕はこのまま、物語には加わらず語ることすらせず登場人物の紹介にも載らないような脇々役として死んでいくのだろうと思っていた。


思っていた。


僕がかごめと一緒に骨喰いの井戸をくぐるまでは。




「ほんっとにごめんねお姉ちゃん!ほら犬夜叉も謝りなさいよ、あんたが無理矢理引っ張ったからお姉ちゃんまで落ちちゃったんじゃない!」
「おめーがナマエの手を離せば良かったんだろ!?」
「だって明後日はテストなのよ!お姉ちゃんと勉強しなきゃいけないの!」
「またすーがくとかいうわけ分かんねーもんやるだけだろ!?」
「だけじゃないわよ!中3のこの時期のテストがどれだけ大切か分かってんの!?もういいわよさっさと帰るから!」
「はあ!?四魂の欠片はどうすんだよ!弥勒が怪しい洞窟があるって話を聞いてきたって…」
「うるさい!テストが大事なの!おすわりっ!!」
「ふぎゃッ!?」

『…かごめのアレって僕の影響かな』


もちろん性格的な意味ではなく能力的な意味で。
あの言霊の念珠とやらはかごめにしか発動できないものらしい。戯言遣いたる僕と血縁関係があるから、と見れなくもない。

「犬夜叉、かごめ様、とにかくいったん落ち着きましょう」

襟足を少し結った法衣の男性がそう言った。
この人が弥勒…だと思う。僕はこの漫画を愛読していたわけではないので曖昧だ。
法衣を見ると澪標姉妹を思い出してしまうんだけど、今となっては殺されかけた記憶すら懐かしい思い出だ。

「この人、かごめちゃんのお姉さん?よく似てるね」

本気で言ってるのかこの子。長い黒髪を活発に高く結った女の子、たぶん僕よりは年下だけどかごめよりも上。
えーっと…珊瑚、だったかな。

それはともかく僕とかごめが似てるわけないだろ。せいぜい髪の色が同じってくらいだ。
かごめの目は僕みたいに死んでないし、表情だって良く動く。間違っても"なるようにならない最悪"とまで呼ばれた僕と似ているわけはない。

「かごめと似たにおいがするのう!」

可愛い狐の妖怪。幼く見えても何年生きているかは分からないけど。
名前…しっぽ?だっけ?そんなまんまなわけないか。かごめと似た匂いってシャンプーとかボディソープが一緒だからじゃないの。

「ここでお会いできたのも何かの縁、よろしければ私の子を「「弥勒さま!!!!」」

この発言だけでこの人がどういう人種なのかを理解できた。かごめのそばにいさせるのがちょっと不安。戯言だけどね…


「しかしお姉さまはすぐに帰られた方がよろしいかと」
「そうよお姉ちゃん!」

まあ、帰った方がいいことは分かるし帰る気しかなかったけど。
彼等の様子からして、ただ事ではないようだ。

「あのね、かごめちゃん。この村の近くに白鬼丸がいるみたいなんだ」
「えっ!?」
『白鬼丸?』
「犬夜叉には2人兄がいるのですが、白鬼丸はその1人です。無意味に無差別に人を殺すことを好む妖怪なのですが…」






ぴくりと鼻が動いた。

むせかえるような血の臭いの向こう側、村の方から漂う人の匂い。

「ナマエ…?」






ゴウッと風が吹いた。空に立つ小柄な影が一つ。

その姿を見て犬夜叉たちに緊張が走る。ただ1人、ナマエを除いて。


呆けたように空中で棒立ちする彼に向かってぽつりと



『…なんだ。お前、ここにいたの?』



赤い瞳を見て呟けば、三日月の模様を歪めて泣き笑いのような表情を見せた。

ナマエは彼の次の行動が手に取るように分かった。
死人のような瞳を閉じて体の力を抜き、一瞬で己の体に巻きついた2本の腕を享受する。

次に目を開けたとき、2人は空にいた。


「お姉ちゃん!!」

かごめが慌てて声を上げる。
犬夜叉一行も武器を取り出し、臨戦態勢をとっているが、2人の眼中にはなかった。

「お姉ちゃん?かははっ面白ぇとこに生まれたな!さすが俺の鏡だぜ!」
『自分の意志ではないんだけど。面白いのはお前も同じでしょ』
「かははははは!!そりゃそうだ!!そんなところまでそっくりたぁ笑うしかねぇな!!まーあいいや!何でもいい!俺は今ものすごく機嫌がいいからな!誰も殺さないで出てってやるよ。じゃあな、犬夜叉」


空高く舞い、風に乗れば誰も追いつけない。
血の一滴もついていない毛皮を靡かせる彼は、ナマエが冷たい空気に身を震わせると、腕に力を込めて身体を密着させてくれた。

風にかき消されないよう、耳元に口を寄せて、囁く。

「…やっとだ、」

紅い双眼が歪んでいた。強い風がなければ、きっとこぼれ落ちていただろう。

「やっとだ、ナマエ。ずっと探してた。何百年も独りで探した。」

長すぎる寿命を呪った。
死を選べない弱さを恨んだ。

「殺しても殺しても少しも楽にならない。禁欲なんかとは比べもんにならねぇくらい苦しくて死にたかった。全くのんびり屋の鏡を持つと苦労するぜ」

『流石にいつどこに生まれ変わるかなんて分からないし決められないんだけど…人識』

そっと、彼の冷たい頬に手を当てた。



『独りにして、ごめんね』



彼は、あの頃と同じように、笑った。




『でも、僕は分かってたよ。お前とまた会うって。絶対に引き寄せられるって』
「俺だって分かってた。だから死にたくても死ねなかったんだよ」

この呪いともいえるような繋がりを。
決して切れることのない鋼鉄のリンクを。



『「たかが時代が引き裂けるとでも?」』





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リア垢でも仲良しなしーちゃん、リクありがとうございました!

ちなみに白鬼丸(ハッキマル)が向かっているのはほかの転生者たちと作った妖の村。

玖渚兄妹→雪童子、雪女一族
匂宮兄妹→蛇妖怪
潤・真心→鬼

書かないけどここまで想像した…家出兄妹は思いつかなかったけど閃いたら続き書くかもしれなくもないほど萌えたリクエストでした!!

 

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