×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



  生まれたときから底辺でした


煌帝国という異世界の国に無理やり転生させられて早8年ほどが経ちました、ゾルディック家長女です。

下町で強制的に緑色のセンスのかけらもない服を着させられて生活する僕は、本家では味わえない古き良き日常にそこそこ満足していた。庶民出身の僕にとって、さげすまれていようと最低限に用意される最上級の服や致死量の猛毒が含まれたフルコースは、実はちょっと息苦しく感じていたことがあるからだ。

まあ、僕だけ期限がきて服が元に戻っても何故か奴隷仕事から解放されないのは大目に見てやるよ!


「おい、そこの!さっさと運びな!」


ここでは誰も僕を名前で呼んでくれない。
僕をこき使う主人はいつも僕を"これ"だとか"そこの"だとか、代名詞を使ってでしか呼んでくれない。
奴隷が僕しかいないのではない。ほかの奴隷のことはヒステリックにだがちゃんと名前で呼んでいた。
どこにいっても過負荷ってやつはどうしようもないようだ。別にまあ、慣れてるからいいんだけど。


今日の仕事は宮殿へ反物を届けるというものだ。
珍しく小奇麗な服に着替えさせられた僕はせっせと荷物を運んだ。

ふっかふかな絨毯は裸足に草履という僕の足に心地よかったけれど何分荷物が多く視界も足元もおぼつかない。
つんのめってしまったが、何とか体制を整える。そんなことを何度も繰り返すうち、ついに反物が2,3反ほど滑り落ちてしまった。
ころころと走っていくそれを追いかけていくと目の前に人が立っていた。僕と同じくらいの子供だ。

赤い髪を乙姫さまのように結っているかわいい女の子。なのにぼさぼさだしうつむいてるし表情暗いし僕が言うのもあれだけど負のオーラが出まくっている。

『「えーと」「す、すみません…」』

貴族、下手をしたら王族かもしれない相手だ。刺激しないように言葉を選び、いつものへらっとした笑顔を浮かべた。
さっさと立ち去るが吉!と判断した僕は身をかがめて反物を拾おうとする…と、寸でのところで目の前の女の子に拾われた。これは…あれか…?フェイントってやつか!古典的ないじめだな!ありとあらゆるイジメと虐待を網羅してきた僕からすれば子供の遊びもいいところだぜ!まあ実際に子供だしね!

「あの…これ……」
『「え、あ!」「拾ってくれたんだね、ありがとう!」』

なんてこった…この子は良心から親切にしてくれただけだった!僕なんかに!いい子だ!
人に親切にされるのはこの世界に生まれてから初めての経験だったのでうれしくて満面の笑顔になった。せっかくこの子もかわいい顔をしてるんだから笑えば僕の数百倍かわいいのに。
今、0は何倍したって0だろって思ったやつは後ろから螺子伏せるから覚悟しろ。

「あ、あなた…城下の子なのぉ…?」
『「うん!」「あっひょっとして王族の人…とかじゃないよね?敬語じゃないとだめかな?」』
「いっ、いいの!敬語なんていらないわ!」

着てるものが見たことないくらい上質な生地なんだけどなぁ…髪飾りだってキンキラキンじゃん。

『「あ、僕仕事の途中なんだ」「もう行かなくちゃ」』
「…もう行っちゃうのぉ?」

女の子に弱い僕はさらに暗い顔になった推定王族の子になけなしの良心が傷んだ。
そんなこと言われても僕は奴隷同然のみなしごだし…もう宮殿に来ることもないだろう。

『「んー…」「僕、仕事しないと怒られちゃうから…」』
「そ…そうよねぇ…」
『「もっと君とおしゃべりしてたいんだけど」』
「ほっほんと!?」
『「え、うん」』
「じゃあ私とお友達になってくださる!?」
『「へっ!?」「いや、だって僕、君の名前も知らないよ!」』
「私は練紅玉よぉ!」

練…ってマジで皇族じゃんかよ!確か皇帝の弟君のご令嬢…かな?
そんな人と友達だなんて恐れ多い…なんてことをこの僕が考えるわけがない。

『「僕の名前はミソギ。ミソギ=ゾルディックだよ」「気軽にミソギちゃんって呼んでね!」』

なーんて安心院さんの真っ似!っていう鶴喰くんの真っ似!
僕がそういうと紅玉姫はそれはもう輝かしい笑顔を見せてくれた。名前の通り宝石のような笑顔だった。

「ねえ!またおしゃべりしましょう!」
『「うん」「今度、逢えたらね」』



『ま た ね』



きっと僕は、この時なにかを予感していたのだと思う。









酷い仕打ち、ここに極まれり。
まさか宮殿で迷子になっていたら置いていかれた!!
まったく幼気な子供を広い広い建物に置いていくなんて…幼気じゃなかったから置いていかれたのかな。そうかもしれない。
っていうかこれは本当にマズい。皇族の住まう宮殿に不審な子供がうろついていたら最悪打ち首だ。

すると、いきなり宮殿の一角から火柱が上がった。しかも僕のすぐ近くから。
バタバタと大人たちが駆け回る声と炎が燃え上がる音に混じって誰かの話し声が聞こえた。


「お前の使命を果たせ…!」


僕に向かっての言葉ではない。
けれど僕は、この世界での使命を思い出した。

「ぼくの代わりにこの世界を救ってくれないかい、ミソギちゃん」

うん、そうだ。安心院さんは確かそう言っていた。
そうだね使命を果たさなくちゃ。
燃え尽きた炭の森を進み、人の原型も留めていないものの前に立つ。

『「僕ひとりだと目的を果たせそうにないんだ」「だからね、」』




『「僕を助けて」「その命の"お礼"としてさ」』




状況が飲み込めずにあっけにとられた"元皇子"を前にして、僕はにっこりと言い放った。

……………………………………
尻切れトンボでごめんなさい…
このあとの展開としては、
白雄白蓮と逃亡→迷宮攻略→顔を隠してシンドリアへ→紅玉と再会→マグノ戦で正体をばらす→めでたし!
みたいな感じです。長編になっちゃいますね…

 

[back]