×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



  持病はストレス性蕁麻疹


普通の日本人になるにはどうすればいいのか。
普通の高校生として過ごすにはどうしたらいいのか。

ここ、日本という余りに平和ボケした国での普通とはミーの普通には当てはまらない。
ミーの普通とは闇に紛れ、霧を操り、人を惑わすこと。

だからミーは普通の高校生の仮面を作り、それを被ることにした。
観察眼と演技にはそこそこの自信がある。師匠との死ぬ物狂いの修行による賜物だ。
もう使い所も使い道もないそれを、ミーは己を殺すことに使おうと思った。

普通の高校生でいるためにはいくつかクリアすべき点がある。
まず、馬鹿すぎてはいけない。そして賢すぎてもいけない。中の上くらいの成績をキープすべきだ。
そして1人でいることもよくない。窓際のぽつんはそこそこ目立つ。よって友達がいなければならない。
卒業したら連絡しないし会うこともない程度の友達が必要だ。
考えていることがわかりやすく、積極性に欠ける、そんな友達を作るべき…と思っていたのだが。


どうやらミーは人選を間違えたようだ。


「お願いいたしますフランちゃん!お願いいたしますお願いいたします!!後生ですからこの通りです!!!」

という谷地さんのセリフと予想以上の力によってゴリ押しで男子バレー部のマネージャーのお手伝いをすることになった。
もう一人マネージャーがいるようだが、話を聞くと流行りの風邪にかかってしまったようでお休みしているらしい。
週末に練習試合があるがどうにも人手が足りないということで練習試合の3日前からマネージャー業の手伝いをしている。

しかし人には苦手なものが存在する。
ミーの場合、殺伐とした世界で生きていたため「青春」というものに耐性がない。

つまり

「日向!レシーブの角度が悪い!」
「サーブ練10本交代!のんびりするな!」
「影山ナイッサー!」

『ヤバい…右腕に蕁麻疹出てきましたー…』
「フランちゃん次ドリンクだよっ」
『あ、はーい…』

虫が這うような痒みが右腕に広がっていく。
そう、ミーはいわゆる「青春熱血アレルギー」なのである!



『はーくっそマジかよありえねぇよなんだこの玉遊びはかったるいスピードしやがってもっと殺す気で殺れよつまんねーなー』

おっと本音が。
ミーは育った環境上、一般的な生活に耐性がない。
サバイバルでもバトルロワイヤルでも耐えきれるが、これは駄目だ。
接点が無さすぎて未知すぎる。アナフィラキシーが起きてしまう。

ヴァリアーにいた頃はスポーツなんて健全かつ健康的なものには触れる機会はなかった。
スクアーロ隊長の知り合いだか弟子だかの人は野球をやっていたらしいが。

「月島ァ!ブロックもっと早く飛べるだろ!」
「うるさいよ、王様。シャット出来たんだからいいでしょ」
「今はできたけど、試合でもできるとは限らねぇ」
「そんなの何だってそうでしょ。後がつかえてるからもういい?」

黒い頭と金色の頭が言い争っている。最高にどうでもいい。

まあ、外野からでいいならこっそり口を挟ませてもらうが、たぶん金髪さんは敢えてスピードと高さを落としていた気がする。
しかし黒髪さんはあまり頭がよろしくないように見えるので説明が面倒くさくなって省いたんだろう。

「あわわわまたお二人が言い争いを……!」

谷地さんって生きづらそうですよねー……。
余計なことに気を回しすぎるというか、勝手にストレスを感じて勝手に胃に穴を開けるタイプだ。

『……別に、気にしなくても』
「えっ?」
『いつもの、こと、なんでしょう』
「それはまあ、しょっちゅうですけど」
『なら、放っておいたほうが。谷地さんのためというか』

大人しく振る舞うのはストレスが溜まる。
さらに青春キラキラオーラで蕁麻疹が腕に広がってきて痒くて鬱陶しい。

その上谷地が隣であわあわしてると結構ギリギリな堪忍袋の緒が切れそうなので口を出す。

「へぇ、優しいなぁ!」
「ひょわあっ!」
『…………』

誰だっけこの人。
スクアーロ隊長のような白髪……若くしてご苦労されているのだろうか。

「あれ?何か視線生ぬるくね?眼鏡でよく見えないけど」
『キノセイデハ?』

ふわふわした表情とは裏腹に、人のことをよく見ている。食えない人だな、霧向きだ。

「谷地さんの友達だべ?短い間だけどよろしくなー」
『どうも』

よろしくするつもりないです。

思い出した。この人の名前はスガワラさん。そんでさっきの2人はカゲヤマさんとツキシマさんだ。
脳内でどうでもいいカテゴリに入れてしまったので思い出すのに時間がかかった。

「えーと、名前はフランちゃん?」

馴れ馴れしいな。
いや、分かるんだ。この人がいい人なのは分かる。
しかし今はイライラボルテージが上昇しまくってて余裕が無い。

のらりくらりと会話を躱し、さっさと仕事を済ませてしまおうとした時。


「っ危ねぇ!!!」



その声に一番早く反応したのは間違いなくミーだ。
次はスガワラさんで、飛んでくるボールからミーたちを庇おうと前に出ようとする。

しかしボールは中々の豪速球で。
この部はもうすぐ練習試合を控えていて。
控えの選手はそんなに多くなくて。
対戦相手は結構強いところらしくて。

だから、咄嗟に前に出てしまった。
ちょっと力が入りすぎて片手でスガワラさんをポイッとしてしまったのはアレだったけど。


ばこん、という鈍い音が身体の外と内、両方から聞こえた。

その衝撃でウィッグがとれて日本では見かけない翠が顕になる。
さらに伊達眼鏡が吹っ飛び、カラーコンタクトが地面に落ちてしまった。


場が、凍りつく。


唯一動けるミーはバレーボールを鷲掴み、無駄のなく鍛えた筋力の全てを行使して投擲した。


『何しやがるんですー???』


おっとやりすぎてカゲヤマさん気絶しちゃいましたー。やっべぇ。




…………………………………………………………

主人公が出てこないな!ろくに会話もないな!

このあとフランはツキシマさんと仲良くなるよ。毒舌同盟。

 

[back]